私学探検隊

他者を思いやる心と未来を切り開く強い意志。 これからの社会を支える女子教育を。

華麗なパフォーマンスとユーモアあふれる司会に感動

今回お話を伺った松田由紀子新校長。

横浜富士見丘学園では、今年度より、新校長に松田由紀子先生が就任されました。松田校長は、神奈川県の県立校長として高校改革を担った後、母校実践女子学園からの招へいにより、2004年に実践女子学園中学校高等学校校長に就任。女性教育の良さを受け継ぎながらも、今の時代に必要とされるキャリア教育や国際教育にも力を入れ、新しい女子教育を創り出していきました。
そんな松田校長が、3年ぶりに復帰した教育現場、横浜富士見丘学園。まずは、松田校長に、横浜富士見丘学園の第一印象を聞いてみました。
「校内に続く満開の桜のトンネルをくぐり、この春、横浜富士見丘学園の校長として着任しました。緑豊かな木々や季節の花に包まれた校舎、部屋の隅々まで清掃が行き届いている教室、女子校ならではと思える、各所に見られる絵画などの芸術品、そして、何よりの明るく礼儀正しい生徒たちの振る舞いに、これからの学園生活が楽しみになりました」(松田校長)

華麗で迫力のあるパフォーマンスで盛り上がる新入生歓迎会。

また、松田校長をわくわくさせたもののひとつに、新入生歓迎会の話も挙がりました。チアリーディング部、ダンス部などのパフォーマンスは、まさに息をのむほどの素晴らしさだったと話します。加えて、後期生によるユーモアを交えた司会・進行にも大変感心をされたようです。当日、新入生の入場に手間取り、進行が若干遅れてしまったものの、あたふたすることもなく、タイムキーピングと連携を取りながら、臨機応変に進めて行くその堂々たる姿に、「後期生ならではの頼もしさを感じた」と松田校長。このようなロールモデルが身近にいるからこそ、下級生たちが成長できるのでしょう。

大切な伝統を受け継ぎながらより良い選択を

生徒が主体となって進行する生徒会役員選挙の立ち会い演説会。

上級生の頼もしさを伝えるエピソードとして、松田校長からもうひとつ挙がったのが、生徒会役員選挙の立ち会い演説会です。「すべてにおいて生徒が主体となって進行し、立候補者の演説もなかなか聞き応えのある内容だった」と、松田校長は話します。なかでも一番印象に残った演説が、次のような内容でした。
「昨年の文化祭に、80歳という卒業生がいらっしゃいました。その方が、卒業アルバムを持ってきてくださり、見せていただきました。その写真には、今、私たちと同じ制服を着ている卒業生の方が写っていました。私はこの学校の伝統の重さを、その写真から改めて感じました。今の学校生活が昔から引き継がれているもので、大切にすべきであるということと共に、立候補にあたって、より良い学校生活を目指して生徒のみなさんの意見を聞き、改革することも重要であると思っています」(立候補者の演説より抜粋)
松田校長は、この生徒の演説に大変共感しました。自らも中学・高校の6年間を女子校で過ごした松田校長。学生時代に身に付けた礼法や思いやりの精神は、その後の人生において大変役に立ったと話します。その一方で、これからは女性が社会で活躍する時代。女性として身に付けておきたい古き良き伝統を受け継ぎつつも、時代に合った生き方として主体性を持って自分の道を切り開いて欲しいと考えています。この生徒の演説は、「現状でのより良き選択の結果が、やがて、伝統として継承される」という松田校長の考えと重なり、「このような意見が期せずして生徒から語られたことに、大変心強く思いました」と松田校長の期待は膨らみます。

4年生の進路ガイダンスは自分の道を歩み始める出発点

“なりたい自分”を目指して、自学自習に励む進路ガイダンス。

横浜富士見丘学園が目指す女子教育は、「品位ある自立した女性」の育成です。それには、中学・高校の6年間という長い期間が必要だと考えています。この6年間を前期課程と後期課程の2つのステージに分けると、前期課程は基礎学力の徹底と、さまざまな体験や学びによって、自分の視野を広げるための時間です。この期間の学びは、生徒みんなで行いますが、やがて後期課程に入ると、一人ひとり目指す道が選択され、自主性が求められるようになります。よく、中高一貫校は中だるみが生じやすいと言われますが、横浜富士見丘学園では、前期課程から後期課程へと移行する4年生こそ、自分の道を歩み始める第一歩と考えています。
その代表的な行事として、4年生の春に、1泊2日の「進路ガイダンス」が行われます。今年度は、千葉県の富浦で実施され、松田校長も同行されました。
「進路ガイダンス」とは、3年後の進路に向けた勉強合宿のこと。滞在中は、15分刻みで、生徒一人ひとりが進路調査を受け、今後の進路について話し合います。面談する生徒以外は、大きなホールに集まって、おのおのが自学自習に取り組みます。私語は一切なし。その光景を初めて見た松田校長は、正直驚いたと話します。初めは、わざわざ学校の外に出て、ただひたすら勉強をするだけのこの合宿に疑問を感じていた松田校長でしたが、生徒の真剣に取り組む姿を見続けていくうちに、「孤独な大学受験を全員で実体験しているこの場が、自分の将来に向かう自主学習のスタートなのだ」と実感するようになりました。こうした取り組みができるのは、それまでの前期課程で、“なりたい自分”をしっかり見つけたからなのでしょう。
「朝から晩まで、ひたすら勉強をする生徒たちに、自分の将来に向かうための強い意志を感じました」(松田校長)

“なりたい自分”に近づくための努力の結果が進学実績に

その強い意志は、2013年卒業生の進学実績にも表れました。今年3月に卒業した6年生は、中高一貫校のメリットを反映するかのように、見事な進学実績を残したのです。まず、その大きな特徴として、推薦入試やAO入試の利用者が半減したことが挙げられます。簡単に合格が手に入る選択よりも、“なりたい自分”に近づくために、あえてハードルの高い選択をする。そのための努力の結果が、2013年卒業生の進学実績につながったのでしょう(下記参照)。
東京工業大学を筆頭に、早稲田大学、上智大学、東京理科大学、学習院大学、立教大学、明治大学などの上位校にも多数合格。183名の卒業生が延べ370大学の合格を手に入れました。特に、理工系70名、薬学・看護などの医療系30名、教育・栄養系42名が合格したことは、横浜富士見丘学園の建学の精神である「勤労を好み自主的で誠実な女性の育成」を踏まえた女子教育が承継されている表れでもあり、同校の中高一貫カリキュラムの成功を意味するのではないでしょうか。

大切なのは他者を思いやる心と自分の未来を切り開く力

しかし、松田校長は冷静に話します。
「今の世の中、学校の善し悪しは偏差値や進学実績で評価されがちです。確かに、上位大学への進学実績を残すことは素晴らしいことですが、それだけがその学校の良さではありません。赴任間もない私が感じる横浜富士見丘学園の良さは、生徒一人ひとりを思う教員の温かさや熱心さであったり、下級生を大事にする先輩の優しさであったりすると思います。女の子は、男の子と違って、人間関係がとても重要です。ここでこじれてしまうと、自分の将来を考えるどころではなくなり、勉強にも集中できません。当校では、そんな女の子ならではの特性を踏まえた、きめ細かな対応を心がけています。安心できる環境でこそ、自分の将来をじっくり考えることができ、それを形にしていくことができるのです」
今の女子教育に必要なのは、他者への敬意と感謝の心と、自分の将来を切り開く強い意志。横浜富士見丘学園では、この2つのバランスを大切にしています。

●2013年卒業生の主な進学実績

東京工業大学 ・・・ 1名
早稲田大学  ・・・ 2名
上智大学   ・・・ 4名
東京理科大学 ・・・ 3名
明治大学   ・・・ 3名
青山学院大学 ・・・ 4名
立教大学   ・・・ 3名
中央大学   ・・・ 8名
法政大学   ・・・ 1名
学習院大学  ・・・ 2名
日本女子大学 ・・・ 2名

※その他多数合格

横浜富士見丘学園中等教育学校
[学校HP]http://www.fujimigaoka.ed.jp/
〒241-8502 神奈川県横浜市旭区中沢1-24-1
☎ 045-367-4380
最寄駅/相鉄本線「二俣川駅」徒歩12分。