私学探検隊

論理的思考力と書く力を大きく伸ばす東農大一中の社会

授業と実験・体験からバランスよく学び、問題発見・解決能力を育てる「実学教育」を教育方針として掲げている東農大一中。実学というと理科での実験をまず連想しますが、他の教科でもこの方針は一貫しています。今回は、社会科の常久先生に、社会科における実学教育についてお話を伺いしました。

考察する力を養う授業とテスト

中1の地理の授業。具体例を交えて楽しく授業が展開するので生徒たちからも笑顔がこぼれます

最初に、下の中学1年生の中間テストの問題を見てみてください。一筋縄ではいかない問題に、思わず頭を抱えてしまうかもしれません。この問題に、同校が大切にしている教育観が表れています。
「社会科は知識を詰め込む暗記科目だと思われてしまいがちです。しかし、大学進学後や社会に出てからは、知識を身に付けるだけでなく、それらを活用して、物事を批判的・分析的に捉えて自分なりに考え、論理的な文章を書くことや相手に伝えることが重要です。本校の社会科では、そうしたことを見据え、『考察する態度』を6年間で身につけることを大切にしています。(常久先生)」このような考えから、同校では生徒が自分で考え、表現することを重視した授業を展開しています。

書く力・考える力をつける東農大一中の定期テストに挑戦してみよう!
〈中学1年生2学期中間テストより〉
2002年、日本はシンガポールとの間で自由貿易協定を締結した。日本がシンガポールを自由貿易協定締結の最初の国として選んだ背景には、シンガポールの産業構造や日本とシンガポールの貿易関係が他の多くのアジア諸国とは異なるという事情がある。どのような点で異なっているため自由貿易が結ばれたと思われるか。その理由を説明しなさい。
解答のヒント
(1)シンガポールの国土、人口、そこから考えられる産業(農林水産業、鉱工業)や輸出品について考えてみよう。
(2)日本の産業・輸出品にはどのような特徴があるか考えてみよう。
(3)他の多くのアジア諸国とあるが、例えばアメリカと日本の関係について考えてみよう。日本とアメリカでは、自由貿易協定の締結は難航しています。
⇒≪模範解答・解説は東農大一中のホームページで!≫

文章を書くことで、考える力・書く力を身に付ける

授業で作った「環境地図」を使ってプレゼンテーション

同校社会科の特徴の一つが、「文章を書く機会が多い」ことです。授業の内容を自分の言葉で文章に書き起こした「まとめノート」を作成したり、調べたことや感じたことなどをレポートにまとめたりすることで、相手に伝わる文章の書き方を学び、自分の考えを記述するテストにも解答できる書く力が身に付きます。
「入学直後は空欄が目立つのですが、日頃の訓練によって徐々に、自分なりに考え、文章を書けるようになります。それが自信になり、学年を追うごとに文章を書く力がステップアップしていきます。(常久先生)」

実物に触れ、身近なかかわりから他国を理解する

グローバル化が叫ばれる昨今、他国の人々とコミュニケーションを取るためには、多角的・客観的に物事を捉え、相手の文化や生活などの背景を理解することが必要だと常久先生は言います。社会科の授業では、他国の文化や生活を理解するために、自分たちの生活とのかかわりを通して身近に感じることができる工夫がされています。例えば、東南アジアを扱う際には「スーパーボールづくり」を行ったそうです。スーパーボールの原料である天然ゴムは東南アジアから日本に輸入され、車のタイヤなどに使われています。生徒たちはスーパーボールを通してそれに気づき、自分たちの暮らしが他国との関係において成り立っていることを実感として学びます。こういったところにも同校の実学教育の考え方が感じ取れます。

自分で考え、答えを出すことを大切に

「すぐに教師が答えを教えてしまう授業では生徒たちの考える力は育ちませんし、何より生徒たちにとって楽しい授業にはなりません。そうではなく、教師は『なぜ?』と問いかけ、生徒たちが自分で考え、悩んで答えを出すということを大切にしたいと考えています。」常久先生は最後にこう締めくくりました。このような授業で6年間学ぶ同校の生徒たちは、大学入試の先にあるその後の人生を豊かにするための力を着実に養っているはずです。

東京農業大学第一高等学校中等部
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