私学探検隊

今春も、MYP2期生とDP1期生が大学実績で実証。主体的に学ぶ姿勢を獲得する「IB教育」の成果とは?

IBの授業では、多様性を知り、調整力を培っていく

IBの授業では、多様性を知り、調整力を培っていく

中学では全員が全教科をIBで学び、主体的・協働的に学ぶ姿勢を身につける。高校では、それぞれの志望に応じてタフな学力を身につける。中学を開校して12年。IBのMYP(対象:11~16歳)認定校になって5年、DP(対象:16~19歳)認定校になって3年が経ち、同校が実践する教育の価値が形に表れてきました。校長の城川雅士先生と、教頭で国際教育部長の前田紘平先生にお話を伺いました。

なぜ、IBか?
授業をつくるのは生徒。先生はファシリテーター
「自立した学習者」「生涯学び続ける人」という文言をよく見聞きします。では実際、どうすればそうなれるのでしょうか。その一つが、ディスカッションやプレゼンテーションなどを多用するIB教育かもしれません。
「IBでは生涯学び続ける姿勢を身につけ、社会貢献への志を育てることを大切にしていますが、期待以上に生徒たちの主体性が育っていると感じています」(前田先生)
各教科・各単元の探求テーマに基づき、「知識」に加えて、「概念」や「学習手法」も学ぶ点がIBの特徴ですが、このような学びは学力だけでなく、人間力をも涵養します。多様性の中で調整する力や、物事を俯瞰する眼を持つことの必要性を実感していくからです。つまり、知を満たす「学びの器」を支える主柱として、「人としての器」も形作っていくのです。
同校は、MYP認定校になる2年前からIB教育をスタートさせましたが、当初、学園広報室長の神崎憲一郎先生は、前田先生の授業を見て衝撃を受けたそうです。「いわゆる『謎落ち』なのです。旧来の授業では、教員が何らかの取りまとめをしますが、IBではそれを行いません。生徒同士の議論が主で、教員はファシリテーターに徹し、チャイムが鳴るとスーッといなくなる。でも、生徒たちの議論は休み時間になっても続いているのです」
「何事も正解は一つではないことを理解すると、生徒たちは自分から進んで学び始めますね。ですから、『多様性とは何か』といったことについても、自分の言葉で語ることができるようになります」(前田先生)
「IBの授業に確たる結論はありません。でも、そもそも社会の中でも、ただ一つの正解というものはないですよね。それを中学段階で知ることに意味がある。年齢が上がると価値観の変革は難しくなりますので、中学から始めることが重要なのです」(城川校長)

IBの授業とは
社会課題への対応力を育成する
前田先生が受け持つ社会の授業は、実際に世の中で起きている問題をテーマに、さまざまな角度からその問題の根っこにあるものを考えていくことが多いのですが、ここでは、中3の国語を例に、IBの授業の様子をご紹介しましょう。
❶テーマ:広告の分析
広告を見て、「何が読み取れるか」「何が印象的か」「表現上の工夫は?」「読み手にどう働きかけているか」など、言語・非言語コミュニケーションを統合して考察し、分析する。
❷テーマ:自己と社会の狭間のわたし
「なぜ我々は虚構の作品を理解し、想像しながら読めるのか」「言語はいかに我々の考えを形作るのか」などについて議論し、批判的思考を培う。
つまり、社会課題に対応できるだけの基盤を作るために、幅広い知識をもとにした探究スキル、課題発見・解決力、コミュニケーション力などを育てているのです。
「旧来の国語の授業とは、力点がまったく違いますよね。このような授業ではさまざまな視点が出てきますので、次に向かうモチベーションにもつながっていきます」(前田先生)

IBの成果が結実
6年間、そして3年間の成果が即座に証明された
中学では全教科をIBで学び、「人としての器」を広げる。そして、高校からは中高一貫生が進む「中高一貫クラス」と「IB(DP)クラス」に分かれて、「学びの器」を醸成していきます。
「IB(DP)クラス」は世界標準に特化した内容を学ぶため、定員15名の少数精鋭で行われますが、海外の大学や日本の大学のグローバル学部へ進学を希望する生徒が在籍しています。一方、「中高一貫クラス」は中学のIBで獲得した学習姿勢や学習手法を基盤に、一般入試で国内難関大学を目指します。
そして、左上に示したように、「中高一貫クラス」は今年も見事な実績を残しました。さらに、今年は「IB(DP)クラス」1期生も大学受験に臨み、こちらも素晴らしい結果でした。
政府はIB認定校を増加させる方針を打ち出していますが、IBで学んだ学生を求める大学も年々増加。これらの動向は、同校の教育の強力な追い風になるに違いありません。

IBのこれから
「知らない世界」を実感し、さらに深く考察していく
中学では自分で考え、発信する体験を繰り返して自立した学習者を育て、高校ではタフな学力を身につける。昌平が実践する教育の構図です。
「中学で、大きなものの見方ができるように『人としての器』を広げておけば、高校で大学受験に特化した知識型の学習を行っても、大学受験がゴールではないと、生徒自身が自覚していますね」(城川校長)
「今後も、生徒たちには自分には知らない世界があるんだということをきちんと、そして切実に実感させていきたいと思っています」(前田先生)
そこで、中学3年間のIB教育の集大成として、奉仕活動を自分で創出する「コミュニティープロジェクト」など社会と関わる機会は豊富に設ける同校ですが、さらに強化しているところです。
「記者やエンジニア、経営者など、各界の第一線で活躍する社会人の方を招き、少人数で対話をする試みを始めています」(前田先生)
これもまた、ものの見方の多様性と物事の多様性を知る機会となっています。さらに、今年からは起業家の方と一緒に「持続可能な社会貢献」をテーマに、社会問題とビジネスを結びつけるアクションを起こす活動もスタートしました。
人として、学習者として、生徒が自立していくようサポートする先生方の合言葉は「手をかけ 鍛えて 送り出す」。同校が実践するIB教育の今後を、さらに注視したいと思います。

IB教育が結実した見事な結果!
2年連続で東大2名、国公立101名、早慶上理ICU82名、GMARCH236名と、今春の卒業生も見事な実績を挙げました。
その中から、高校入学生ではなく、中高一貫生の実績を取り出して、以下にご紹介しましょう。また、「IB(DP)クラス」1期生の実績も併せてご紹介します。

【中高一貫生/卒業生68名】
国公立16/早慶上理ICU20/GMARCH29

東大1/東工大1/北海道大1/東北大1/お茶の水女子大1/東京外国語大2/筑波大2/横浜国立大1/東京都立大1/群馬大2(医1)/早稲田大5/上智大2/東京理科大12/国際基督教大1/学習院大1/明治大7/青山学院大1/立教大1/中央大8/法政大11/麻布大1(獣)

【IB(DP)クラス/卒業生20名】抜粋
東京外国語大1/筑波大1/東京学芸大2/早稲田大1/上智大4/青山学院大1/立教大3/中央大1/法政大4/Acadia University(カナダ)

やっと実現!「昌平リベンジャーズ~取り戻せ、青春(あおはる)~」
5月に行われた体育祭に続き、9月10・11日には、3年ぶりに文化祭「昌平祭」が開催されました。コロナ感染防止のため、中学3学年とも入学してから一度も経験していないのですから、待ちに待った文化祭です。だから、テーマは「取り戻せ、青春」。
さまざまに工夫を凝らした発表や展示のほか、装飾企画の一つとして、3号館の入り口正面に、各クラスごとにおとぎ話のワン・シーンをモチーフにしたステンドグラスを作成。なかなかの力作ですが、計10枚分の多彩な光の中には、生徒たちの願いが込められています。

 

※上記はNettyLandかわら版の抜粋です。全容はこちらをご覧ください。

昌平中学校
[学校HP]https://www.shohei.sugito.saitama.jp/contents/jhs/
〒345-0044 埼玉県北葛飾郡杉戸町下野851 Tel.0480-34-3381
最寄駅/
東武日光線「杉戸高野台駅」徒歩15分。JR宇都宮線・東武伊勢崎線「久喜駅」からバス5分「吉羽大橋」徒歩8分。スクールバス:「杉戸高野台駅」から5分、「久喜駅」から10分。

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