私学探検隊

MYPに続き、DP認定校に。ますます深化する「IB教育」で「SDGs」を牽引する

2017年、埼玉県初のIB(※1)中等教育プログラムMYP(11~16歳)認定校に、19年10月にはDP(16~19歳)認定校になった同校。それに先駆けて、昨年には高校に「IBコース」が誕生しました。IBを主軸に据えた教育体制の下、国公立・早慶上理をはじめ、大学合格実績も更新し続けている同校の教育について、校長の城川雅士先生と、教頭で国際教育部長の前田紘平先生にお話を伺いました。

※1 IB…国際バカロレア機構が提供する教育プログラム。現在、世界140カ国以上、約5000校が実践。対象年代によりPYP・MYP・DPに分かれ、「論理的思考力」「問題解決力」、そして「社会貢献への精神」などを育成するとともに、国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア)を与えるもの。多様性を共有することを目指して「生涯学び続ける姿勢」を育むプログラムであることも大きなポイント。

高校の「IBコース」は次のステップへの象徴的存在

IBで知識と探究心、思いやりに富んだ生徒の育成を目指す

IBで知識と探究心、思いやりに富んだ生徒の育成を目指す

次世代型人材として「主体性」や「実行力」、「課題設定・解決能力」を身につけ、「社会貢献」への志を涵養することが求められるなか、同校では5年以上前から世界標準のIB中等教育プログラムを推進してきました。中学生全員が全教科をIBで学び、「知識」はもちろん、「概念」や「学習手法」を獲得し、世界に通用する「人としての器」と「学びの器」を醸成しているのです。
「世界の問題を解決するにはどうするか。実体験を重ねながら、その意識をもたせたいのです。その『学びの器』を作ることさえできれば、自ら成長していきますから」(城川校長)
同校のグローバル人材育成プログラムの主要3要素は「IB」「SDGs」「PEP」ですが、IBで思考力や表現力、協働力の骨格を作り、SDGsで実体験を重ねて自分と社会のつながりを意識し、PEPで世界標準の対話力を磨いていくのです。
そして、昨年からスタートした「IBコース」(定員15名)では高1で思考力や英語力をさらに強化し、高2から本格的にDPに入っていきます。
「IBでは生涯学び続ける姿勢を身につけ、社会貢献への志を育てることが重要ですが、現高2を見ていると期待以上に成長していると実感しています」(前田先生)
ちなみに、前田先生は文部科学省IB教育推進コンソーシアムのファシリテーターを務めるなど、学校内に留まらずIB教育を全国に普及させる役割も担っています。このあり方もまた、同校らしさの一つです。

実体験を重ね、社会貢献への志を醸成する「SDGs」

「SDGs」は、昨年まで実施されていた「PBL(※2)」と「SW(※3)」を統合したものです。「社会貢献への志を育てるという目的は同じですが、教員にとって授業が行いやすくなりました。というのも、PBLやSWは教科から独立しがちだったのですが、SDGsであればどの教科のどの単元でも取り入れることが可能です。そうして世界課題を多角的な視点から考えることで、社会貢献への意識を高めていければと。高2の修学旅行はアメリカ・カナダ・カンボジア・沖縄からの選択制になりますが、そこにもSDGsを絡めていく予定です」(前田先生)
また、中学3年間のIB教育の集大成として、自分の興味・関心に応じて奉仕活動を企画・実践する「コミュニティープロジェクト」がありますが、これもSDGsに繋がっていくものです。
通常であれば1学期中に企業などを訪問して企画立案し、夏休み中に奉仕活動を実施。その後、論文作成と発表を行うのですが、今年は事情が異なりました。
「それでも、限られた活動ではありますが、服を回収したり募金活動を行ったりと、生徒たちは自分なりに考えて動いています。なかには、Zoomで社会人の方にインタビューしたり、セミナーに参加する生徒も。『こんな状況だからできない』ではなく、生徒たちは柔軟に、今できることに挑戦していますね」(前田先生)
これも、日々の学習の成果の一つでしょう。状況の変化にも二の足を踏むことなく、「何ができるか」と考える姿勢を体得しているのです。

※2 PBL…プロジェクト学習/「世界」をテーマにした学習で調べ学習やプレゼンを行い、奉仕活動を通じて自分と世界の関わりを考える
※3 SW…スペシャル・ウェンズデイ/各国大使館やJICAなどを訪ねる体験型校外学習

知識と実践を融合した英語力超強化プログラム「PEP」

英検取得による優遇措置をとる大学が増えるなか、新大学入試では文系・理系を問わず、英語力が明暗を分けるとも言われます。それに加えて、同校が育成を目指すグローバル人材にも英語力の獲得は必須です。
「英語は向き・不向きは関係なく、学んだ分だけ力が伸びる教科です」と校長が言う通り、「PEP」の合言葉は「全校生徒が英語を得意教科に」。
「知識と実践のバランスを大切に、4技能を育成する授業を行うとともに、例えばネイティブの教員5名が常駐する『インターナショナル・アリーナ(通称・日本語禁止部屋)』など、日常的に英語に触れられる環境を整えています」(前田先生)
現高3の高2終了時の英検2級以上取得率が74・7%という数字も、その成果の一つと言えるでしょう。
ところで、休校期間中もWeb版インターナショナル・アリーナが開室されましたが、英語に限らず同校には生徒の関心を引くドアがたくさんあります。
「ドアはたくさん作りたいと思っています。きっかけさえつかめれば、生徒たちは自分で進んでいきますので、それぞれが開けやすいドアを見つけてほしいですね」(城川校長)
「IB」「SDGs」「PEP」を軸に、ダイナミックに深化する同校の教育の下、生徒たちは次々にドアを開け、自分の「器」を成長させています。

コロナ禍でも学びを増幅させる、昌平ならではのエピソードをご紹介

■生徒が語る「IBコース」の魅力と実践例
 休校中、「IBコース」のある女子生徒は「勉強後は、ダンスのオンラインレッスンを受けていた」そうです。自分で時間の使い方を考え、新たな生活のペースを作っていく。それも日頃の教育の成果ですが、彼女は「IBコース」の魅力として2つ挙げてくれました。
❶ディスカッションが多いため、生徒同士の距離が近く、仲良くなれる。
❷他人の話を聞き、受け入れていく場面が日常的に豊富にあるため、人間性を高めることができる。
「これからの成長が楽しみですね。他校と一緒に学生団体を立ち上げ、IBの良さを伝える座談会など、教育に関するイベントを企画・運営する生徒もいて、『学びの器』が着実に形作られてきたように思います」(前田先生)
■最も大切にしたのは朝の「ホームルーム」
 休校期間中のオンライン授業は、全教科実施しました。体育科の先生が勢ぞろいして、自宅でできるエクササイズを紹介するなど、各教科とも工夫を凝らした動画を作ったとか。
「ただ、最も大切にしたのは朝のHRです。自分をきちんと認識してくれる人と繋がるところから朝を始めることが肝心ですから。そして教員はアクセスできていない生徒を洗い出し、家庭のアクセス環境のためなのか、体調が悪いのか、チェックしました」(城川校長)
■生徒の「多様な個性」を再認識できた期間 普段はあまり目立たない生徒が、逆に活躍した場面もたくさんあったそうです。
「対面でのコミュニケーションでは勢いでカバーできる部分がありますが、Zoomでは言葉が明確で論理的な思考を持っている人のほうが説得力があります。そこで力を発揮した生徒もいれば、オンラインで行った『文化ウィーク』で中3は動画を作成したのですが、ITスキルが高い生徒がヒーローになったり。そのように、普段はおとなしいタイプの生徒の活躍ぶりをあちこちで見ることができた期間でもありました」(城川校長)

 

※上記はNettyLandかわら版の抜粋です。全容はこちらをご覧ください。

昌平中学校
[学校HP]http://www.shohei.sugito.saitama.jp/contents/jhs/
〒345-0044 埼玉県北葛飾郡杉戸町下野851 Tel.0480-34-3381
最寄駅/
東武日光線「杉戸高野台駅」JR宇都宮線・東武伊勢崎線「久喜駅」からスクールバス。
または「杉戸高野台駅」徒歩15分。

この学校の詳細情報を見る