世界農業遺産と「創発学」
――日本学園の「創発学」では、中一・二で第一次産業(林業・農業・漁業)を体験・取材・発表しますね。
中学一年担任(以下略):「創発学」は中学入学後すぐにスタートし、山梨県で林業体験(間伐として樹齢三〇年の木を協力して切り倒します)を実施します。体験するだけではなく、必ず仕事に従事される方に質問・取材をし、それを新聞などにまとめます。こういった一連の取り組みを積み上げていくことで、生徒たちの「創発力」は目に見えるように伸びていきます。
―この夏、「能登の里山里海」として「世界農業遺産」に登録されている能登半島・輪島で、「塩田体験・漁業体験」をされたようですね。
能登半島・輪島の「千枚田・塩田」は、世界農業遺産に登録されています。能登の塩は、「揚げ浜式製塩法」と言われる製法で作られ、江戸時代以来続いている塩田を使ったもので世界でも類例がなく、木の道具を使用し、すべて人力・手作業で行われています。生徒たちは現地に到着後すぐに塩田作りの作業にとりかかりました。一人ひとり、海水を木桶に汲んで肩で担ぎ、何度も塩田にまきました。塩田を使用した製法は、真夏の三ヶ月間限定で、かんかん照りの日に丸二日間かけて行い、二日目には「天日干し」をし、手間暇かけて塩を作ります。また取材では「なぜ、この仕事に就かれたのですか」と聞く生徒に対して、塩田で働かれている方が「塩は人が生きていくためになくてはならないものです」とさりげなくおっしゃっていたのが特に生徒の印象に残ったようです。
――その後行われた「漁業体験」の方はいかがでしたか。
生徒たちは、塩田体験後、漁業に従事されるご家庭に民泊を兼ねて班ごとに分かれました。夕方に船に乗って、刺し網漁の準備に出かけます。刺し網漁は、一晩おいて翌朝早く網を引き上げにいく漁です。生徒たちは、朝四時半くらいには起床し、班ごとに協力して準備しました。たくさんの魚が捕れましたが、魚を捕るだけが仕事ではなく、使用した網の補修や今後使用するために網をきれいに広げて干す作業をしました。また競り市の見学までさせていただきました。金沢や生徒たちが住む東京近郊へ向けて出荷される様子も目の当たりにし、生産地でどのような人が魚を獲り、そしてどのようにして私たちの食卓に上るのかまでの一部始終がわかりました。現在、生徒たちは九月末の学園祭の展示・発表に向けてまとめをしています。ちなみに、本校の昨年度「適性検査入試」においても、この「塩田体験」に関する問題が出題されていますね。
創発学「塩田・漁業体験」
●創発学とは、“自ら創造し発信する力”を身に付けることを目標とした日本学園オリジナルのプログラムです。
日本学園中学校
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