晃華学園中学校高等学校
N's Kitchenに取材されました!(第二弾)
東京都調布市にある晃華学園中学校高等学校の中学3年生の宗教の授業では「食と救い」をテーマにした授業が行われています。今回は授業を担当されている宗教科主任の安東峰雄先生にお話を伺う第2回です。
2024年10月取材・文編集部N’s KITCHEN編集部
編集部
宗教の授業に対して厳格な印象を持っていましたが、実際に授業を見学させていただくと、とてもリラックスした雰囲気の中で行われていて、生徒さんたちが生き生きと発言されているのが印象的でした。また「食」を通して伝えられるメッセージや、誰かと一緒に食事をすることの意味について、改めて考えさせられました。
安東先生
宗教の授業で一番大事なのはキリストの福音、つまり「愛」を伝えることですが、2000年前の聖書からのメッセージをわかりやすく伝えるために工夫をした結果、このようなスタイルを取るようにしました。また、生徒には学校は「第二の家庭」のように安心して過ごしてもらいたいと思っています。実際に信頼関係があるからこそできる授業もあります。
編集部
なぜ宗教の授業で「食」をテーマにしようと思われたのですか。
安東先生
宗教の授業は論理でなく感情の授業です。生徒が実感できるように身近な事柄を扱いながら授業を進めるようにした時に思いついたのが「食」です。伊藤幸史神父様(カトリック新潟教区司祭)の講演に感銘を受けて、授業に取り入れました。イエス・キリストは、ともに食卓を囲む人に「あなたを愛している」というメッセージを伝え、寂しい思いをしている人を仲間として招き入れました。そのため、イエスが食卓を囲んでいるシーンは、聖書にも多く登場します。生徒自身にも「食」を通してなぜ愛が伝わるのか、なぜ心が救われるのか、それらのことを理解してほしいと考えています。
編集部
授業の中ではお弁当も大きく扱われていますね。
安東先生
授業でも話しましたが、家族による手づくりのお弁当と市販のお弁当の決定的な違いは「あなた一人のことを思ってつくられたかどうか」です。健康への気遣いや好物、食べられる量を把握してつくられたお弁当には、食べる人への愛が込められています。そのことを生徒に気づいてもらいたいです。毎日のお弁当づくりが難しいご家庭は、行事の時など年に数回でもいいのでつくってもらえたらと思っています。本校にもそれが難しい生徒がいて、私がお弁当をつくって一緒に食したことがあります。食事をつくってもらった経験・食卓をともにした経験は愛された経験と同義だといってもよいと思うので、ミッションスクールとしてこの部分を大切にしていきたいです。
また、生徒が集まってお弁当を食べる時間も大切だと思います。感染症のまん延でそれができなかった3年間は中高生にとってあまりにも損失が大きかったと感じています。黙食が推奨されていた時期のことですが、あるクラスが体育祭の時に全員で集まってお弁当を分け合いながら食べていました。まだ2類に指定されていましたので、教師としては注意するべきことだったのですが、その光景にとても感動したことを覚えています。
編集部
共同通信社主催「弁当の日おいしい記憶のエピソード」コンテストには、これまで多くの生徒さんが入賞されていますね。受賞作を拝読すると、親子の会話やその時の気持ちが細やかに書かれていて、読んでいるこちらもあたたかい気持ちになります。
安東先生
賞を取ることではなくて、感謝の気持ちを確認することが参加の目的です。子どもたちがこれを機会にお弁当をつくって、お弁当への想いを文章化することに価値を置いています。そうは言っても、多くの生徒が入賞するのはやはり嬉しいです。受賞作以外にも賞をあげたい作品がたくさんあることを付け加えておきます。
編集部
授業後に生徒さんたちに感想をうかがいました。本日の授業を受けて、普段家族にお弁当をつくってもらうのが当たり前だと思っていたが、先生の話を聞いて感謝の気持ちが芽生えてきたとのことでした。生徒さんたちも家族に食事(オムハヤシ、ハッシュドビーフなど)をつくることがあるそうで、家族からありがとうと言われると嬉しい、とおっしゃっていた生徒さんもいました。まさに「食」を通した気持ちの交流ですね。