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イベント 特集

教科をつなぎ、体験をつなぎ、人をつないで、人格の根っこを作る田園調布学園2019.06.28

 「問題解決型授業」「主体的な学習」「知的好奇心を養う」「教科横断」…。多くの私学で魅力的な教育が示されるとき目にするキーワードですが、田園調布学園は学ぶことの醍醐味がぎっしり詰まった骨太なプログラムで際立ちます。
 田園調布学園の学校案内パンフレット(2019年版)から、教科について説明された文章をいくつか抜粋します。何の科目かは最後で、“答え合わせ”を。

「紋章がテーマの時には、研究者の発表動画を見て理想の紋章の形や色の使い方を学び、資料を使って各パーツの呼び方や意味を理解した後、グループで話し合いを重ね、学校の紋章を作ります」
「角材を用いてトラス構造を基本とするブリッジを作製します。コンテストでは、設計についてプレゼンテーションした後、おもりで負荷をかけて行き、何㎏まで耐えられるかを検証します」
「『走れメロス』を放送劇の台本として改編し、発表します。登場人物を増やすことも認め、セリフを立ち上がらせて行きます。また効果音を追加するなどの工夫を凝らします」

 取材から見えてきたのは、果汁100%ジュースのような、飲めば違いがわかる「おいしい授業」を作り出す田園調布学園の「つなぐ力」でした。

〔お話を伺った先生〕
校長 西村 弘子先生
教頭 清水 豊先生
入試広報室長 細野 智之先生
(2019年5月取材)

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田園調布学園の学びにつながる算数1科目入試
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 田園調布学園は2020年入試で、2月1日午後に算数1科目入試を導入します。
先だって公表されたサンプル問題からも明らかなように、科目と出題には同校の思いを反映させる、強い意志が伺えます。
 「これまでも、算数入試への関心は、ありました。午後という日程や科目数、試験内容などを検討する過程で入試は入学後の学びとつながっていて欲しいということは根底にありました。あらゆる分野に関心をもてるよう授業改革を行ううちに、生徒の進路も文系、社会科学系、理系へと自然に広がってきたこともあって、算数なら、1科目でも入学後の田園調布学園の学びにつながるあらゆるものを入れ込める道筋が見えたことが、今回の入試改革に踏み切った大きな理由です。読解⼒・論理性も算数で問える、理科や社会の要素が出てきたとしても、知らない言葉が出てきたとしても、それをつなぐ力を測ることが算数入試にはできる、と思っていますから、踏み込んでじっくり取り組んでいってほしいです。小学校の学びと入学後の学び、書物からの知識と授業での学び、人と人、あらゆることをつなげて行くのが田園調布学園の授業・教育ですから」(西村先生)
 ぜひ学校ホームページで公開されている、サンプル問題の、5️⃣を見てください。
(http://www.chofu.ed.jp/wp/wp-content/uploads/2019/05/486cc639be0f7e3942fcca406cfdf61a-1.pdf)
 「一見むずかしいと思う人はいるでしょう。でも、よく読めば処理は難しくありません。問題文をしっかり読もう、じっくり問いに取り組もうと、受験生に思って欲しいです」(清水先生)。

 また面接については入試当日から、入学予定者面談に変更。
 「面接の変更も必然的な流れでした。田園調布学園ではこれまでも思考力、表現力を問う入試問題を出していましたが、ここ数年、社会と理科で時間内に最後まで到達できず、時間内に全問解き終わらない受験生が増えていました。それならば、時間を延ばせばいいのではと考えました。そこで社会・理科の試験時間を30分から40分に延長することに。そうなると午後2時までに面接を含め全ての入試を終わらせるのは難しい。それに加えて昨今の入試当日、初めて来校する受験生もいる状況で面接するより、入学予定者との面談として実施するのが良いのではないか、という判断もありました」(細野先生)
 「面談の役割は変わりません。初めて受け入れ側と受験生が顔を合わせる“出会い”の場です」(西村先生)

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17年で育ってきた土曜プログラム
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 2002年から回数を重ねてきたのが、「土曜プログラム」です。このプログラムに期待して入学してくる受験生も増えてきました。
 学年ごとにテーマを設けて展開する「コアプログラム」と、約170の講座から自分で選ぶ「マイプログラム」で構成されます。コアプログラムでは、学年の最後に調べたことを発表する機会も設けられており、生徒たちは自分たちで学びを深める楽しさを知り、人に伝えるスキルを身につけています。またマイプログラムは、生徒自身がやりたくて取った講座でも、抽選に漏れて取った講座でも、新たな気づきを発見する機会になっているようです。「受験勉強は大変だけれど、ここではサッカーに没頭する」とか、「今やらなかったら、もう一生やらないかもしれないから日本舞踊を選ぶ」とか、選ぶ理由は様々。「身の回りの不思議。これってなぜだろう」を考えたいから講座を選ぶという生徒もいます。これらは結果的にポートフォリオにつながっていくでしょう。「内面が重層的になって来た」(西村先生)生徒の姿は土曜プログラムの成果と、学校としても自信を深めています。それでも現状に満足せず、常にブラッシュアップと課題に向き合っています。

写真は第二校舎〜創造探究棟〜の多目的選択教室での教科横断授業、土曜プログラム「理科ふしぎ不思議」、土曜プログラム「ポスターセッション」の様子 *******************************************************
究めるまで探し求め続ける65分授業
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 田園調布学園の授業は1コマ「65分」の、「協同探求型授業」です。
 「授業のなかで、“生徒の頭の中をアクティブにしていこう”、つまり授業で生徒が活動する時間を確保して“実践的・体験的な学び”を増やそうと、2002年から始めたのが65分授業です。それが2014年から今に続く、独自の『協同探求型授業』へとつながっています。授業で、教師が生徒に『なぜ?』と問いかけ、大勢の中でだれかが発言することから協同が始まります。さらに、考えを共有したり、友人の意見を聞いて自分を深めたり批判精神を養ったりする、さらに人に伝える場面も多く取り入れた活発な授業で、学習したことの定着と思考力や表現力を養う、それが『協同探求型授業』です。ICT機器も積極的に活用しています。徐々に教科横断授業もできるのではという発想も生まれ、数学と物理、技術家庭科と物理のような教科横断授業も実施しています」(西村先生)
 数学科の細野先生は昨年、物理の先生と協同で、高2生に、「KAPLAブロック」を使った教科横断授業を行いました。生徒が、「数学って計算が多いけれど何に使われるのかは分からなかった。でもこういうところに数式が入っているんだと気づけて良かった」と言ってくれたと目を輝かせる細野先生。学園全体に探求型授業が浸透したように、教科横断の試みも広がりを見せているようです。何より、生徒が授業でも課外でも活発になっていることに、手応えを感じていることが伝わります。

 田園調布学園では、美術室のある第二校舎に、生徒の美術作品をギャラリーのように展示し、アートが生活の中に自然にある環境を作っています。そんな学園らしく、教科横断に美術が果たす役割も大きいようです。地学では宇宙をテーマにプログラミング動画を作成、倫理で学んだ哲学思想をコラージュで表現、本の感想を版画に作成、デザイン定規で書いたものを別のものに見たてるといった作品が、数多く生まれています。
 「わざわざSTEAMと名前をつけなくても、教科をつなげていくと、表出の仕方が具体的な美術にもつながっているということでしょう。表現したい知識を理解していないと創造力にもつながらないものですし。“つなぐ”がキーワードですね」(西村先生)

 中2から一人一台所持しているノートパソコン(Chromebook)の活用は、例えば数学では夏休みの課題として「関数グラフアート」に取り組んでいます。数学の教科書の中にある関数ではなく、グラフアートを完成させるために関数を用いるというアプローチを取り入れたことで、生徒の想像力がより深くなったと感じています。またアンケートのようなサービスも演習型の授業にうまく使っているそうです。英語科では、Chromebookを用いて多読指導を行なっています。

 検索すれば答えが出てくる、近くにいてもSNSで会話している、そんな時代だからこそ、直接話をしてわかり合うことを大切にしたいと西村先生。
「ICTを使うと授業は分かりやすくなります。ただ、分かりやすいことが良いとは言い切れないので、田園調布学園では、Chromebookの使用は教員の工夫に委ねています。パソコンで調べたら瞬時に答えが出るだけに、調べる過程を面倒に思わないように気をつけなければならないと思います」(清水先生)
 そこで体験学習が大きな役割を果たします。

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「発信地で発信者に学ぶ」体験学習
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 「考える前に、まず感じることが大切です。中1には考えたこと、感じたことを言い合いましょうという時間を持たせるようにしています」(西村先生)というように、学校生活のあちらこちらに、発見や驚きを共有する風土があります。
 体験学習・学習体験旅行を行うにあたり、田園調布学園が大切にしているのは、「発信地で発信者に学ぶ」こと。山形県酒田市での体験学習(中2 ファームステイ)では、自然とともに生きること、近しいご近所付き合いや農作業を体験。山形の食文化を肌で知ることは、土曜プログラムの食の探究活動の入り口にもつながっています。都会を見直したり家族のありがたさに気づいたりすることもあるといいます。苗代川・水俣・長崎・諫早などを訪れる西九州方面学習体験旅行(高1)では、患者、被爆者、研究者、ボランティアなど発信者たちから話を聞き国際関係、環境、平和について考えます。事前に国語の授業で発信地を描いた『故郷忘れじがたく候』(司馬遼太郎)、『苦界浄土』(石牟礼道子)、『祭りの場』(林京子)を読み学んだことが、現地での「体験」へつながり、生徒の視野を、自分から他者へ、社会へ、さらに世界へと広げていきます。

 2019年度の東京大学農学部に推薦入試で合格した生徒は、学校の中にあるあらゆるプログラム、体験が進路につながった生徒だったそうです。元々スキューバダイビングのライセンスも持っているくらい海が好きだった彼女が環境問題に目覚めたのは、西九州方面学習体験旅行で聞いた諫早湾の干拓についての講演がきっかけでした。そこから高校生も参加できる環境問題のプログラム参加や、東京理科大学との高大連携プログラムで光触媒の講義を聞くなどして、だんだんと興味・関心を深めて行ったのだそうです。本人が「土曜プログラムで取った囲碁の講座で考えること、思考力が身についた」と言ったことについては、顧問は笑って首を傾げていたそうですが、そこまで言える自信をつけたのは、誰もが認めるところのようです。
 AOや公募推薦で進学する生徒は特に、授業や体験が進路につながるのが見て取れると言います。横浜国立大学教育学部のAO入試での進学者は、高大連携で研究の面白さに気づき、こういう授業をやってみたい、子ども達に伝えたいからと教育学部を志望して合格。横浜市立大学データサイエンス学部に進んだ生徒は、土曜プログラムで、社会の課題を高校生の立場で解決するSAGE-JAPAN講座を選択し、フードロスについて調べて発表したことから学びたい学問が見つかり、公募推薦に応募して合格したそうです。知識と体験がつながったことが、AOや公募推薦という入試形態で強みとして発揮されたと分析しています。

 誰もが経験をつなげられるとは限りませんが、細野先生は生徒を信じて、こう語ります。
 「教科横断授業も経験をつなぐきっかけになると思います。教員もアンテナを張って、自分の教科が他教科とつなげられると考えるようになると、授業に深みも増して、生徒もアクティブになってきます」
 そして、西村先生は、これから先を見つめます。
 「それぞれの事柄の間には隙間があって、その隙間を狭くしてつなげていくのが体験でしょう。例えば諫早湾の問題も、新聞記事だけでも理解はできますが、現場を見て、専門家の話を聞くことで生まれる気づきがあるはずです。質の良い体験を学校で用意してやりたいと思います。これからは、生徒が自分でつなぐ力をつけていくことが課題です。大学入試で必要になってくるポートフォリオにしても、大学入試の材料集めではいけないですよね。十数年生きてきた自分を振り返ったときに何が浮かんでくるか、その時に何を感じていたかを俯瞰して自由にとらえさせたいのです」

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生徒の可能性を無限に
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 「みんなが行きたいと思わないかもしれないけれど、やりたいことがやれる学校でいたいと思います」(清水先生)と、海外大学との指定校推薦制度もスタートします。田園調布学園では、女子だから文系、女子だから数学が苦手で良いという消去法はありません。学校の海外研修やターム留学プログラムへの参加、トビタテ!留学_Japanへの応募など、生徒の可能性は、無限です。今年の夏から、エンパワーメントプログラムを正式に導入します。そこで見つけるのは、「ちょうど良い」ではなく、きっと「ちょっと背伸びしたくなるような」自分でしょう。

写真は、数学のグループワーク、関数グラフアート生徒作品「静かな夜に」、高1の西九州方面学習体験旅行の様子

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 昨年、第二校舎〜創造探究棟〜が完成しました。家庭科、芸術科実習室、和室、選択教室などがあります。なでしこホールでは、海外経験やコンテストへ参加した生徒の発表会や、土曜プログラムの発表会なども行われ、感想を伝える場面も多く見られます。統計検定、全日本高校模擬国連、田辺聖子文学館ジュニア文学賞、青少年読書感想文コンクール、高校生直木賞など、あるいは運動部や文化部の部活動の活動も含め、学校の外でも存在感を見せる田園調布学園。授業や体験学習が充実し機能しているからこその活躍です。
 さて、冒頭の学校案内からの抜粋。紋章をテーマにした授業は「英語」。ブリッジを作るのは「技術家庭科と物理の教科横断授業」。『走れメロス』を放送劇に仕上げるのは「国語」でした。
(市川理香)

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