東大4年連続合格の秘密は、「国際理解教育」が育む“愛され力"
中高一貫教育をスタートさせて10年目ながら、4年連続で東京大学合格者を送り出している同校。今年は東大を含め、難関国公立大学に16名が合格しました。なぜ、このような優秀な生徒が育つのでしょうか。
その秘密を探るため、同校が力を入れる「国際理解教育」をキーワードに、先生方にお話を伺いました。
「日本」をとおして、世界への眼差しを育てる
同校の「国際理解教育」とは、「日本の文化・伝統に触れる体験」「英語圏の文化・伝統に触れる体験」の2つを柱に、「世界を舞台に活躍できるワールドワイドな人材を育てる」取り組みです。その司令塔の役割を担う“国際教育委員長”の伊藤マーク先生はこう話します。
「グローバルな人材の育成に一番必要なことは、自分の国を知ることです。“自分のアイデンティティ”に自信をもたないと“真の国際人”にはなれません」
じつは以前、高校生が留学先で苦い経験をしたことがありました。生徒がその国でもう1年学びたいと留学先の学校に伝えたところ、「日本のことを聞かれたときに、もう少しアピールできるようになってからいらっしゃい」と言われてしまったのだそうです。その生徒の経験も、同校の指導には生かされています。
日本の“一流”に触れて、判断能力を養い、礼儀を知る
1つ目の柱「日本の文化・伝統に触れる体験」では、「茶道特別体験」「和楽器体験(箏)」「陶芸体験」や、「古典芸能鑑賞」「京都・奈良研修」「大相撲観戦」など、“一流のもの”に触れます。
「一流のものに触れて、いいものを判断する能力を得てほしい。そして日本のマナーをきちんと身につけてほしいのです」(伊藤先生)
「茶道特別体験」では、和室への入り方や座り方など、基本的なマナーから教わります。「古典芸能鑑賞」では歌舞伎を鑑賞。授業で古典を学んでいるため、言葉の美しさに興味をもつ生徒も多いそうです。「京都・奈良研修」で訪れる能楽堂では、能面をかぶる貴重な体験も。能の「見方」も学びます。
1.8倍の英語の授業時間で多様な「英語体験」を支える
2つ目の柱「英語圏の文化・伝統に触れる体験」では、「英語でクッキング」「英語でラッピング」や、「語学研修(希望者)」「修学旅行」(どちらもオーストラリア)などを実施。
「英語でクッキング」ではピザやクッキーを手作りし、「英語でラッピング」では水引きなどの伝統的な結び方を覚えます。普段は使わない用語や動作などを表す単語を駆使して、すべて英語で話します。
このような多様な「英語体験」を支えているのが、指導要領より1.8倍の時間を設けている英語の授業です。伊藤先生の“国際教育委員長”としての役割は「広い世界で考えたときの英語を、学校の英語教育にどう生かすか」だと教頭の小柏茂夫先生は言います。そのため、「読む、書く、聞く、話す」の4技能の習得を目指すカリキュラムに、プレゼンテーションやブックリーディングも盛り込んでいます。
週に一回行われるプレゼンテーションでは、中1でも数カ月で1~2分程度の自己紹介ができるようになり、中3になると15分以上話せるほど成長する生徒もいるとか。
「教科書に載っている以外の言葉を探すように指導しているので、それぞれに伝え方を考えてきます。英語は生きた道具なのだと意識してほしいですね」(伊藤先生)
一方のブックリーディングは年間5回。中1のはじめはB5サイズ半分程の文字量だったのが、学年末にはB4サイズの文章が読めるようになるそうです。また、自分の感想や意見を英語で発表するなど、発展させた授業も行っています。
「英語力」が「積極性」を生み、“愛される存在”へとつながる
培った「英語力」で、生徒たちはさまざまな成長ぶりを見せてくれます。「語学研修」では姉妹校との交流会で通訳を務め、「修学旅行」では添乗員や先生を介さずにフロントと直接話すなど、「英語力」が「積極性」を生んでいることがわかります。
そして、オープンキャンパスでも司会をし、プレゼンテーションを行い、キャンパスツアーで保護者の方の質問に的を射た回答をして驚かれたりと、生徒の成長は英語以外の部分にも表れるそうです。
その効果でしょう、自然と親子関係もよくなるそうで、行事の際には保護者の方の参加が多すぎて、人数制限をすることもあるとか。
「本校は特別なことをしているとは思っていません。しいて言えば職員が一丸となっていることでしょうか。校長は、職員が失敗をしても、『やったから間違いが出た、やらなければ何も起こらない。失敗したら、反省して直しましょう』と。そして、『生徒にも同じように接しましょう』と言ってくれます」と、小柏先生は言います。
校長の小林玉枝先生は、中学・高校合わせて約1800名の生徒がいるにもかかわらず、「あの生徒には、あの大学が合うのではないか?」と担任の先生と話したり、時には保護者の方の相談に直接のることもあるそうです。校長と先生・生徒・保護者との距離が近いことがわかります。
「さまざまな小学校からやってきた生徒を、どうやってうちの生徒にしていくのか、考えてきました。でも、みんな最終的には建学の精神(人間の尊さを教え、社会に期待される素地を創り、人生に望みと喜びを与える)を理解してくれます。どの子も個性があって、笑顔がよくて、挨拶もきちんとする。ですから、わが子のように何でもしてあげたいのです」(小林校長)
同校の教育理念の一つは、「社会で大切にされる人材育成」です。
「学力」を支えるカリキュラムや「人間力」を育てる取り組み、そしてまるで慈母のような小林校長をはじめ、先生方に“愛され”ながら育つ環境がある。“4年連続東大合格”の秘密は、こんなところに潜んでいるのかもしれません。
日本の文化・伝統に触れる体験
※主な取り組み
【校内】
●茶道特別体験
●百人一首大会
●和楽器体験(箏)
【校外】
●民芸作品づくり
オリエンテーション(1年次)
●陶芸体験(2年次)
●古典芸能鑑賞(2年次)
●京都・奈良研修(2年次)
●大相撲観戦(3年次)
英語圏の文化・伝統に触れる体験
※主な取り組み
【校内】
●英語特別講座
英語でクッキング
英語でラッピング
●外書講読
●英検受験対策講座
【校外】
●オーストラリア語学研修(希望者)
●オーストラリア修学旅行(3年次)
※上記はNettyLandかわら版の抜粋です。全容はこちらをご覧ください。
本庄東高等学校附属中学校
[学校HP]http://www.honjo-higashi.ed.jp/
〒367-0025 埼玉県本庄市西五十子大塚318
☎ 0495-27-6711
最寄駅/スクールバス:JR湘南新宿ライン(高崎線)「岡部駅」から8分、森林公園、妻沼、藤岡、伊勢崎、籠原からあり。