私学探検隊

基本的な生活習慣と学習習慣の確立を徹底 海外語学研修や高大連携教育も充実

くり返しくり返し、できるまでやらせる

中1で実施するプロジェクト・アドベンチャーでは、仲間と協力し、話し合いながら、物事を解決する力を育てる。

創立100年を超える伝統校。校訓は「真・健・和」。「知識を求め、真理を探究する。心身健康で鍛錬に耐える力をもつ。思いやり、協調の心を培う」の意味を表します。「それをさらにわかりやすく表現したものが教育理念である『絆を重んじ、良き生活習慣をもった、次世代人の育成』であり、具体的な教育目標としては『基本的な生活習慣』と『学習習慣』が身に付いた生徒の育成、『勉強と部活動・趣味とのバランス』のとれた生徒の育成を掲げています」と熊谷一弘校長。
日本大学第一中学では基本的な生活習慣の確立を、教育の礎ととらえています。たとえば遅刻をなくす、授業の前のチャイムが鳴ったらすみやかに席に着くというような基本的なところから指導をするとのこと。さらに最近の中学生の生活リズムを乱す一因となっているのがスマホでしょう。これについて同校では、保護者向けの講座を開催。学校と家庭とで連携して、子どもに正しいスマホの使い方を指導するようにしています。手帳を利用した時間管理も指導します。「手帳を使って、自分の時間を可視化することで、時間の有限性に気付くことができます。限られた時間の中で優先順位を付けてものごとに取り組む姿勢が養われます」と鳩山高史教頭は言います。人の時間と体力と気力は限られています。だらだらと勉強するのもだめ。部活ばかりに熱中するのもだめ。メリハリのきいた生活習慣は、その有限なものを効率的に利用する上で、必要不可欠なものだということです。
学習習慣の確立については、「くり返しくり返し、できるまでやらせる」と鳩山教頭。同校では、毎日の宿題を朝、職員室前の収納箱に提出させ、担当教員がそれをチェックし、返却するようにしています。漏れがあればやりきるまで指導します。言われなくても自分からやるというのが理想ではありますが、中学生のうちは、それもなかなか難しいもの。継続的に勉強しなければならない環境を整えてあげることも、学習習慣の確立のための手助けなのです。地道な努力を促すため、「漢字コンテスト」や「単語コンテスト」も実施します。いわゆる漢字テスト、英単語テストのことです。「この手のものは、努力すればしただけ結果に表れますから、学習習慣を身に付けるには良い動機付けとなります。知らないことがあったらインターネットで検索すればいいという人もいますが、私は違うと思います。中学で習うようなことは、考える力の下地です。基礎学力がないのに発想力だけを求めることは、基礎体力ができていないのに試合に出るようなもの。結果が出るわけがありません」と鳩山教頭。
さらに効果的な学習のために、同校では中2から習熟度別授業を取り入れています。5クラスあるうちの1クラスは英語と数学の成績上位者で構成されます。それ以外の4クラスに関しては、成績による振り分けはありませんが、英語と数学の授業についてのみ、習熟度別に授業を2つのコースに分け、定期テストごとにコースの入れ替えを行います。その狙いについて、入試広報部主任の高橋善浩教諭は次のように説明してくれました。「習熟度別とは、できる子とできない子を分けて、教える内容に差を付けるという意味ではありません。テストの結果で差が付くというのは、学習習慣がどれだけ身に付いているかという差でしかありません。ですから、私たちが行う習熟度別の指導というのは、それぞれの生徒の学習習慣の状態に応じて、学習習慣の向上を目指した指導を行うということです」。ここでも目的は、学習習慣の確立であるわけです。

海外研修や高大連携 プログラムも充実

中2・中3の希望者で行くオーストラリア語学研修は、視野を広げ、自分を取り巻く環境について考えるきっかけにもなる。

時代に即した新しい取り組みも進めています。その一つが中2、中3を対象としたオーストラリア語学研修です。希望者のうち約25名が毎年2週間オーストラリアに行きます。現地ではホームステイしながら毎日地元の学校に通います。中学生の英語力ではまだ現地の人たちと自由自在にコミュニケーションをとるというわけにもいきません。それでもなんとか自分の意志を伝え、相手を理解しようとする経験を積むことで、語学力を超えた自信を得ることこそ、この語学研修の目的であるということです。「語学研修から帰ってきた生徒たちは一様にいきいきします。何事にも積極的に意欲的に取り組むようになります」と鳩山教頭。さらに2015年度からは、中2全員を対象に、「イングリッシュキャンプ」を開催する予定。日本国内ではありますが、英語しか使用してはいけない環境を用意し、その中でさまざまなアクティビティを体験します。座学では味わえない、「英語を使う楽しさ」を実感させる目的です。高校生向けにはケンブリッジ大学への海外研修があります。日本大学の各附属校から選抜された生徒たちのみが参加できるグローバルリーダー養成のためのプログラムです。

放課後に日本大学に通い、本物の大学の授業や実習が受けられる。期末試験に合格すれば、日本大学進学後の単位として認められる。

日本大学との高大連携プログラムも充実しています。単発で授業を体験してみようというようなものではなく、半年ないしは1年をかけて参加する本格的なプログラムです。大きく分けて、受講型と実習型の2種類があります。受講型とは、高校生を対象に、受講生として実際の大学の講義を受講するというもの。期末試験に合格すれば、実際に単位が認められ、日本大学に進学すれば、その単位が認められるという仕組みです。生産工学部、経済学部、法学部で受講型プログラムが実施されています。実習型プログラムは、中3から参加が可能です。例えば理工学部に週1回のペースで1年間通い、プラズマ・超伝導実験やロボット製作などに取り組みます。その成果は、秋の文化祭で発表します。そのほか薬学部、歯学部、医学部でも実習型プログラムを実施しています。いずれのプログラムも同校での授業を終えた放課後や夏休み中に、日本大学の各キャンパスに移動して実施されます。「大学附属校であることはもちろん、本校が両国にあり、日本大学の各キャンパスへのアクセスがいいために、実施できているプログラムです。知的好奇心が刺激されるだけでなく、進学先の大学・学部選びでのミスマッチが少なくなります」と高橋教諭。

コミュニケーション研修とレジャーではない修学旅行

インタビューに応じてくれた、熊谷一弘校長と鳩山高史教頭。「100年の歴史と多くの卒業生が学園の宝であり誇りです」。

校外学習も同校の教育の重要な柱です。中1のゴールデンウィーク明けには、1泊の研修を行います。テーマは「コミュニケーションの上手な取り方」。多くの人は、言葉さえ交わせればコミュニケーションが出来ている気になってしまいますが、実際はさまざまな齟齬が生じている場合も多いもの。コミュニケーションとはなんなのか、他者と上手にコミュニケーションをとるためにはどんなことに気をつけたらいいのかを学びます。学ぶのは生徒だけではありません。教員も同じ研修を事前に受けています。さらに保護者向けの講習も実施します。生徒と保護者と教員が、上手なコミュニケーションを共有するのです。
さらに中1の夏には自然の中で夏季学校を実施します。カレー作りやウォークラリーなどを通してチームワークを学びます。さらに、プロジェクト・アドベンチャーというプログラムを体験します。プロジェクト・アドベンチャーとは、アスレチック施設を舞台に、さまざまな課題を与えられ、それをチームで解決していくという内容の、海外で開発された教育プログラム。課題に取り組む過程で、集団行動における協調性を高め、コミュニケーション能力が育まれます。
高1では環境教育の一環として、足尾銅山を訪れます。いまだに足尾鉱毒事件の傷跡が残る現場を見て、環境破壊の恐ろしさを学ぶとともに、植林活動を行います。高2の修学旅行では平和教育の意味を込めて九州に行きます。「修学旅行はレジャーではありません。鹿児島では特攻隊の基地があった知覧平和会館を訪れます。長崎の雲仙では1991年の火砕流の傷跡を目撃します。言葉を失う現実を目の当たりにするのです。生徒たちは答えのない問題を突きつけられます。でもそのときにこそ、それまで地道に積み重ねてきた基礎学力がものをいうのです。生徒たちは、ただ『かわいそう』という感想をもつだけでなく、広く深い知識をもとに、それぞれに自分に出来ること、すべきことを考えられるようになっていくのです」と高橋教諭。
「派手さはないかもしれませんが、ぶれない教育姿勢がが私たちの自慢です」と鳩山教頭は胸を張ります。「時には優しく、時には厳しく、そして、常に暖かく生徒を見守る存在でありたい」と熊谷校長は語ります。手間暇をかけて生活習慣や学習習慣という土台をしっかりと作り、最終的には、思いやりがあり、自分で考えられる生徒を育てる。それが同校の教育姿勢なのです。

日本大学第一中学校
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☎ 03-3625-0026
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