生徒の興味を広げ、未来を考えるきっかけをつくる「大学訪問授業」
生徒の興味・関心を広げる専門家による“本物”の授業
「次世代の新しいリーダー、真の人格者の育成」を教育目標に、独自の学習カリキュラムや多彩な国際理解プログラムなど、さまざまな取り組みを行っている桐光学園。なかでも「大学訪問授業」は、桐光学園らしさを表す代表的な授業と言ってもいいでしょう。
「大学訪問授業」は、中学1年生~高校3年生の希望者を対象に、さまざまな分野の専門家が、大学の講義と同じように専門的な内容の講義を行ってくれる桐光学園独自の授業で、2009年からスタートしました。この授業を企画した中野浩教頭によると、「スタート当初は、大学について生徒たちに知ってもらうための入試を視野に入れた授業だった」と言います。
しかし、その後、回数を重ねていくうちに、「大学訪問授業」の意図が変わってきました。
「現在は、大学入試にとらわれず、さまざまな学問の奥深さや楽しさを生徒たちに知ってもらうための場として、進路選択を考える高校生に限らず、多くの中学生も参加しています。」
下の表は、2015年度の「大学訪問授業」のスケジュールをまとめたものです。これを見ると分かるように、各回の講師は、国公立から私立まで有名大学の教授が勢揃いしています。テーマを見れば、政治学から工学、科学、哲学、芸術と実にさまざま。こうした授業が年間で20回も実施されています。
けれども、中学生が大学同様の講義を聞いて、果たして理解できるのでしょうか?
「各講義は専門分野の最先端の話が多く、中学生には理解できないこともあるようですが、感想を聞いてみると、『内容は難しくて分からなかったけれど、先生が楽しそうに話しているのが印象的だった』『先生が自分の学問に誇りを持っているのが伝わってきた』などの声があがりました。でも、それだけでも十分だと思います。ともすると、勉強はつらいもの、苦しいものと思っている生徒たちに、『学ぶことは楽しいことなんだ』ということが伝わればいいのです。」(中野教頭)
こうした思いから、中野教頭は、毎年各分野で活躍されている専門家に講義を依頼し、生徒たちの知的好奇心を喚起する機会を作っています。
「大学訪問授業」の魅力
1 知の最先端をゆく現場を体験できる
2 国公立から私立まで有名大学が多数協力
3 各学問分野で活躍する教授から本物の授業を受けられる
4 生徒一人ひとりの志望校選択をサポート
日本語とは何だろう?書家が教える日本語の魅力

今年度第5回目に実施された書家の石川九楊先生の講義の様子。テーマは『日本語とは何だろう?』
取材に訪れた日は、今年度第5回目となる、書家・書道史家で京都精華大学教授の石川九楊先生の講義で、テーマは『日本語とは何だろう?』。
私たちは、日頃、特に深く考えることなく日本語を使っています。けれども、「日本語は世界にも稀な言語」と石川先生は話します。なぜなら、英語やフランス語はアルファベット、中国語は漢字というように、世界のほとんどの言語は1つの文字で成り立っているのに対し、日本語は漢字とひらがなとカタカナの3つの文字がなければ成り立たない言語だからです。では、なぜ日本語は3つの文字から成り立っているのでしょうか? 講義では、日本語の成り立ちとその背景についての説明があり、生徒たちは初めて聞く話にじっと耳を傾けていました。
「大学訪問授業」は、通常土曜日の4限目に実施されます。先生の講義は約1時間で、講義の後に生徒からの質問を受けます。石川先生の講義の後も、「古典の仮名づかいから現代仮名づかいに変わったのはなぜですか?」「すべての言語には何らかの法則があるのでしょうか?」「先生は、『若者言葉』についてどう思われますか?」など、生徒からたくさんの質問がありました。石川先生はそれらの質問に一つひとつ丁寧に答えてくださいました。
幅広い興味の中から“なりたい自分”を探す
「大学訪問授業」は、大学の先生の講義のため、専門的な用語も多く、難しい内容のものもあります。しかし、中野教頭は講師の先生たちに「無理に中高生向きの話をしなくていいので、普段大学で教えているように話してください」とお願いしているそうです。たとえ内容が分からなくても、その分野の専門家から“本物の授業”が受けられるということだけで、生徒には大きな刺激になるからです。また、専門用語や分からないことは、生徒にとってひっかかりとなり、「分からないから調べてみよう」と行動へとつながっていきます。
こうして世の中のたくさんのことに興味を持ち、その中で自分が進みたい道を見つけていきます。
生徒の声~「大学訪問授業」に参加して~
今年度は第1回の講義から毎回受講しています。「大学訪問授業」の面白いところは、毎回、自分の知らない世界の話が聞けること。今までの講義で一番印象に残っているのは、「地元のもので家を作る」という建築家の隈研吾先生のお話です。これからも毎回受講したいと思います。
2015年度 大学訪問授業
回 | 開催日 | 職業・大学 | 講師 | テーマ |
---|---|---|---|---|
第1回 | 4月18日(土) | 建築家・東京大学名誉教授 | 香山壽夫 | 「プロフェッショナル」とはどういうことか~建築家の仕事を通して考えてみる~ |
第2回 | 5月2日(土) | 哲学者・東京女子大学教授 | 黒崎政男 | 木が緑に見えるのは、木が緑だからだ、は本当か~哲学入門~ |
第3回 | 5月23日(土) | 哲学者・立命館大学大学院准教授 | 千葉雅也 | 教養を拡げる技術・自分のこだわりから始めて、歴史へ踏み込む |
第4回 | 5月30日(土) | 建築家・東京大学教授 | 隈研吾 | 場所の力 |
第5回 | 6月3日(水) | 書家・京都精華大学教授 | 石川九楊 | 日本語とは何だろう? |
第6回 | 6月6日(土) | 日本画家・東京藝術学舎学舎長 | 千住博 | 印象派は浮世絵のどこに感動したのか? |
第7回 | 6月10日(水) | 数学者・総合研究大学院大学教授 | 新井紀子 | ロボットが大学に入る時代を生き抜くには |
第8回 | 6月13日(土) | 政治学者・法政大学教授 | 杉田敦 | 政治は何のためにあるのか |
第9回 | 6月27日(土) | 社会学者・早稲田大学教授 | 長谷正人 | 映像文化の考古学 |
第10回 | 7月4日(土) | 評論家・早稲田大学教授 | 佐々木敦 | 未知との遭遇入門 |
第11回 | 7月11日(土) | 芸術家・フランス国立高等美術学校教授 | 川俣正 | 外国で作品を制作するということ |
第12回 | 7月18日(土) | 政治学者・東京大学教授 | 西崎文子 | 論争するアメリカ |
第13回 | 8月29日(土) | 作曲家・お茶の水女子大学名誉教授 | 近藤譲 | “音楽とは何か”を考える |
第14回 | 9月12日(土) | 工学者・東京大学名誉教授 | 月尾嘉男 | 先住民族の叡智 |
第15回 | 10月3日(土) | 劇作家・東京藝術大学特任教授 | 平田オリザ | わかりあえないことから |
第16回 | 10月10日(土) | 法学者・首都大学東京准教授 | 木村草太 | 憲法とは何か |
第17回 | 10月24日(土) | 国際政治学者・千葉大学教授 | 酒井啓子 | 動乱の中東情勢 |
第18回 | 10月31日(土) | 政治学者・明治学院大学教授 | 原武史 | 多摩丘陵の近現代 |
第19回 | 11月7日(土) | 社会学者・武蔵大学教授 | 千田有紀 | 批判的想像力を持って生きるには? |
第20回 | 11月14日(土) | 科学者・東京工業大学世界文明センターフェロー | 桜井進 | 驚異の数円周率πの世界~ひとはなぜπを計算しつづけるのか~ |
※上記はNettyLandかわら版の抜粋です。全容はこちらをご覧ください。
桐光学園中学校
[学校HP]http://www.toko.ed.jp
〒215-8555 神奈川県川崎市麻生区栗木3-12-1
☎ 044-987-0519
最寄駅/小田急多摩線「栗平駅」から徒歩12分。小田急多摩線「黒川駅」・京王相模原線「若葉台駅」からスクールバス。