私学探検隊

超読書家生徒も輩出する図書室の工夫としかけ。読書だけでなく調べることも身につけ、将来につなげる

蔵書は1万7000冊。キーワードは「木」と「理系」

調べ学習にも活用されているため、図書室の利用 率は高い

調べ学習にも活用されているため、図書室の利用率は高い

「難関国立大学へ進学するに相応しい知的好奇心を育み」「知識人ではなく、知恵人を育成」することを教育理念として掲げる同校。図書室はこの理念を具現化したものです。
図書室の蔵書は1万7000冊で、毎年1000冊もの書籍が購入されています。さらに、高校の図書館の本も検索と高校の図書館からも貸出可能で、司書の先生も2名常駐。16年間、同校の図書室で司書をしている門倉奈津江先生に話を伺いました。
「16年前、図書室をつくるにあたり、校長先生から言われたのは『木をふんだんに使うこと』『理系志望の生徒を増やしたい』という2点でした」
図書室内の壁には木があり、温かみを感じさせてくれます。また、調べものができるジャンルの本も増やしたのだとか。図書室の利用法のオリエンテーションは入学直後。そして、7月には「新潮文庫・中学生に読ませたい30冊」「岩波ジュニア新書案内」の冊子を配布。さらに、図書室内には同校の先生が選んだ「附属中100選」というコーナーも。一方、入り口の掲示板には月1回発行の「図書館だより」や校外コンテストの告知などが貼られています。
「本校では毎年新潮社の『ワタシの一行大賞』に参加しています。こちらは国語科の夏休みの課題でもあり、指定図書の中から印象に残った一行を書き出し、その一行に対する思いやエピソードなどを文章で表現。校内で選ばれた優秀賞は、図書室前の掲示板に貼り出します」
門倉先生のアイデアで創設されたのが「多読賞」と「ピカリ賞」です。
「『多読賞』は文字どおり多くの本を読んだ生徒に贈ります。一方『ピカリ賞』は、優れた本や傑作など『中学生でこの本を選ぶのか』と私たちが目から鱗が落ちるような本を選んで読んだ生徒に贈られる賞です」
最後に図書室を通じてどのように育ってほしいか聞いてみました。
「大学で論文を書く際、適切な資料を探し出すことができ、さらにきちんとした文章が書けるようになってほしいですね。その基礎となるのは中学校の図書室だと思っています」
また、広報担当で国語科の千野美紀先生も「図書室を自分の興味の幅を広げる発見の場にしてほしいです。そして、偶然手にした本から時間をかけて調べたり、考えたりする経験をたくさんして、何を自分は正しいとするのかを見極められる人になってほしい」と話してくれました。

1学期だけでも約50冊の貸出。多読賞&ピカリ賞常連のお二人に聞く!

中3の中村駿介くんは中1の時、1年間で127冊借りたという記録があります。また同じく中3の浅見優衣さんは「ピカリ賞」を何度も受賞しています。二人とも「多読賞」と「ピカリ賞」の常連で、門倉先生や千野先生も一目置く存在です。そんな中村くんと浅見さんに、本との関わり方、読書の仕方など、いろいろ聞きました。二人の言葉からは「ピカリ」と輝く言葉が続々と発せられました。

――1学期の間、どれくらいの本を借りましたか?
中村くん

 46冊です。

浅見さん

 ふだん冊数を気にして読んでいないのでだいたいですが、50冊ぐらいになるかもしれません。

――読書が好きなようですね。
中村くん

 好きというより日常の一部になっています。

――お二人にとって読書の魅力とは?
浅見さん

 頭の中で想像することが楽しいです。

中村くん

 好奇心を満たしてくれるところです。

――たくさんの本を借りていますが、いつ読んでいますか? またクラブ活動は何に入っていますか。
浅見さん

 私は華道部です。読書するのは通学の電車の中が多いです。

中村くん

 僕は水泳部です。僕も登下校時のほか、帰宅後、宿題を終え、眠る前にも読んでいます。たまに母から「本を読むのをやめ、早く寝なさい」と注意されることもあります。

――小学生の頃と比べ、読書傾向や読み方などは変わってきましたか?
中村くん

 小学校の時は絵が多い本が中心で、1回読んだら終わりでしたが、いまは何回も読み返すことも。
 たとえば、小学生の頃から読んでいる『南総里見八犬伝』。出版社によって細かいところで内容が異なるので、いろいろな出版社の『南総里見八犬伝』を読み比べたりしています。

――浅見さんはいかがですか?
浅見さん

 私は入学して国語の授業で古典を習ったことで万葉集などにも興味をもちました。また、太宰治さんの作品も教科書で知りました。最初は難しそうというイメージでしたが、挑戦してみようと思っています。

――これまでの「ピカリ賞」で印象に残っている本を教えてください。
浅見さん

 たまたま読んだ本が『ピカリ賞』に選ばれただけなので、1冊を取り上げるのは難しいですが、あえてあげるとすれば、『新・大学で何を学ぶか』です。一貫生なので、次のステージである大学に興味があり、手に取りました。

中村くん

 カンブリア紀の古代生物について書かれた『アノマロカリス解体新書』ですね。

――難しそうですね。
中村くん

 難しいとは思ったことはないですよ。本に関して難しい本と簡単な本の区別がつかないです。

――では、学校の図書室の魅力を教えてください。
浅見さん

 新しい本が続々と入ってくるので、毎回図書室に来るのが楽しみです。

中村くん

 一番良いと思うのは、新聞の近くに新着図書が置かれているところ。本の内容が新聞とリンクしているので、ここでも好奇心のままに本を選ぶことができます。

――最後に将来の希望を教えてください。
中村くん

 いま推理小説を読んでいて、探偵に興味をもち始めています。

浅見さん

 私は医学部に進みたいと考えています。

――ありがとうございました。
学年の枠を超えて学ぶAILの授業

同校独自のプログラムと言えばAIL(Advanced Interactive Learning〈双方向型の進んだ学習〉)。学年の枠を超えた縦割りのグループで、一つのテーマについて調べ、まとめたものをポスターに仕上げます。このAILについて、教頭の島田伸一郎先生に伺いました。
「AILは2017年からスタートした総合型の学習です。中1から中3までの生徒が7~8名のグループを作り、教科・学年の枠を超えて対話型学習をとおし、論理的思考力や表現力を養う学習です」
 テーマは「昔の遊びから新しい遊びを考える」(2018年)、「新しい祝日を考える」(2019年)、「新しい教科を考える」(2021年)で、発想力や創造力も試される点もユニークです。
「昨年(2020年)はコロナ禍だったため、グループワークができませんでしたが、通常だと週に1回集まり、作業をします。中1にとっては初めての調べ学習になるので、中2・中3の指導を受けながら、調べ学習の基礎を学び、中3はリーダシップを取ることを学びます。また、中3は後輩を指導することにより、自分たちのアウトプットにもなりますし、下級生たちは学ぼうという意欲も向上させます」
 最終的には1枚の模造紙にまとめ、廊下に張り出され、優秀作を選びます。
「AILは調べることが基本です。AILでも図書室は大いに活用されています」

 

※上記はNettyLandかわら版の抜粋です。全容はこちらをご覧ください。

本庄東高等学校附属中学校
[学校HP]https://www.honjo-higashi.ed.jp/
〒367-0025 埼玉県本庄市西五十子大塚318 Tel.0495–27–6711
最寄駅/
スクールバス:JR湘南新宿ライン(高崎線)「岡部駅」から8分、森林公園、妻沼、藤岡、伊勢崎、籠原からあり。

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