2015年4月、『論語』を学ぶ伝統校に「グローバルコース」が誕生!
伝統校が進める、「学びのイノベーション」
二松學舍大学附属柏中学校・高等学校は、6年をかけて『論語』を学べる全国唯一の学校として有名です。
二松學舍大学の前身である漢学塾を明治10年(1877年)に創立したのは、漢学者の三島(み しま) 中(ちゅう) 洲(しゅう)でした。大学の附属校である中学では、彼の「世の中に出て、社会の役に立つ人間になる」を建学の精神として掲げ、「学力」と共に「人間力」の向上を教育の柱にしています。そのため、『論語』に重きを置いているのです。
開校4年目ながら、伝統を受け継ぐ同校では今、「学びのイノベーション」が行われています。
2012年には、二松學舍全体で取り組む長期計画「(エヌ)N’2020(ニーマルニーマル) Plan(プラン)」が打ち出されました。東京オリンピックが開催される2020年に向けて、「愛校心の高揚」「教育の充実」「進学校化への取り組み」「国際化への対応」「地域との連携強化」の5つの教育目標に力を入れる計画です。
新コース「グローバルコース」で広がる、海外研修の選択肢
そして来年4月には、現在ある「特選コース」「選抜コース」のほかに、「国際化への対応」実現のための新コース「グローバルコース」が誕生。海外大学の受験も視野に入れ、特選コースに海外研修の選択肢を増やしたコースです。具体的な内容はこれから詰められますが、グローバルコースでは、中学の3年間で大きく3つのステップを踏みます(下表)。
1 海外研修に向けての学習。「校内英語研修」「国内イングリッシュキャンプ」などで、英語力やコミュニケーション力、外国文化を学びます。
2 海外研修。英語研修は、オーストラリアで2週間、韓国やフィリピンで1週間行う予定です。
3 海外研修後の学習。今後補うべき能力を確認・強化します。アクティブ・ラーニング(先生による講義だけではなく、生徒が課題を議論したり、プレゼンテーションを行うなど、能動的な授業)や数学の英語版テキストも導入する予定です。
校長の長谷川成樹先生はこう話します。「特選コースとグローバルコースはベースになる学習は同じです。しかしグローバルコースは、料理のコースメニューのように、さまざまな海外研修を追加で選べるようにします。特選で入学した生徒が2年生になった時に、グローバルコースと同じメニューを味わえる余地も残すつもりです。さらに高校ではスーパーグローバルコースを、2017年にスタートさせます。高校進学時に再度コースの移動を可能にすることも検討したいと思っています」
グローバルコースの第1回・第2回入試の受験科目は、国語、算数、理科、社会。理科と社会は英語(リスニングを含む。英語検定4級程度)に変更もできます。また、グローバルコース合格者のうち、成績優秀者には「グローバル人材育成奨学金」が支給されます。スライド合格・再チャレンジも可能なので、まずは「選抜」を受験して、合格後に他コースを受験することも可能です。
タブレット端末の導入が、「自問自答」につながる
グローバルコースの誕生と共に、強化されるICT(インフォメーション・コミュニケーション・テクノロジー)教育にも注目です。来春から1人1台、タブレット端末が導入されますが、情報を調べる、処理する、管理する、通信するなど、すでに知られた活用法はあるものの、長谷川校長は一歩先を考えています。
「たとえば、国語の授業で詩を取り上げたとします。ただ言葉の意味を調べるだけではなく、英訳を調べ、文化の違いによって英訳の言葉が変わることまで調べる力をつける。次々と疑問や興味をもち、深く、広く調べてほしいのです」
長谷川校長は、孔子の弟子の言葉「吾れ日に吾が身を三省す」(私は常に自らのあり方を省みている)から、「自問自答」という言葉を教育のキーワードにしています。次々と疑問をもって調べることは、この自問自答へとつながっているのです。
「本当の学力、生きる力とは、自問自答ができることだと思います。自分や社会にとって何が問題なのか。問題を見出して、それに答えていこうとする。もしかしたら、答えはないかもしれません」(長谷川校長)
『論語』による人間形成を促す、同校ならではの考え方です。
明治のグローバル精神は、今の時代にぴったり
「創立者の三島中洲は、明治維新が起きた時に、日本も外国も同じような国なのだと言いました。あの時代にグローバルな視点をもっていた。だから、二松學舍の原点に立ち返ることは、今の時代にぴったりと合う。ここならグローバル人材の育成ができると感じました」(長谷川校長)
高校教頭の島田達彦先生(英語)が考えるグローバルは、先の自問自答につながります。
「グローバルと聞くと英語の能力を伸ばすというイメージがありますが、それは手段の一つ。本当の意味でのグローバルとは、想定外のことが起こった時に対応できる力だと思います。たとえば、大きな川があるとします。その川を渡るためにどれだけのことが考えられるのか。対岸までの距離を計算する力、橋をかける材料や人材の集め方、何通りも問題解決能力をつけることが必要なのです」
早朝レッスンと放課後補習で、1期生の成績がアップ
「学びのイノベーション」の推進を補強しているのは、成果をあげている2つの学習です。これにより、現在高1の1期生75人は、中3時に受けた数学と英語の模擬テストで、中1時よりも、GMARCHクラスの人数が倍以上に増えました。
その学習とは、「モーニングレッスン」と「満点塾」です。モーニングレッスンでは、毎朝始業前の25分間で数学、英語、論語(各週2回ずつ)を勉強します。一方、満点塾は放課後補習です。たとえば数学では、モーニングレッスンで行った小テストで満点がとれるまで個別指導がなされます。少人数だからこそできる、きめ細かな指導です。
「モーニングレッスンは、教科担当者が、その時、生徒たちに必要だと感じた部分をすぐに課題にしています。満点塾は、熱意のある若い先生たちの提案で始まりました。先生も日々、自問自答をして生徒に向き合っているのです」(長谷川校長)
二松學舍から夏目漱石や犬養毅など、著名な文学者や政治家が輩出されている理由に納得です。この学校に今も流れる、伝統的な精神と進取の気風がなせるわざなのでしょう。
「グローバルコース」のグローバル人材育成プログラム(予定)
ステップ1
(1)英語集中研修(校内)
(2)イングリッシュキャンプ(国内)
・ イングリッシュキャンプ
・ ドラマによるコミュニケーションワークショップなど
(3)海外研修旅行事前研修
・ 実践コミュニケーション研修
・ 異文化理解・受容ワークショップ
・ 海外研修事前集中英語研修
ステップ2
(4)海外研修
・ Jeju英語研修(韓国済州国際学校)
・ オーストラリア語学研修
・ 中国語研修(台北教育大学)
・ セブ英語研修
・ 台湾研修旅行
ステップ3
(5)グローバル型 コミュニケーション術
(6)グローバル研修プログラム
(7)グローバル講演シリーズ
二松學舍大学附属柏中学校
[学校HP]http://nishogakusha-kashiwa.ed.jp/
〒277-0902 千葉県柏市大井2590
☎ 04-7191-3179・5242
最寄駅/通学に便利な無料スクールバスが4ルート。JR常磐線・東武野田線「柏駅」、東武野田線「新柏駅」、JR常磐線・成田線「我孫子駅」から15分。北総線の4駅(「印旛日本医大」「印西牧の原」「千葉ニュータウン中央」「小室」)からも乗降可。