「世界」「英語」「専門」をキーワードに、世界で活躍する真のリーダー育成に取り組む春日部共栄中学校。体験重視の教育が魅力の同校ですが、大学入試改革に向け、様々な取り組みを行ってきました。
「本校では、大学入試改革への対応と自主学習の選択肢のひとつとしてリクルート社の『スタディサプリ』を全学年で採用しています。授業の復習や苦手科目の克服から難関国公立大対策まで約4000講座を受講できるシステムがあり、高い学習効果が期待できます。また、自主学習補助の一環として通常授業のない土曜日に、プロのチューターを招いて自習教室を展開しています。生徒の皆さんは3時間の学習時間を数学、英語、その他の教科に割り当て、各自得意教科を伸ばしたり、自身の弱点となっているところをチューターに質問したりしながら、自学を進めています。さらに、日本漢字能力検定協会の実施する『文章読解・作成能力検定』に学校全体で取り組んでいます。受検率80％以上と多くの生徒がチャレンジし、論理的な思考力や表現力を身につけます」と中学教頭の浅古聡史先生は説明します。

三学年がそろった中学新コース
開校から20年を迎えた2022年度より、「プログレッシブ政経コース」と「IT医学サイエンスコース」の2つの新コースを設立しています。プログレッシブ政経コースでは、将来のビジネスシーンを見据えて実際の証券会社や銀行などの企業と協力し、経済学の基本を学びます。そのほかにもビブリオバトル・模擬国連・ディベート・模擬トレード（貿易）などの体験型の学習を通し、国際政治・社会問題について深く考え、自分の意見を伝えることを重視した多様なプログラムを展開します。
IT医学サイエンスコースでは、プログラミング教育に重点を置いた高度なスキルの獲得、また研究機関・大学・企業との連携をとった、科学分野の様々な実験の実践・検討・立案のサイクルの経験を積むプログラムを展開します。さらに医学系のトピックスとして、中学ではメディカル基礎講習、高校ではメディカル論文講習を行い、医療系への進学を見据え学んでいきます。両コースとも、実学的な知識や教養を幅広く身に着け、世界のリーダーにふさわしい「生きる力」と「発信する力」を涵養します。
従来から様々な活動を取り入れていた同校では、これらの新しい取り組みと既存の教育プログラムを有機的につなげていくことで、理念として掲げる「世界で活躍する真のリーダー育成」に挑戦しています。

中学3年生のK-SEP（表1参照）では、日本に留学している留学生たちを招き、他国や日本の文化について紹介をしながら、5日間英語漬けの生活を送ります。

世界のリーダーを育てる
「共栄グローバルリーダーズプログラム」
開校以来、様々な取り組みを通してグローバル人材の育成を行ってきた同校の取り組みのキーワードは、「本物に触れる体験（インプット）」と「英語による表現活動（アウトプット）」です。その取り組みは、教室での座学だけに留まらず、あらゆる活動の中で展開されています。
「まだまだ経験の乏しい中学生には『本物』に触れる経験の積み重ねが必要です。したがって、本校では、文化の異なる様々な人々とあらゆる形で実際に触れ合う機会を大切にしています」「また、体験を積むことと同時に、そこで得たものを何かしらの形で表現（アウトプット）することで、知識が知恵となり定着していくのです」（浅古先生）
このようなコンセプトに基づき、国内外で行うプログラムを中学1年生から高校2年生の5年間、実施しています。（表1参照）
「英語力を身につけることは、グローバル人材としての必須要件です。しかし、本校では英語は自分自身の考えや立場を伝えるためのツールとして捉えています。大事なのは、そこで語るに足るコンテンツを持つことなのです」浅古先生は、このようにプログラムへの想いを語ってくださいました。単純に英語のスキル向上を目指すのではなく、本物に触れる体験を積み重ねていくことで、言語に留まらず、価値観や考え方の違う人々と価値を創造していく力を養うこと、それこそが春日部共栄の目指すグローバル人材育成です。

表1 共栄グローバルリーダーズプログラム 主な取り組み

グローバルに
活躍するための力を養う
「朝学習」と放課後の有効活用
生徒が登校してすぐ、8：15～8：40に表2のような流れで行われるのが「朝学習」です。ここでの特徴的な取り組みが「リスニング」と「ワールドビュー」です。リスニングの時間では、Chrome bookを用いて、自分のレベルにあった学習教材を使ってリスニングやディクテーションを行います。タイピングの練習にもなる、効率的な時間です。「ワールドビュー」では、各クラスの生徒全員が交替で新聞や雑誌から興味を持った記事を抜き出し、それに対する要約・感想・提案をレポートにまとめ、それを全員で読みます。新聞を毎日読む習慣を身につけるだけでなく、クラスメイトが取り上げた記事を読むことを通じて、生徒たちの知的世界を広げ、相互理解を促します。さらに、自分の考えをまとめ、意見を形成する力を養うことにも役立っています。
放課後には、英語と数学を中心に、17時からの約45分間、各教科の先生が指名をして補習とハイレベルの講習を行ったりもします。生徒たちは学力と同時に短い時間を有効利用して、集中力を身につけます。

生徒が作った「ワールドビュー」。作品は壁に掲示されるとともに、全生徒に配布されます。

講演会の様子。講師のお話を聞きながら熱心にメモを取ります。

年間複数回開催、
本物に触れる「講演会」
「生徒それぞれの関心に応える最先端キャリア教育を」という想いから、様々な分野の最先端で活躍する人物を講師に招き、「本物」を体験する場が、「講演会」です。同校が力を入れている取り組みのひとつです。講演テーマは多岐に渡り、各分野の第一人者が生徒たちの知的好奇心を刺激します。こうした経験は、生徒たちが普段の学校生活だけでは知り得ない様々な世界を知り、将来の可能性を探求する貴重な機会となっています。
単に講師の話を聞くだけでなく、入念に事前学習を行うことで有機的な学習を実現しているのも同校の講演会の特徴です。生徒たちは講演テーマについて事前に調べ、レポートにまとめた上で講演会に臨みます。これによって講演での学びが、ずっと深いものになっているそうです。

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