説明会で、ある保護者が「鉱脈を見つけた!」と言った。来春開校する、21世紀型教育推進校に注目!
112年にも及ぶ女子教育の伝統を誇る戸板が、2015年度から共学の三田国際学園に生まれ変わります。
同校が体制刷新に至った経緯と、生徒をどのように育てようとしているのか、その思いを学園長の大橋清貫先生に伺います。
中等教育を、社会で役立つ基礎力をつくる場にする
三田国際学園の学園長である大橋先生は、かつて順心女子学園を広尾学園に生まれ変わらせたプロジェクトのリーダーでした。その功績からも熱く注目を浴びている三田国際学園ですが、なぜ女子校のままではなく、共学を選択したのでしょうか。
「女子教育のグローバル化ももちろん大切ですが、(性差による社会的差別をしない)ジェンダーフリー、(人種・国籍を問わず企業などで人材を活用する)ダイバーシティなど、今は多様性を受け入れなくてはならない時代ですので、共学を選択しました」
では、体制の大刷新の全体像はどのようなものになるのでしょうか。
「これまでの中等教育は、大学実績が大きな評価基準になるなど、高等教育への予備校的要素が強かったわけですが、企業の一線で活躍するほとんどの方が、子どもたちが社会に出た時に役立つ教育を求めているのです。その基礎力を中高で、そして、大学教育はそれをさらに強化するものであるべきだと。時代のニーズがそこにあるのは明らかでした。
ですから、そこから逆算して中高で何をするべきかを考えてきました。そのためには、授業そのものを変えなくてはなりません。20世紀型ではなく、21世紀型授業を実践していきます」
そして、昨年4月に同校の理事に着任した大橋先生の指揮のもと、三田国際学園開校へ走り出したのです。
まず、同校が“グローバル時代に活躍する人材”を育てるための柱として掲げたのは、「相互通行型授業」「英語力」「サイエンスリテラシー」「ICT活用力」の4つです。
生徒を変えるために、まず先生が変わった
それからわずか1年あまりですが、来春に向けた準備はほぼ万全のようです。そのかわり、先生方にとっては疾風怒濤の日々でした。
「子どもたちを変えるには、教員も変わらなくてはなりません。21世紀型の新しい授業に転換するため、教員に研修を重ねてもらいました」
その21世紀型授業とは、講義型のような一方通行のものではなく、相互通行型のPBLや、生徒同士が教えあうPILに代表される手法。生徒を主体的な学びへと導き、支え、伸ばすものです。
「たとえば教員からの問いかけに対して、iPad(全員が所持)で何を検索するか、次に資料をどう読み取るか。我々大人はふつうにやっていますが、中1ですとまだ慣れていませんから、そのこと一つをとっても、多くのことを学びます」
つまり、課題を与えられた生徒たちは何を解決するべきかを考え、情報を集め、分析し、自分なりの解答を創造して発表する、という実践的かつ総合的なトレーニングを積むことになるのです。
同時に、この“思考+実践”のサイクルを常態化していくことで、生徒の好奇心や情熱を高めようというわけです。
広報部部長の今井誠先生が言います。
「大橋先生の言うことは、とてもシンプルなんです。『良い授業をしてください』と。それだけなんです」
「生徒たちは、モチベーションがあれば必ず伸びるものです。わが校の先生方のレベルは高いですから、授業研修でも手応え十分です。講義型では飽きていた生徒も、最後まで飽きないのです」
今井先生が、さらに続けます。
「そうなると、我々も『もっと良い授業をしよう』と、教員魂に火がつきまして(笑)」
来春の開校を待つまでもなく、同校ではこのように、すでにアクティブラーニングがふつうに行われているのです。
クラス(コース)を問わず、英語力と科学的思考力を身につける
さて、来春の開校を前に、今年から高校に「スーパーイングリッシュコース」と「スーパーサイエンスコース」が設置されました。そして来年から中学に「インターナショナルクラス」が新設されます。
「世界は英語で動いていますし、英語はある意味、実技教科ですから、どのクラス(コース)でもツールとしてきちんと身につけさせます。わが校で学ぶからには、中1で、全員に英検3級を取らせたいと考えています」
インターナショナルクラスでは週10時間の英語授業、副担任にはネイティブの先生(専任)を配し、つねに英語に浸る環境を用意して、イマージョン率を高めてきます。
また、論理的思考力を養うためにも、週1で行うサイエンスラボでの実験実習や、サイエンスツアー、フィールドワークなど、理科教育にも力を入れ、好奇心をかき立てるプログラムをさまざま用意する予定です。
「環境があれば、生徒たちはみな研究者になっていきます。そのために、実験器具は理系大学の実験室並みにそろえています」
21世紀版「知好楽」を展開。最先端の次世代教育を推進
大橋先生のお話を伺っていると、ふと、戸板の教育理念「知好楽」が思い返されます。これは「知る者は好む者に如(し)かず、好む者は楽しむ者に如かず」という『論語』にある、孔子の教えに由来している言葉。
つまり「人生におけるすべてのことは知ることから始め、それを好きになり、最後に楽しむ境地に至ったときこそ、初めて自分のものになり、豊かなものになる」という意味です。
普遍的な言葉ですが、これは、今の時代にこそ求められる真の学びの姿勢ではないでしょうか。そして、まさしく三田国際学園が推進しようとしていることそのものです。
まったく新しい次世代教育を推進しようとする同校は、時代を超えて、この「知好楽」を実現させ、生徒たちを大きく育てようとしています。
説明会で、大橋先生はある保護者の方からこう言われたそうです。
「鉱脈を見つけました!」と。
三田国際学園、2015年春、いよいよ開校です!
… 耳寄り情報(1) 一条校である強み …
インターナショナルクラスでは、オールイングリッシュで教育が行われます。これはインターナショナルスクールと同じですが、インターナショナルスクールを卒業しても、日本の大学を受験するには高等学校卒業程度認定試験を受けて合格しなければなりません。
しかし、同校は、学校教育法で定められた一条校であるため、インターナショナルコースで英語で教育を受けながら必要な単位を取得し、高校過程を修了すれば、日本の大学の受験資格を得られます。
… 耳寄り情報(2) ICT教育の充実 …
同校では「BUILD(Become United in Learning Devices)」というスローガンを掲げ、全学を挙げてICTを活用した教育の研究をしています。
生徒は一人1台のタブレット端末を持ち、授業や予習復習の調べ学習に活用。調べ学習から始まり、自分の考えをシェアし、プレゼンテーションを組み立てるという段階を経て、ICTリテラシーを身につけていきます。ICTを活用しながら、情報の収集・選択のスキルやリスク管理を学びます。
また生徒だけではなく、先生方も全員タブレット端末を持ち、いつでもどこでも情報収集や情報共有、そして発信ができるような体制を整えています。
… 耳寄り情報(3) 共学校 …
同校の敷地は6000坪。世田谷区にあって、相当な広さです。活発な男子が入ってきても十分に広い。男子を受け入れるため、新たなクラス(コース)を設けるため、同校は今改築中です。
クラブ活動では「サッカー」「野球」「鉄研」など、男子に人気のクラブを創部予定。またインターナショナルコースやサイエンスコースを設けることから、洋書やサイエンス系の蔵書もさらに充実させる予定です。
三田国際学園中学校・高等学校
[学校HP]http://www.toita.ed.jp/
〒158-0097 東京都世田谷区用賀2-16-1
☎ 03-3700-2183
最寄駅/東急田園都市線「用賀駅」徒歩5分。