LGBTを取り巻く社会問題を考える、「性の自分らしさを考える自由の会」
24時間すべてを学びの場とし、真の自由人を育てる
自由学園は、〈「真の自由人」を育てる〉を建学の精神に掲げ、幼稚園から大学部まで一貫教育を行っています。「真の自由人」とは、どのような時代にあっても変わることのない「真理」を求め、よく生きる人のこと。学園では24時間すべてを学びの場として人間教育を実践。学校そのものを小さな社会ととらえ、先生と生徒がひとつの大きな家族のようなつながりをもち、一人ひとりの生きる力、自ら学ぶ力を日々育んでいます。
この理念を実践するために、授業に関しても他の学校とは少し違うのが特徴です。例えば国語の授業では社会問題に目を向け、自身が関心を持つテーマについて学んでいます。そのなかのひとつが、「LGBTを取り巻く社会問題」について。近年、ニュースでも取り上げられることの多いテーマですが、授業で学ぶとともに、生徒自らが主体となって活動する「性の自分らしさを考える自由の会」が発足しました。
自由の会の生徒たちは、学内はもとより学外で学び、ときには自身が学会や講演会で発表することで社会に影響を与えています。
自ら学び、発信することでテーマを探求する
自由の会が発足したきっかけは、ある男子生徒のカミングアウトでした。その生徒は友人たちに、自身が性的マイノリティであることを告白。友人たちは、その事実とこれからどう向き合っていくべきかを真剣に議論しました。
このとき、国語の授業ではLGBTに関するテーマを扱っていました。そのような背景もあり、授業を受け持つ高野慎太郎先生のもとへ生徒たちが相談に。事情を聞いた先生は、「彼の思いを聞いて、自分たちは何をしたいのか。何か行動を起こすならば全面的に協力する」と伝え、研究会が発足しました。「授業では社会正義の旗印のもとに、生徒自身で決めたテーマを探求します。あらゆる素材を動員して学び、最終的には社会に働きかけることを目指します」と、高野先生は話します。
一学期は主に文献を読み解き、基礎的な知識理解を深めます。二学期には、関係者へのインタビューやテーマの舞台となる現地に赴きフィールドワークを実施。三学期にはそれらの学びに加え、生徒自らが学会などで発表を行うことも。学習者、また発信者として、社会と関わっていくのです。高野先生は、「生徒たちは膨大な文献を読みます。そのため、わかったつもりでフィールドワークをしてみると、実はもっと奥があることがわかる。机上の勉強と社会でのリアルな体験とを行き来することで、更なる探求への情念が深まってゆくのです」と話します。
地道な学びと実践が、社会に影響を与えていく
このような活動が実を結び、2018年には文部科学省後援の「高校生マイプロジェクトアワード」における発表で、全国優秀賞をいただきました。
また今年は、代々木公園で開催されるイベント「東京レインボープライド」にて高校生として初めてブースを設営。来場者と話し合う勉強会も実施し、多くの方々と交流を図ることができました。さらにこのことをきっかけにNHKから取材を受け、NHK総合テレビ『クローズアップ現代+』にて自由の会の取り組みが特集され、現在に至るまで多くの反響をいただいています。
自由の会のメンバーの一人である木村翠くんは、「友達や他の生徒たちに、自分たちの活動が広まっていっています。普段の会話のなかでも発言に変化があり、意識が変わっていっていると感じています」と、話しています。
「自由学園は、新しい社会を作る人を育てることを理念のひとつとしています。この学びを通じて、他者の痛みを自分の痛みとする感受性、そして、より公正な社会を作り出す力と気概とを自他に養いたいと願っています」と、高野先生。自由学園ではこのような取り組みを通じて、生徒たちの社会で生き抜く強さ、そして生きる力を育んでいます。
※上記はNettyLandかわら版の抜粋です。全容はこちらをご覧ください。
自由学園 男子部女子部 中等科
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