東洋大学京北中学校
受験生への校長メッセージ
2022年度入試 第8号
1970年、大阪で万国博覧会が開かれました。当時、中学3年生だった私は、どうしても「月の石」を見たくて父に連れられて、開場と同時に入場ゲートから一目散で、ハアハア、ゼイゼイ言いながらアメリカ合衆国パビリオンを目指して走り抜けました。そんな「月の石」も、上野動物園のパンダのように「じっくり見る」ことはできず、ただ通り抜けるだけでした。
万博のテーマ展示プロデューサーとして選ばれたのが岡本太郎さん(芸術家)で、今も永久保存で大阪のシンボルとして残されている「太陽の塔」は、大阪万博テーマ館の一部でもありました。
岡本太郎さんが80歳を過ぎてテレビ出演された際、司会の片岡鶴太郎さんに「先生、おいくつになられるんですか?」と尋ねられ、「はたち」と答えられる、お茶目な方でもありました。
しかし根は極めて真面目で、芸術一家に生まれ既存概念にとらわれることなく育ち、「反逆児」との異名を持つほど貫かれており、またそれが創作への情熱にもなったと言われています。「職業は人間」、「芸術は爆発だ」、「芸術は呪術だ」、「グラスの底に顔があっても良いじゃないか」などの言葉を聞いたことがある受験生もいらっしゃるかもしれません。
そんな岡本太郎さんの言葉を紹介します。
「私は人生の岐路に立った時、いつも困難な方の道を選んで来た。」
皆と一緒に確実・安全で平坦な道を選ぶのは、安心して落ち着いて取り組むことができます。できることならば、怖くて危険な道は進みたくはありません。
私は休みの日に3時間半ぐらいの散歩へ出掛けます。そんな時いつもと同じ道を歩けば、時間も読めて結果が分かるので何かあった時にも直ぐに対応することができます。しかし私は一度、歩いた道と同じ道を歩くことが嫌いです。折角の人生ですから、今までに経験したことのない、先が見えないワクワクする新しい道にチャレンジしてみたいからです。
岡本太郎さんは困難な道は自分を鍛えてくれる道で、結果として大きな長い目で見れば実力を付けることができ、より大きな成果に繋がる道だと仰っているのかもしれません。
困難な道は、本当は自分がより望む道であって、望みが高ければ高いほど、その分だけ困難も大きくなりますが、実は、自分が望む道を自ら選ぶことができることこそが一番幸せなのかもしれません。
間もなく入試も本番を迎えます。いつもの平坦な道を選ぶか、敢えてデコボコ道を選ぶのか、それは、あなた次第です。
2021年12月13日
東洋大学京北中学高等学校
校長 星野 純一郎