私学探検隊

伝統を受け継ぎながら一人ひとりに合った「実践力」を育む

実践女子学園は、渋谷の文教地区にある120年にも及ぶ伝統の女子校で、校名にもあるように“実践”し、自立する生徒を育ててきました。一方で、今年度からは新授業「未来デザイン」がスタートし、生徒たちが1人1台情報端末を活用する「BYOD」も本格化しました。また、2021年度からは、「思考表現入試」が新たに設置されるほか、高校で「選択コース制」も始まります。

120年にも及ぶ伝統を進化させた実践力

実践女子学園は、女子教育の先駆者・下田歌子を校祖とする国内屈指の伝統校です。創立当初からの理念は、「実践的な知識や技術を身につけ、自立する女性を育てたい」というもの。120年の歴史の中で、時代ごとに求められる実践力に対応しながら、その理念はいまも生きています。
校長の石野郁也先生に同校の「いま」や魅力について伺いました。
「伝統校として変わらないものがあるのが、本校たる所以です。ただ、伝統とは、時代に合わせて変化していくものです。本校は『実践』という確固たる理念をベースに、時代や社会の変化に対応しながら、新たな教育プログラムを創り出しています」
「グローバル」にも力を入れている同校。ただ、「グローバル」に注力しているのは創立当初からです。それは下田歌子が日清戦争後、清の留学生を受け入れたことに由来します。
昨年、卒業生で、シンガポールで会社を設立した岡部優子さんによる「海外で働くということ~可能性を諦めない」というテーマの講演会がありました。
「岡部さんは早稲田大学大学院を修了後、外資系証券会社に入社。その後、シンガポールで、現地インターナショナルスクールと日本人家族の架け橋になりたいと、2014年に会社を設立しました。社員は日本人、シンガポール人、マレーシア人とグローバルな会社です。岡部さんの話は生徒たちにも魅力的に感じたようで、多くの生徒が『将来の生き方の参考になる良い講演会だった』と言っていました。他者を理解し、社会の役に立ち、自立する岡部さんの生き方は、いまの女子教育のめざすところです。いまは、彼女のような自立した女性を育て、送り出していくことが必要だと思います」

感性表現教育で充実した学校生活

帯の締め方を指導してもらう/和装着付部

帯の締め方を指導してもらう/和装着付部

実践力を身につけ、自立した大人になるためのベースとなるのは、同校が大切にする『自分』と『他者理解』です。
「国際化、IT化、少子高齢化など、いま、時代はつねに変化し続けています。そんな時代だからこそ、しっかり『自分』をもってほしい。そして、そんな自分とともに歩む『他者』を理解する心ももちあわせてほしいと思います」
そんな「自分」と「他者理解」の精神を育むのが、同校独自の「感性表現教育」です。
「たとえば、中1と高3に礼法の授業があります。さらに、中1の日本文化実習も感性表現教育の一つです。礼法で大切なのは、相手を思いやる心ですよね。日本文化実習では、華道・茶道・箏曲・仕舞・和装着付の中から一つ選択し、専門の先生に稽古をしてもらいます。これらは所作や立ち居振る舞いの美しさはもちろん、相手を思いやり、多角的に想像できる力を養います」
こうして培った感性や表現力は行事、クラブ活動、委員会活動など、あらゆる場面で発揮されます。
「卒業生からは『6年間あっという間で楽しかった』という声が多く聞かれます。『では、もう一度中高時代を過ごしたい?』と聞くと、『NO』という答えが返ってきます。これはその時その時、一生懸命に取り組んだからこそ、悔いがない中高時代だったからではないかと思います」

「未来デザイン」で未来をつくる体験を

新しい取り組みとして、今年度から「未来デザイン」という探究授業が始まりました。未来デザインではICTや図書館を活用。教科横断型の授業になります。
「『未来デザイン』は中2と中3で行います。今年は前期に、新型コロナウイルスについて多角的な視点から調べ、学びました。たとえば、新型コロナウイルスの問題で自分が困っていることは何か。また、大人たちや社会、医療従事者などに対象を広げ、気づいたことを挙げてもらいました。さらに、日本と海外のトップの対応の違いなどにも目を向け、ESD(持続可能な開発のための教育)につなげました。このように『未来デザイン』では、関心を自分から社会、世界へと広げていきます。そして、『未来は自分たちの手で創っていく』ことを実感する。その良い機会になるのではないかと思います」

「渋谷×女子」に注目!

さらに、来年の高1から新たな選択コース制がスタートします。
「併設大学への進学者が多かった時代もあったそうですが、2019年度の卒業生は7割以上が他大学へ進学するなど進路も多様化しています。来年からの選択コース制は、そんなニーズに応えるためのものです。たとえば、芸術科目を頑張りたい生徒には『教養コース』という選択肢もあります。一方、高校で学びを深めたい生徒には、国公立大などをめざす『発展コース』へ。本校にはさまざまな生徒がいます。そんな一人ひとりの希望に合った選択ができるよう、高1からコース別にするのです」
渋谷という立地の良さを生かした社会体験型プログラムを計画しているのも、同校ならでは。
「渋谷にはいくつもの有名企業があります。自治体として、区としての取り組みがおもしろいですよね。さらに、再開発でもつねに注目を集めています。このような立地の良さを生かして『渋谷×女子』というキーワードのもと、企業をはじめとする渋谷に関わる大人たちに働きかけ、何かできないかと考えています。生徒たちが学内だけでなく、もっと外へ出ていく機会を増やしていこうと思います。そして、外の世界でも積極的に行動してほしいです」

6年間で「自分」を見つけてほしい

着任当時、石野校長は、生徒の素直さや、のびのびした様子に、驚かれたようです。
「生徒のナマの声を聞きたいと、毎朝校門に立って挨拶をし、校長室を開放しました。生徒たちは毎朝楽しそうに登校し、元気に挨拶してくれます。校長室には好奇心から覗きに来て、『部活の大会に来てください』と招待を受けることも。穏やかな雰囲気の中で、どの生徒も、各々が全力で『自分』を生きていることがわかりました」
最後に、今後どんな学校にしたいのか伺いました。
「クラブや委員会活動、高校生からのコース制など、本校にはあらゆる生徒が自分を発揮できる場所があります。その中で個性を伸ばし、自分のやりたいことをとことん追求し、トライしてほしい。今後も新しいことをどんどん取り入れ、時代に即した『実践力』を育んでいきたいと思います」

休校中はオンラインで活動!

新型コロナウイルスの影響での長期間の休校。しかし、実践女子の生徒は強かった! オンラインを活用した授業はもちろん、オンラインでの部活動も実施。また、先生方も独自に応援メッセージを送っていたとか。逆境にあっても、新しいものを取り入れ、助け合いながら生きていく。これが実践女子の生徒たちなのだ。

 

※上記はNettyLandかわら版の抜粋です。全容はこちらをご覧ください。

実践女子学園中学校
[学校HP]https://hs.jissen.ac.jp
〒150-0011 東京都渋谷区東1-1-11 Tel.03-3409-1771
最寄駅/
JRなど「渋谷駅」徒歩10分。メトロ銀座線千代田線半蔵門線「表参道駅」徒歩12分。
「渋谷駅」から都営バス「国学院大学前」。

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