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日本女子大学附属中学校

教員リレーエッセイ【5月】花の女王

自宅の庭の薔薇が咲きました。
薔薇が咲き始めるのはいつも五月ごろからなので、今年は少し早い開花です。
窓を開けるたびに「おはよう、今日は元気かしら」と話しかけていたので、薔薇の方もそろそろ鬱陶しくなって咲いてくれたのかもしれません。

薔薇はその美しさから「花の女王」とも呼ばれています。
たしかにフリルのように幾重にも重なる花びらの中に花の芯がすっと立っている様子は女王の名に相応しい気品と、凛とした美しさを感じさせられます。
しかし薔薇は強さを感じさせる一方で、蠱惑的な印象を持つ花でもあります。

三島由紀夫の短編に「薔薇」という作品があり、その冒頭に「君は薔薇に殺された詩人を知っているか?それは(略)リルケである。」と書かれています。
恥ずかしながら冒頭の文章があまりにも印象的で、内容はあまり覚えていませんが、この一節を読んだ時、薔薇を愛すがあまり薔薇によって死んでしまうという作り話のような詩人がいたことに、とても驚きました。
そこまで薔薇の美しさは人を惑わすものなのでしょうか。
紀貫之の歌で「我はけさうひにぞ見つる花の色をあだなるものといふべかりけり」というものがあります。「さうひ」が薔薇のことです。解釈は様々あるようですが、「あだなり」には「たおやかで美しい、なよやかでなまめかしい」という意味があります。この時代の薔薇は現在私たちが知っている西洋薔薇ではなかったはずですが、この薔薇もまた、朝の清廉な空気の中で異質な美しさをはなっていたのではないかと想像できます。

我が家の薔薇はそんな薔薇のイメージとは異なり、バレエのチュチュのような愛らしい見た目をしています。真紅の薔薇が大人の薔薇だとすれば、我が家の薄ピンクの薔薇は可憐な少女の薔薇だと感じます。どちらも魅力的。花って奥深いですね。

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