理科だけじゃない実学教育。「文学散歩」で文豪に学ぶ
授業と実験・体験からバランスよく学び、問題発見・解決能力を育てる「実学教育」を教育方針として掲げる東農大一中。実学というと理科の実験をまず連想しますが、他の教科でもこの方針は一貫しています。今回は、国語科の武田先生に、国語における実学教育と言える「文学散歩」についてお話を伺いました。
◇散歩しながら文学に触れる一日
―― 文学散歩とはどのような取り組みですか。
武田先生 文学作品に登場する場所や、作家ゆかりの地、文学に関する資料館などを一日かけて歩いて訪ねます。生徒たちに文学をもっと身近に感じてもらおうという趣旨で、毎年4月と11月に行き先を変えて開催しています。全学年対象の希望制行事なので、中1から高3まで様々な生徒が参加しています。
――散歩しながらどのようなことに取り組むのですか。
武田先生 小説の舞台になった場所で、教員がその場面を朗読したり、劇をやったりして、生徒たちがより興味を持てるように工夫しています。散歩なので、堅苦しい感じではなく、小説に出てくる地元のお菓子を食べたりもします。そのようにして、文学を通じてその地域に根付いた文化を理解するというねらいもあります。
――これまでどのようなところを訪ねたのですか。
武田先生 基本のコースが6種類あり、これを3年ごとに順番に歩いています(表1参照)。この春には横浜へ行き、「鞍馬天狗」で親しまれた大仏次郎を中心に、港の見える丘公園にある彼の記念館や、すぐ近くにある県立神奈川近代文学館などを訪ねて歩きました。
◇作家の思いに触れ、自分の生き方を考えるきっかけにしてほしい
―― 文学散歩は生徒にとってどのような学びがあるとお考えですか。
武田先生 実際に足を運んでみることが、想像以上に生徒の学びになっています。もともとそこまで興味のなかった生徒でも、文学散歩への参加をきっかけに文学に興味を持ち、読書をするようになっていきます。また、文字だけではわからなかった作中の登場人物の感情が、作品に描かれた場所で朗読を聞くことによって理解できたという生徒もいます。授業で小説を読むだけではわからない文学の奥深さ、楽しさに気づいてほしいと思っています。
――他にはどのような学びがあるのでしょうか。
武田先生 単純に文学を読解するだけでなく、その裏にある当時の時代背景や、その時代に生きた作者が作品にこめた思いに生徒たちが気づくことも期待しています。作家がその時代に何を考えたのか、どのようなことに悩んだのかに思いをめぐらせることによって、自分の生き方を考えるきっかけにしてほしいですね。そのようにして文系・理系を問わず誰にでも必要な感性を磨いてもらいたいと思っています。
東京農業大学第一高等学校中等部
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