日本女子大学附属中学校
教員リレーエッセイ【12月】植物の戦略 ~カラスウリ~
例年より暖かいとはいえ、12月に入り西生田の植物たちも冬支度を行っています。今の時期、校地内では様々な果実に出会えます。動けない植物は様々な戦略を使い、自分の遺伝子(種子)を散布します。今回は動物に捕食されることで種子が散布される植物を紹介します。
校地内の林縁には鮮やかなオレンジ色の「カラスウリ」が見られます。植物の大きさを表現するのに「カラス~」「スズメ~」など身近な動物の名前がよく使われ、スズメウリは果実が直径1~2㎝、カラスウリは直径6㎝ほどになります。
夏から秋にかけて白いレースのような不思議な花を夜から朝にかけて咲かせます。結実すると、縦の線が入った緑色の果実になり、熟していくと縞模様は消え全体がオレンジ色に変わっていきます。
「食べやすい大きさ」「見つけやすい色」の果実は鳥たちに人気があり、早いうちに食べられます。果肉部分は体内で消化され栄養となり、種子は糞とともに排出され新しい地で発芽します。校地内に見られる赤色のピラカンサ、濃紺色のネズミモチ、赤色と黒色のクサギなどは鳥たちに人気があり、どんどん食べられていきます。一方、カラスウリはなかなか食べられず、晩秋~初冬まで果実が残っていることが多いです。カラスウリの種子は「カマキリの頭」に似ていて、果実が腐り晩秋~初冬の餌が少ない時期にこの頭のような種子が顔をのぞかせると、鳥たちは好んで食べ始めます。捕食時期をずらして鳥たちに種子を運んでもらうという、カラスウリの生き残るための戦略のひとつといえます。
ちなみにカラスウリの種子は、「結び文」に似ているとか、大黒様が持つ「打ち出の小槌」に似ているともいわれます。カラスウリを採集したら、ぜひ種子を取り出してみてください。あなたには、何に見えるでしょうか?