先人の歴史をしっかり受け止めて、自分の言葉で伝える社会科 立ち止まって、考えて、学びを深める
身近な人から聞く「戦争体験」話者の数は2000人以上
社会科の神山知徳先生が始めた「身近な人から戦争体験」を聞き取り、レポートにする授業は、今年で15年目を迎えます。2001年に高校でスタートしたのち、神山先生の異動をきっかけに中学での学習が始まりました。生徒たちが聞き取った「話者(わしゃ)」の数は2000人を超えるといいます。
「戦争の話はあっという間に過ぎ去っていきます。子どもたちの心にもう少し残るようにできないかと、身近な方への聞き取り調査を始めました。日頃は文章を書くことが苦手な男子生徒なども、祖父母の思いを受け止めると一生懸命、文章にします」と、神山先生。「レポートを書いて終わりではなく、グループで発表しあって、お互いのレポートを共有して考える時間をつくっています。そこからさらに疑問に思ったことは3学期に探求学習をして学びを深めていきます」(神山先生)。さらに、
「今は、ネットで何でも調べられる時代です。上っ面の情報ではなく、自分で聞いた情報を、しっかり受けとめて、きちんと記録に残していく。なかには戦争を思い出したくないご家族の方もいらっしゃると思います。話してくださった方それぞれに人生が違います。その方の人生を受け止めて、自分の言葉で表現してほしいと思います」(神山先生)
今年から石井弥生先生も指導に加わりました。「今の世の中は情報が多すぎて、入ってきてもすぐに抜けていってしまいます。身近な人から話を聞くことで、何か情報を受け取り、経験したときに、立ち止まってしっかり考えるという練習にもなったのではと思います」と、石井先生。
生徒にインタビュー!
今年の夏にレポートを書きあげたばかりの中2生の羽深蓮君と篠原利奈さんにもお話を伺いました。
身近な人から戦争体験を聞いてレポートを書くと聞いたとき、どう思いましたか?
羽深君「曽祖父が戦争に行っているというのもまったく知らなかったので、最初は図書館に行って調べようかと思いました」
篠原さん「姉が宿題で調べたので、祖父の戦争体験は知っていたのですが、祖母の体験は初めて聞きました。両方知ることができて良かったです。でも、最初聞いたときはどうやって書けばよいのか戸惑いました」
どのように調べていきましたか?かかった期間はどれくらい?
羽深君「曽祖父はもういないので、おばあちゃんに聞きました。ただ、怖い体験を子どもに伝えたくないという父親だったそうで、戦争のことは少ししか聞いていなかったそうです。聞いた話や関連することを図書館などで調べていきました。2~3週間はかかりました」
篠原さん「まずは自分のお父さんやお母さんに聞きました。お父さんのほうの祖父母が戦争を体験していると知りましたが、祖父は体験を話したがらないと聞いていたので、最初は話しづらかったです。2週間くらいかかりました」
調べていって驚いたことがあったら教えてください。
羽深君「本はたくさん読んでいましたが、実際に体験した人の話を聞いたことがなかったのでびっくりしました。戦場で人の死体が転がっていたりとか、爆弾が落ちてきて住民が巻き込まれたりとか、今では考えられないことが戦争では起きていて。整理しないと、わからないことだらけです」
篠原さん「実際に聞いてみると、今では考えられないようなつらい体験をしていたのでびっくりしました。一番びっくりしたのは、原爆で周りの人が死んじゃったり、家がなくなったりしたことです」
当時の生活を知ってどう思いましたか?
羽深君「今は普通に使っている物が昔はなかったので、便利に快適に生活できていることがありがたいです」
篠原さん「ご飯もなかったと聞いたので、感謝して食べないといけないと思いました」
話を聞いて、おじいさんやおばあさんとの関係に変化はありましたか?
羽深君「祖母自身も戦争に関してショックを受けているようなので、触れないようにしたいです」
篠原さん「最初は話してくれないかと思っていたけれど、話してくれたので関係が深まった気がします」
将来に向けて思うことがあったら教えてください。
羽深君「戦争のことは、ずっと覚えていたほうがいいと思います。今はあの戦争がなかったかのようにしているというか、今の子どもは戦争のことはわからないんじゃないかって思われているようで。戦争のことだけは覚えておこうと思います」
篠原さん「非核三原則は守っていきたいです。将来、子どもができたときに、ひいおばあちゃんやひいおじいちゃんたちはこんな体験をしたんだよって伝えていって、戦争は絶対に起きないようにしたいです」
「当たり前の教育」を子どもたちへ。昭和学院がずっと大切にしたいこと
「個々の教師が長年、地道にやってきた活動こそが、教育であり、学校の財産」だと、教務副部長の園家誠二先生は言います。
「昭和学院では朝読書から一日が始まります。心を落ち着かせ、想像力を育む時間でもあり、教員が生徒を見守り、観察する時間でもあります。ホームルームや授業では声に出して挨拶を交わし、しっかりとお辞儀をするところからすべての学習が始まります。学校で経験していること、学んでいることはすべてが意味のあること。これからの人生や社会に必ず直結していきます。聞き取り調査をはじめ、子どもたちに身につけさせたい能力や資質を個々の先生が地道に教育してきました。実直にこれまでやってきた教育をこれからも大切に、そして、当たり前にやっていきたいと思います」(園家先生)
聞き取った内容は〝財産〟
もともと、「自治体史」の仕事をしていたという神山先生には“聞き取り調査”のノウハウがありました。聞き取るポイントなどを生徒たちに伝えながら、「教科書ではない授業」を何かできないかと考えていたそうです。始めた15年前は、タイトルが「戦争と明治・大正・昭和の記憶」。従軍経験のあったおじいちゃんが大半でしたが、今では戦争当時は小学校にも入っていなかった年代の方がほとんど。この15年の間に、タイトルから、「明治」「大正」の文字が消えていきました。内容は、従軍経験・原爆体験・外地での暮らしなど、カテゴリー別に編集し、生徒一人ひとりのレポートから抜粋した文章を紹介。良いレポートは先生ご自身が入力して掲載しているそうです。
「作業時間はかかりますが、お一人おひとりの人生があります。聞き取った内容は財産です。普通の探求学習とは違って、切実感が増したレポートを書き上げる生徒たちの気持ちもしっかり受け止めて、貴重な記録として残します」(神山先生)
探求学習の強い味方!メディアセンター(図書館)
「生徒が集まりやすいように図書館は学校の真ん中に」という創立者の思いから、学校の中心部に設置されているメディアセンター(図書室)。
「リクエストをすると速やかに資料を準備してくれるので、探求学習のスピードがアップし、内容も深まります」と、多くの先生方から厚い信頼が寄せられています。
※上記はNettyLandかわら版の抜粋です。全容はこちらをご覧ください。
昭和学院中学校
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