私学探検隊

千葉県・市川エリアの私立中高一貫校座談会

課外活動のキーワードは「主体性」。アクティブな学びがある、それが私学の魅力


子どもたちの主体性を引き出すために、さまざまな工夫を凝らす学校が増えています。その中でも千葉県・市川エリアで注目を集める、市川学園、昭和学院、日出学園の三校にお集まりいただき、部活動や委員会活動など「課外活動」をテーマに自由にお話しいただきました。


昭和学院 重松 雅治先生  日出学園 石川 茂先生  市川学園 高橋 暁先生

社会的な経験値を上げる奉仕系の課外活動が人気!


編集部 さっそくですが、今、貴校で最もホットな課外活動を教えてください。
昭和学院 今年度、発足した「イベント企画部」です。具体的な活動はこれからですが、学校説明会の立案や、当日のマネジメントなどを行う予定です。
 どの学校でも、生徒さんがなんらかの形で学校説明会にかかわっていると思います。本校でも、生徒に手伝ってもらっています。 その中で、こんなことをしてみたい、という要望が生徒のほうから出てきたので、生徒が創る学校説明会を見てみたいと思いました。それを実現するには有志の集まりよりも、部活動のような、一つの組織として活動したほうがやりやすいだろうと考えて、「イベント企画部」を立ち上げました。
 生徒に対する広報が十分ではなかったにもかかわらず、中高合わせて21名の生徒が入部してくれました。中高の割合はちょうど半々で、バランスのいい組織になりそうです。ゆくゆくは学校説明会だけでなく、オープンスクールなども企画から丸ごと委ねていきたいと考えています。
編集部 他の活動と掛け持ちはできますか。
昭和学院 できます。もちろんバスケットボール部やハンドボール部のような強豪クラブとの兼部は難しいですが、部員の約半分はなんらかの部活で活動しています。残りの半分はやりたいことが見つかっていなかった生徒です。おもしろそうだなとか、活動量がちょうどよさそう、などの理由から入ってきてくれました。魅力のあるイベントにする方法はいろいろあると思います。きっと生徒が想像している以上に幅広い経験ができると思うので、生徒会とも協力し合いながら、昭和学院がおもしろい学校であることを伝えてくれる集団に育ってくれればいいなと思っています。
編集部 自分たちで企画したものが形になったら自信がつくでしょうね。
昭和学院 そうですよね。運動部が大会に出場する時は公欠扱いになります。同様に、「イベント企画部」の部員が、学校説明会のために授業を抜けなければならない時は公欠扱いになります。部活動にしたのは、そういう既存の仕組みを活用していこうという狙いもありました。
市川学園 学校説明会のために、生徒が授業を抜けることができるのですか。
昭和学院 事前に確認して、生徒の意思で判断してもらっています。
日出学園 「探究活動」の一環と考えれば、むしろ1つのチャンスじゃないですか。学校説明会で保護者の方とかかわることは、探究活動の最後のステップ、実践編ですよ。答えのないものを求めて行動することは、悪いことではないと思います。
昭和学院 なるほど。私は今年、探究科の主任を拝命したのですが、視野が広がりました。
市川学園 そういう考え方もあるのですね。
日出学園 先ほど、部員数が21名とおっしゃっていましたが、本校の「FLYERS」というボランティアグループも初年度はそんな感じでした。20名はいませんでした…。10数名から始めて今年で9年目になりますが、現在の部員数は中高合わせて395名です。そのうち約150名が中学生です。
昭和学院 すごいですね。
日出学園 「ボランティア部」のようなものを作りたくて、「ファミリークラブ」と名づけたら、生徒たちに「ダサい」と言われました。生徒に任せると「FLYERS」という名前がついて、気軽に参加できる活動として根付いていきました。学校説明会のお手伝いなど、学内の活動にとどまらず、企業様との商品開発や撮影のお手伝い、取材対応など、学外の活動にも積極的に参加しています。最近では学内の先生から「FLYERSに手伝ってもらいたいんだけど…」と依頼されることが増えてきました。外部の方々にも認知していただけるようになって、コロナ禍でも年間50件ほど稼働しています。
編集部 継続は力なりですね。
日出学園 昨年度は読売新聞さんより依頼をいただき、2名の生徒がプレスリリース作成のお手伝いを行いました。主な仕事はディズニーランドのイベント取材です。報道陣と一緒に生徒が取材をしたことが、後日、新聞に載っていました。取材日が月曜日だったので、校長に判断を委ねると「公欠」で許可が下りました。
編集部 全員一緒に活動することもあるのですか。
日出学園 それはありません。約400名いますが、多い時で50名程度。少ない時で1名です。
編集部 どのような仕組みで行っているのですか。
日出学園 私が窓口となって、新たな依頼が入るたびにSNSで生徒に伝達します。そうすると興味のある子がClassi(アプリケーションソフト)で「見ました」を押します。それが「参加」の合図です。「読んだ」「読んでいない」ではなく、お知らせを読んで参加したい生徒が「見ました」を押します。生徒は「情報リテラシー」を学べます。私たち教員にとっても楽な仕組みです。
市川学園 部活動ではないんですよね。
日出学園 「課外活動」です。本校は部活動の兼部を認めていないので、生徒には「部活動とFLYERSで学んだことを相互につないで役立てなさい」と言っています。CMやドラマの撮影現場などに行くと、撮影スタッフの他に、大手広告代理店の方もいらっしゃいます。休憩時間に「働くとはどういうことですか」といった、素朴な質問を中高生が投げかければ、真摯に応えていただけます。ボランティアではあるのですが、キャリア教育にもつながる活動であると自負しています。
編集部 アンテナの感度が高い生徒さんは、活動を通していろいろなことに気づきそうですね。
日出学園 学園祭で忙しくしている私を見兼ねて、生徒発信で「広報係」が生まれました。当日、時間のある生徒が、各クラスから1、2名出て、私に代わって受験生や保護者の案内をしてくれるそうです。こうした活動が増えていくといいなと思っています。

活動の成果をシェアする1日。その運営を行う委員会が発足


編集部 市川学園はいかがですか。
市川学園 本校は「アカデミック委員会」になります。毎年3月中旬に行う「Ichikawa Academic Day」というイベントの運営が主な仕事です。委員会としての活動はまだ2、3年ですが、ようやく委員会室を与えてもらい、今年度はパソコンの購入もかないました。
 コロナ前までは、文化祭で文化的な活動を発表する「口述研究発表会」というプログラムがあり、化学部、物理部などが研究発表を行っていました。それをみんなで聴くのですが、聴く側にもお店の準備などがあり、形式的になりがちでした。そのうち文化祭から外して別の企画にしようという動きが出て、当時の校長と「口述部」という発表を仕切っていた部署の生徒たちが話し合いました。そして翌年、さまざまなデータを取り、分析した結果、全面的に見直すことになりました。
 そこで課外活動の成果を発表したい生徒が、好きなように発表する日を1日設けました。それが「Ichikawa Academic Day」です。それに伴い、「アカデミック委員会」を発足しました。ところが当初は予算も活動場所もなかったため、校舎の隅で、個人のパソコンを持ち込んで、イベントを盛り上げるための動画を作りました。コロナ禍では、苦心しながら活動している生徒の様子を伝えるために、YouTube配信を行いました。そうした活動の成果により委員会として認められると、コロナも落ち着いてきて、活動に本腰を入れ始めたところです。
昭和学院 3月中旬という時期はいいですね。
市川学園 学年末試験直後の土曜日なので教員は大変ですよ。ただ、生徒にとってはこの時期がよかったようで、「発表したい」と手を挙げる生徒が増えました。
昭和学院 中学生も発表するのですか。
市川学園 中1生もいます。何百人もの人を前にして、スライドを使って発表している姿に驚きました。自分が好きなことをしゃべるので熱量はなかなかのものでした。
昭和学院 全員聴くのですか。
市川学園 学年ごとに参加時間が決まっています。中1はこの時間帯に登校して聴いてください、という感じです。当日はホールで「口頭発表会」、体育館でポスター発表を行い、3部構成で発表者の入れ替えをします。昨年はコロナの関係で密にならないよう活動エリアを指定していましたが、本来、何を聴くかは自由です。事前にプログラムを配布しているので、聴く側の生徒たちはホールと体育館を行き来しながら、自分が興味をひかれた発表を聴きます。
昭和学院 本校にも「探究フェスティバル」という日があって、ものすごく参考になりました。発表する内容はなんでもいいのですか。
市川学園 はい。テーマは自由です。個人的な活動でもかまいません。例えば「同性愛について」とか。「中学2年生とCPUを作ってみた」とか。「ボーカロイド 音楽理論」とか。ニッチなテーマもたくさんあります。授業の中で教員の話に興味をもった生徒たちが、何人かでそれを深掘りして発表する、というケースもあります。科学の探究活動に取り組んでいるSSH(スーパーサイエンススクール)の高2生が成果を発表する場も「Ichikawa Academic Day」になります。我々が評価するので授業の一環です。高1と中3が聴きに来るので、励みになっていると思います。

各校のルールの中で、工夫を凝らした活動にも注目!


編集部 みなさんが紹介してくださった課外活動は、生徒さんの主体性を引き出すことを目的に活動しているように感じました。そこは意識されているところでしょうか。
日出学園 そこは意識しているところです。コロナが落ち着いて、探究という授業が始まって、チャットGPTが世間を騒がせている今、大人も一緒に学んでいかなければいけない世の中になっていますよね。教育現場も変わらなければいけない中で、それぞれの学校が試行錯誤しながら一歩を踏み出しているという捉え方でいいと思います。
 主体性ということで言うと、本校ではラクロスの男子生徒が頑張っています。数年後の部活動のあり方を考え、既存の部活動に影響を及ぼさないことを前提に、規約からすべて生徒が作ってプレゼンし、未来の部活動(準部活動)として学園で認められました。学校の看板を背負って大会に参加できます。グラウンドは社会人のチームに貸していたので、時間外(18時15分から19時半)ですがラクロスの練習場所は確保されています。地域の方も参加できる形で活動しています。
昭和学院 設備費はかからないのですか。
日出学園 学園にどれだけメリットがあるかが判断材料になります。今回は「地域活性化」が認められたので0円で貸しています。0円にするために考えさせるのが「FLYERS」なんです。
昭和学院 運動部の新設は難しいですよね。既存の部活動に影響を及ぼさない、という前提は本校も同じです。そんな中で奇跡的に自転車同好会ができました。自転車競技に強い生徒がいて、興味のある生徒が何人か加わってできました。練習を見に行ったら、教室のホワイトボードに風景を映して、スピンバイクをものすごい勢いでこいでいるんです。それでインターハイに行ったんですよ。部じゃないのにインターハイって…すごくないですか。今年度も、初心者の生徒が関東大会出場を決めました。
 そういうことになったのは、若い先生が生徒の申し出を受けて「顧問をやってやるよ」と言ってくれたからです。女子校時代の厳しめの校風が少しずつ和らいできて、生徒にチャレンジさせたいね、という雰囲気ができてきているのではないかと思います。そういう輪がもっと広がっていくと、もっと楽しくなっていくのではないかと思います。クライミング同好会は船橋に活動場所を借りて活動しているので、学内にクライミングができる場所を作ってくれたらおもしろいのにな、と思っています。
市川学園 生徒は多様化していますよね。本校では個人で外部の活動に参加する生徒が増えています。彼らの取り組みを担任は把握できますが、学校内で共有する場がなければ、誰も知らないまま、卒業していくことになります。それは大きな損失です。その生徒が取り組んでいたものが、学校や後輩にとってものすごい財産になる可能性があるわけですから。  アカデミック委員には、そういう生徒の情報を集約する役割も担ってほしいと思っています。みんなで成果をシェアすれば、こういうこともできるんだ、という風土になっていくと思います。

※上記はNettyLandかわら版の抜粋です。全容はこちらをご覧ください。


日出学園中学校・高等学校
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〒272-0824 千葉県市川市菅野3-23-1 TEL:047-324-0071
アクセス  京成本線「菅野駅」徒歩5分。JR総武線(快速)「市川駅」徒歩15分または京成バス5分「日出学園」。JR常磐線「松戸駅」から京成バス20分「菅野六丁目」徒歩5分
昭和9年の創設以来、「誠(なおく)、明(あかるく)、和(むつまじく)」という校訓の下、夢というダイナミックな要素を取り入れて個性を大切にした少人数一貫教育を貫いている。教員と生徒の距離が近く、アットホームな校風を築く。

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昭和学院中学校・高等学校
https://www.showa-gkn.ed.jp/js/
〒272-0823 千葉県市川市東菅野2-17-1 TEL:047-323-4171
アクセス JR総武線・都営新宿線「本八幡駅」、京成本線「京成八幡駅」徒歩15分(バス約5分)
「明敏謙譲」を建学の精神に掲げ、知・徳・体の全人教育を実践。創立80周年を迎えた2020年度から「令和の昭和Project」と名付けた新コース制を導入。将来を担うにふさわしい人材を育てるため、さまざまな改革に着手している。

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市川中学校・高等学校
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〒272-0816 千葉県市川市本北方2-38-1 TEL:047-339-2681
アクセス 「本八幡駅」「西船橋駅」「市川大野駅」からバス
「独自無双の人間観」「よく見れば精神」「第三教育」の3本の柱が不変の教育理念。第3期目のSSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)に指定され、全学年で実験を軸とした先進的な学習活動を行っている。

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