私学探検隊

リベラルアーツで人間力を育成する「スペシャル・ウェンズデイ」と「プロジェクト学習」

埼玉県東部、久喜駅に程近い所に昌平中学・高等学校はあります。2010年の中学開校から今年で4年目。“ニューウェーブ進学校”として多くの注目を集め、その勢いはいまだ止まりません。2013年春の大学合格実績を見ると、国公立大学・早慶上理ICU・GMARCHの合格者数は、4年前と比較すると1.5倍にもなっています。また現高校1年生・2年生の成績を見ても学力を大きく伸ばしているようです。一体どのような取り組みが功を奏しているのでしょうか。今回は当校の特徴的な取り組みでもある「スペシャル・ウェンズデイ」と、その一環として行われている「プロジェクト学習」について取材しました。

リベラルアーツで人間力を育て、社会で活躍できる人材を育てる

SWやプロジェクト学習では、生徒たちはグループで活動し、調査から発表まで自分達で進めていきます。

当校で行われている「スペシャル・ウェンズデイ(以下:SW)」と「プロジェクト学習」は、年間を通して水曜日に行われる教育活動です。有名大学の研究室訪問や芸術鑑賞など、様々な体験が年間を通して行われます。日々の授業ではなかなか得ることのできない新たな発見や感動、また「調べる」「まとめる」「発表する」「考察する」といった学問の基本を身に付けることができるプログラムです。当校におけるSWの意義・目的について、校長の城川雅士先生にお話を伺いました。
「本校では『人間力』の育成に注力しています。そのために必要な力として『共感する力』『倫理観』『チームワーク』『リーダーシップ』『創造的なアイデアや発想』の5つを柱としています。その具体的な取り組みとして、SWやプロジェクト学習を行っています。1つの教科だけの専門性を高めるのではなく、他の教科や社会との結びつきを考えるリベラルアーツとして、本校では位置づけています。生徒たちはグループで活動し、調査から発表まで自分達で進めていきます。」
その背景には、近年の難関大学の入学試験において、その教科だけの知識では正解できない問題が出題される傾向があるとのことです。「中期的には大学入試を、長期的には単なる専門家ではない、社会に出て活躍できる人材を育てる(城川校長先生)」ことを目指しています。特にプロジェクト学習では「世界」をテーマに、世界のリーダーになることも意識したグローバルな内容に特化したものになっています。

現代社会との結びつきを意識した体験学習スペシャル・ウェンズデイ

模擬裁判員裁判では、現代の社会問題が複雑に絡み合った内容をもとに、人を裁くことの難しさを学びます。

SWでの体験内容を見ると、大使館訪問(中1)やJICA訪問(中2)、地方裁判所見学(中3)など各学年において多岐にわたる内容が実施されています。その中でも、中学3年生で体験する「模擬裁判員裁判」について教頭の本間一行先生にお話を伺いました。
「模擬裁判員裁判では、大学の法学部の教授などの法律の専門家に協力していただき、生徒が裁判員になって本格的な裁判を体験します。題材は、認知症・年金問題・失業・介護疲れなど、現代の社会問題が複雑に絡み合った事件で、生徒たちは人を裁くことの難しさを学びます。またグループで相談する過程においては、チームの意見をまとめるリーダーシップなども学びます。」
この模擬裁判員裁判を体験した後日、生徒たちは裁判所に本物の裁判を見学に行き、実際に人が裁かれる場面を目にします。「振り込め詐欺」の裁判をみた生徒の一人は、「悪い人ではない人でも、罪を犯すことがある」という感想を持ったそうです。
SWでは年間で企画された内容の他にも、「高速道路建設の見学」などその時しか見られないタイムリーなものも取り入れています。「日々の学習と現実社会との結びつき(本間教頭先生)」が体験学習を企画する際の軸になっています。

世界をテーマに、自ら調べ学習するプロジェクト学習

「外務省訪問」や「JICA訪問」「大使館訪問」などSWで行う体験学習は、その前後に行うプロジェクト学習ともつながっています。

もう一つ、SWの一環として行われているのが「プロジェクト学習」です。「生徒主体のプロジェクトに基づく学習を通じて、生徒を動機づけ自信を持たせ、自立した学習者にする」ことを狙いとして、「世界」をテーマに「調べ」「まとめ」「発表」をする教育活動です。中学1年生から3年生までの3年間をかけて行われます。各学年においてテーマや狙い、概要が決まっており、例えば中学3年生では「世界は違うが解り合える」をテーマに、「相互理解が可能であることを認識する」が狙いです。また、SWの外務省訪問やJICA訪問、大使館訪問など、プロジェクト学習とのつながりが深いものもあります。調べてまとめたものは、1年が終わるごとに3学年全体に向けて発表します。そのため、上級生の発表からは将来の自分達を想像し、下級生の発表からは新しい視点を学ぶことができるそうです。

複数の専門性を兼ね備えた人材を育成昌平の体験学習

SWでは、「日々の学習と現実社会との結びつき」をテーマに、その時しか見られないタイムリーな体験学習も企画されています。写真は2012年に実施された「圏央道建設見学」。

「SWやプロジェクト学習により、当校の生徒は積極的に、日々の学習ができている」と校長の城川先生は言います。生徒たちは、SWによっていろいろなことに問題意識や興味を持ち、勉強が楽しめるようになるようです。取材の最後に、SWとプロジェクト学習の今後について本間先生にお話を伺いました。
「生徒に学力をつけさせるのはどこの学校も一緒だと思います。昌平では、学力だけではなく、懐が深くキャパシティが大きい、人間的に厚みのある生徒を育成していきたいと思っています。一つの専門性だけではなく、複数の専門性を兼ね備えた人材を、体験学習を通して育成していきます」
当校の教育理念と深く結びついているSWやプロジェクト学習などの教育活動により、生徒一人ひとりの視野や問題意識、興味や関心が広がるとともに、日々の学習にも良い影響を与えているようでした。この他の取り組みや詳しい内容については、説明会にて聞くことができます。ぜひ一度、足を運んでみてください。

昌平中学・高等学校
[学校HP]http://www.shohei.sugito.saitama.jp/jrhighschool/
〒345-0044 埼玉県北葛飾郡杉戸町下野851
☎ 0480-34-3381
最寄駅/JR宇都宮線・東武伊勢崎線「久喜駅」よりスクールバス10分。