私学探検隊

3年次の模擬裁判と修学旅行でその後の学校生活における大切な基盤を築いていく

市川中学では3年次に模擬裁判と修学旅行を実施。どちらも単なる行事ではなく、中学校での学習の総まとめ的な意味合いがあり、事前に研修を行うなど、ほかに類を見ないほど徹底した準備を行います。そこには、どのような意図があるのでしょうか。

本物の地方裁判所で模擬裁判を実施

千葉県の地方裁判所で、実際のローブを着て行われる模擬裁判の様子。裁判官や裁判員だけでなく、傍聴席からも質問ができ、クラスみんなで審議

柿原優衣さん(写真左)と矢吹凪彩さん(写真右)。後ろにあるのは模擬裁判新聞

中高一貫校は高校受験がない分、メリハリに欠けるのではという意見をよく耳にします。各校がさまざまな取り組みを行っていますが、市川中学校では大きなイベントとして模擬裁判と修学旅行を設定。今回はこれらの行事についてお話を伺いました。
模擬裁判は各クラスで裁判官や裁判員の役を決め、与えられたシナリオに沿って裁判を展開するというもの。シナリオは全クラス同一のものですが、判決は各クラスによって異なります。そしてこの模擬裁判は千葉県の地方裁判所の法廷を借りて実施。裁判官役の生徒は法服も着用します。開催は12月ですが、その準備は4月からスタート。各クラスから「模擬裁判委員」を選出し、運営の部分から生徒主体で考えていくのです。委員長の柿原優衣さんは「まず昨年の模擬裁判をDVDで見返し、きちんと行うために何が必要なのかを委員会で考えました」と語ってくれました。そこでまず取り組んだのが、生徒たちがグループに分かれ、模擬裁判について研究した内容を発表する「模擬裁判新聞」の作成です。また委員会も頻繁に集まり、議論を重ねます。たとえばあるときの委員会では、夏休みに各自が裁判所見学へ行く際の留意点に関して活発な議論が展開されました。自主的に取り組むことで、生徒たちも成長しているようです。

傍聴時のレポート内容も委員会で作成


自主的に考える経験を高校生活につなげていく

指導担当の本川梨英先生にもお話を伺いました。「中学校では入学からずっと教わることが中心になりますが、そうやって学んできたことを発信できるようになってほしいという思いがあり、その機会となっているのが模擬裁判です。各生徒に自分だったらどんな判決を出すのかということを、主体的に考えてもらいたいですね」とのことでした。模擬裁判委員会副委員長の矢吹凪彩さんも「今までは意識することが少なかった裁判員制度に興味を持ち、制度の是非についても考えるようになった」そうで、生徒たちが自主的に考えるいい機会となっていることがうかがえます。
ちなみにこの模擬裁判を取り入れて、今年で3年目になります。「今年は、裁判員制度について生徒に考えてもらおうという、社会科としての狙いもあるのですが、もともとはキャリア教育の一環としてスタートしました」と本川先生。模擬裁判をきっかけに法学部を志望する生徒が増えていくかもしれません。また高校生になれば自分の意見を発信する場も増えるとのこと。模擬裁判の経験が、そうした自主的に考えて発信する力を育成することにつながっています。

語学や国際感覚など多くを学ぶ修学旅行

もう1つの大きな行事である修学旅行。行き先は今年度からシンガポールとなりました。学年主任の鈴木省二先生によると「市川中学では1年次に地域を知るために市川など千葉県内を、2年次には日本を知るために京都・奈良、鎌倉を、研修旅行で訪れています。そこで3年次は世界を知るために、シンガポールへの修学旅行を設定しました。シンガポールは英語圏であると同時にアジア屈指の国際都市であり、さまざまな国の人が暮らしています。これからの国際社会を生きる生徒たちに多くのヒントを与える国だと思い、旅行先に選びました」とのこと。「英語に対する意欲を高める」「グローバルな視野を身につける」「異文化を体験する」が大きな目的となるこの修学旅行。4泊5日の日程で、市内観光だけでなく工場見学や企業訪問、さらにシンガポール大学の日本語研究科学生が案内するキャンパスツアーなど内容も盛りだくさんです。
そして特徴的なのが、事前に行う国内英語研修です。1泊2日の日程で20名以上のネイティブスピーカーの講師と共に、英語力を磨いていくのです。最初はぎこちなくても2日目になると積極的に話せるようになります。生徒からは「修学旅行で活かせる英語を学ぶことができた」「英語の先生の話が面白くて笑ってしまった」といった意見が聞かれ、とても楽しそう。「早く修学旅行で自分の英語力を試してみたい」といった意見もあり、修学旅行をより有意義な経験にしてくれるようです。さらに希望者は、校内でシンガポールの歴史についての事前学習会に参加することも可能。「シンガポールの知らなかった側面や日本との関わり等が理解できた。学んだことを活かしたい」と語るのは、この講習を受けている建内亮太くん。また勝間冴綾さんは「多民族国家というのはどんな文化なのか等、情報として知ったことを肌で理解したい」そうです。
国際感覚や語学力の重要性を理解する場となる修学旅行。そしてそこから、各々の生徒が自分のめざす道や、やるべきことを見つけていくのではないでしょうか。

シンガポール 修学旅行への道

修学旅行に向けてさまざまな準備を行う市川中学校。その柱となるのが国内英語研修と、シンガポールの歴史を英語で学ぶ学習会です。

希望者のみ

シンガポールの歴史を英語で学ぶ

身近なようでも授業で触れることの少ないシンガポールの歴史を、英語のテキストを使用して学んでいきます。

日本とも関係の深い国であることを理解

希望者のみですが定員以上の応募が

学んだことはみんなの前で発表


全員参加

国内英語研修

都内で1泊2日の日程で実施。
研修中はNo Japaneseを徹底。
日常英会話を学び、コミュニケーション力を高めます。

少人数制に分かれて日常会話などを学ぶ

市川中学校
[学校HP]http://www.ichigaku.ac.jp/
〒272-0816 千葉県市川市本北方2-38-1
☎ 047-339-2681
最寄駅/京成本線「鬼越駅」徒歩20分。JR総武線・都営新宿線「本八幡駅」、JR武蔵野線「市川大野駅」、JR総武線「市川駅」、JRなど「西船橋駅」〔直通バス(登下校時のみ)〕からバス。