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イベント 特集

校長対談:香蘭女学校鈴木弘先生・山脇学園山﨑元男先生【前編】2018.08.27

中高6年間も、その先も、
「天真爛漫に」「ひたむきに」生きる〝人〟を育てる

別学(男子校、女子校)は、私学の大きな特徴の一つです。別学出身の保護者であれば経験的に別学の魅力が分かりますが、共学しか知らない保護者にとっては、ベールに包まれた未知の世界? 
2017年4月、校長として新しい学校に着任された香蘭女学校鈴木弘校長先生と山脇学園山﨑元男校長先生は、これまでの教員生活はオール男子校。そして若い頃に、それぞれの学校でバスケットボール部の顧問をしていた頃からの旧知の仲。奇しくも同じタイミングで、しかも校長として人生初の女子校生活に飛び込んだお二人に、女子校の魅力をたっぷり語っていただきました。
1年前は、女子のスカートのはき方ひとつとっても、初めて見ることだったとか。校内の環境、衣替えの有無、クールビズなど、日常生活の有り様もそれぞれに違うので、お互いの学校にも興味津々のご様子ですが、中高時代を女子校で過ごす意味は共感しながらの対談となりました。

対談:2018年7月4日
対談場所:香蘭女学校校長室
インタビュー:NettyLand編集部


【前編】ジェンダーバイアスなく、自分らしくいられる女子校

————お二人とも女子校は長い教員生活で初めての経験ですが、女子校に入ってみて、どのような感想をお持ちになりましたでしょうか。

山﨑:男子校と女子校は違うんだろうなと、漠然と思っていたんですが、違う面と違わない面がありました。山脇学園からお誘いがあったとき理事長に、「女子教育の経験はないんですが・・」と申し上げたんですが、「大丈夫ですよ」とおしゃってくださいました。男子校ではありますが、1994年から96年にイギリスのイートン校で教壇に立っていた時、そんなに英語力のない私でも、生徒は先生扱いしてくれました。そのとき、どこの国でも、どんな立場でも、教員と生徒の関係性はあまり変わらないだろうと感じたんです。その経験があったので、男子校、女子校でもあまり変わらないだろうなと思うことができました。実際、あまり変わりませんね。
ただ細かくみると、やはり違いはあります。生徒への手のかけ方、かけどころが一番違います。手をかけない、「とにかくやってみれば」が校風の男子校(武蔵)にいたのですが、女子校はそうはいかない。例えば、遠足の行き先のトイレの数まで細かく考えておかないといけないということに実際に直面すると、それは驚きでした。

鈴木:私も、びっくりしたことはたくさんありますね。
男女の違いに関しては、立教にいたときは、女子校の立教女学院と香蘭女学校。男子校の池袋と新座。いつも比較されていました。大学から見れば、英検2級も女子校は早くからクリア、男子校は遅い、男子はもっと勉強しなさいと言われていました。
そして香蘭に来て、最初にびっくりしたのは運動会。まず完全非公開、撮影禁止ということです。考えて見れば今の時代、当然かもしれませんね。
それ以上に驚かされたのは、生徒です。運動会前の礼拝で、ついつい手を抜きがちな男子校のイメージを浮かべて、大勢集まると手を抜く人が出るという集団心理の話を取り上げ、「今度の運動会はみんな手を抜かず頑張ろう」って話したんです。しかし、始まってみると運動会で手を抜く生徒は見当たらないのです。みんな一生懸命。閉会式で生徒に謝りました。「みんなごめん、この前の話は皆さんにあてはまらなかった」って。千人を超える全校生徒が一斉に体操座りした時、隣の理事長に「まるで静止画ですね」と感激して話したのを覚えています。プログラムは楽しく和気藹々の種目もありますが、女子はダンスが大好きですね。

山﨑:私の初めの印象も、生徒は真面目でひたむきだということです。行事にしても、そう。山脇学園の体育祭では、代々高3生全員で「ペルシャの市場にて」を踊ります。踊り始めから泣いている子もいるくらい、気持ちも高ぶっていますし、後輩にとっては憧れでもあります。体育祭が終わって全員下校した後に高3生だけが残って、もう一度、踊ってくれます。赤坂のビル群の灯りに照らされた校庭で、教員のために披露してくれる「闇ペル」、とても感動しました。合唱祭では中3生は全員第一制服(日本初の洋装の制服)に三つ編みで歌うのが伝統です。そんな行事でみる生徒のひたむきさは、言葉では言い尽くせないくらいですね。

————お二人と生徒との距離がとても近付いているのを感じます。生徒との距離が縮まった瞬間、出来事はありますか。

鈴木:私は授業を持っていませんが、校内では生徒たちは好意的に挨拶してくれます。遠くから手を振ってくれたり、目が合うとキャッキャと笑いかけてくれます。こんなコミュニケーションの取り方は男子校にはなかったので、自分の身繕いを見直してみたり、周りを見回したりしてしまいました。教室の窓の下を歩いていたら教室の窓から手を振ってくれたので、思わず手を振り返したら、「授業中よ」という先生の姿が窓に見え、焦ったこともありました。生徒にとって私は叔父さんくらいに見えるのでしょうか、親しみを持って接してくれるのかなと思います。
校長室生徒たちが来ることがあります。この間は生徒会の役員たちが来ました。いつの時代もそうなのですが、自治活動の現状には制限があって窮屈だと感じている生徒もいます。変えたいところがあると意見を求めて来ました。自治活動は大切です。全校の総意を集めるにはどうすべきか、そしてその後、どう議論を進めたらいいのかなど悩みを聞きました。

山﨑:山脇学園の生徒も、廊下などで挨拶してくれますね。私は中1全員に道徳を教えています。山脇がどんな教育を目指しているかという、自校教育を交えます。去年の体育祭の開会式で生徒の挨拶がとてもよかったので、普通に話したら負けるなと思って「今日はみんなの安全を願ってミッキーマウスのネクタイをして来た」と言ったら、大受け。列の後ろの方から「校長先生かわいい」なんて声が飛んで来て「校長にかわいいなんていうなよ」って笑ったんですけど、その後、生徒との距離が縮まったと思います。
山脇学園に来て感じたのは、先生と生徒の距離感が近いということです。面倒見が良いっていうのは、裏返せば、うるさい、厳しいということになりますが、厳しさは必要だと思います。時と場合にふさわしい節度のある、今の山脇生に好感を持っています。 ————世間では、女子は数学が苦手とか理系には向いていないとか言われることもありますが、本当にそうなんでしょうか。

山﨑・鈴木:そうじゃないですよ。

山﨑:これまでの固定観念に縛られて、女子は理系に向かないなんてバイアスがかかると、本心では理系に行きたいのに、周りの目を気にしてやりたいことを我慢するということもあります。逆に男子だから語学が苦手かというとそうばかりでもなくて、語学をやりたくて大学を選ぶ男子も多いですしね。性差によるバイアスの影響は大きいと思います。

鈴木:最近では脳科学でも男女の脳の構造の違いが研究されていますが、教科によっては同じ指導案、導入でうまくいかないこともあります。例えば、男子校の数学の指導案をそのまま女子校で使ってもうまくいかないというような。長年、女子校で教え方を作り上げてきた先生にはノウハウがありますし、そのノウハウを持っているのが別学じゃないかなと思います。別学のメリットです。香蘭では、もっと女性を知った上でその教え方を工夫して、女子は理系が苦手というイメージを払拭したいと思っています。

———そういえば、女子校から共学校に移った先生が、授業をしていて女子校の笑いのツボと、共学の女子の笑いのツボが違って戸惑ったというお話をされていました。
それぞれの学校での、性差を払拭するような取り組み、女子のキャリア教育について教えてください。

山﨑:山脇学園はEI(English Island/イングリッシュアイランド)、SI(Science Island/サイエンスアイランド)で、英語にも理科教育にも力を入れています。特にサイエンスアイランドでは理系の専門職を育てる目標を持ちながらやっています。昨年、韓国で行われたIEEE Seoul Section Student Paper Contest 2017のポスターセッションに、高校生として1校だけ山脇学園の高1が参加しました。そこでイベント賞を受賞したんです。英語でプレゼンする大会ですし、とても誇らしかったですね。これまでは女子で理系というと生物、薬学、医療というイメージが強いかもしれませんが、ロボットという方面をやる生徒もいることを大事にして行きたいです。女子が不得手な分野かというとそうではない。山脇学園では、あなたには向いていないよと言われることはないので、本来進みたい道を歩めているのではないかと思いますね。

鈴木:香蘭は、キャリア教育も含めてベースがキリスト教です。その規範となるキーワードは「多様性」。一人ひとり皆違う「神様から与えられた賜物」。これを基に自分の生き方を考えてみる。他者を疎外したり同化したりする風潮を、いい意味で宣教師が壊してくれたキリスト教の歴史があります。みんな違っていいんだ、補完しながらみんなで平和な社会を作るんだというベースメント。これを基軸にしたキャリア教育を行っていくのがキリスト教学校です。
キャリア教育でも、職業というよりもライフデザインというか、自分でどういう生き方をするかを考えさせたいと思っています。自分に神様から授かった賜物を見つけ、それを武器に世の中を生きていく。自分の能力を活かして生きていく。そのために中高時代は、それを見つける6年間であってほしいと思います。これまでの教員の経験を持ち寄りながら、香蘭のキャリア教育を体系立てようとしているところです。

山﨑:山脇学園では総合的な学習の時間を活用しています。中3と高1で、大学の学部の先生をよんで何を学ぶ学部かを話してもらうユニバーシティウイークを催すのは一例です。海外大学進学セミナーも年4回開催、ボストンのラッセル・カレッジとの指定校推薦も提携して、海外にも目を向けるようにしています。7月に、ホッピービバレッジ株式会社の石渡社長に来ていただき、高2生対象に講演をしてもらいます。このような働く現場の女性の話だと身近に感じ、自分のライフスタイルにどう広げればいいか、どういう生き方があるのかを考えるきっかけになります。まだ漠然とした考えしか持っていない生徒にとって、具体的な話として受け取れるようです。特に中3、高1の時期は大切だと考えています。

鈴木:男性にもある感情ですが、「憧れる」という気持ちが男女で違うのではないかと思います。男子もサッカー選手だとか身のこなしがかっこいい先輩などに憧れることはありますが、女子は、例えば先輩と目があったらうれしいとか同じものを持ちたいとかいうことがあるように、憧れの感情が強いのではないかと思います。感情の表現方法が男女で違うのかもしれません。香蘭には高等科3年生が中等科1年生をサポートするビッグシスターという制度があります。このふれあいを通して、先輩から自分の将来像のようなものを見出しているように感じています。

山﨑:〝女子校あるある〟ですね。憧れの先輩がいるんですよね。

鈴木:成長の初めは親など身近な大人の模倣から始まりますが、成長とともに徐々に教師だけではなくクラブの先輩後輩からも学ぶようになります。身近な先輩から学んで成長している様子を感じます。

山﨑:男子校では見かけませんでしたが、どうも女子校では職員室に1人で来ない傾向があるようです。グループで来るんですが、何かのきっかけでそのグループが変わることがあります。そうしたタイミングでの諍いやいじめの芽を摘むために、中学の間は、毎週席替えをしています。

鈴木:香蘭の校長就任前に、ある女子校の先生から、女子は最初のうちにできた集団に固まりがちだから、最初はどんどん席替えをして人間関係を動かすことが大切だと教えていただきました。香蘭でもこのような経験から、別学だから気をつけなくてはいけないところに対しては、きちんと配慮しています。

山﨑:昨年から中1にシアターラーニングを取り入れました。全員が一箇所に集まって、ミュージカル俳優から発声や体の動かし方を教えてもらうんです。普段、交流のない他のクラスの生徒とも触れ合いながら、関係を築いて行くことを学ぶワークショップです。声も歌も動作もうまい役者さんたちに導かれて、初対面同士でもボディコンタクトしながら打ち解けていきます。

—————— 後編に続く ーーーーーー

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