中学ではIBを取り入れて〝人としての器〟を広げ、 高校では〝硬派な授業〟で希望の進路に確実に導く
中高一貫部を開設して今年で9年目。教育改革でさまざまな成果を上げる同校ですが、今回は、IBを取り入れた中学での学びをご紹介しましょう。IB導入にあたっては4年前から準備を始め、本年3月に埼玉県初のMYP(中等教育プログラム)認定校となり、中学生全員を対象にIB教育を実施しています。校長の城川雅士先生と、国際教育部部長であり、社会科と英語科の前田紘平先生にお話を伺いました。
手をかけて、〝知を吸収する器〟を広げる中学の3年間
「現中3が入学して間もなくの頃、社会の時間に『地理が好きな人は?』と尋ねたら、ほとんど手が挙がりませんでした。『ただ覚えるだけでつまらない』というのが大方の理由です。そして、1年近く経った3学期にふたたび尋ねてみると、とくに苦手だと言っていた生徒が『覚えようとしたわけではないのに、いつの間にか頭に入っているし、新しい情報を知ることが楽しくなった』と言いました。これだ、と思いましたね。とても嬉しかったです」と前田先生。
これが、同校が取り入れているIB指導法の成果の一つです。「狙いどおり、生徒たちに考える力がついてきているように感じます」
たとえば地理では、生徒たちは調べ学習をして発表するのですが、そのあと、生徒同士での質疑応答があります。ですから、発表する生徒はどのような質問がくるかをある程度想定し、それについても調べておかなければなりません。つまり、先の生徒は「最初は想定問答のためにいろいろ調べていたのだけれど、そのうち新しいことを知ること自体が楽しくなった」というわけです。
これこそ、まさに「自ら主体的に学ぶ」ということでしょう。他者からの質問を想定しているうちに物事を見る角度が広がり、自分自身のなかにも新たな疑問が芽生えてくる。このように、きっかけさえつかめば、生徒たちはどんどん自分たちで進んでいくそうです。また、聞いている生徒は発表している生徒の良いところを学ぶなど、刺激しあいながらプレゼン能力も伸びていくのだとか。
体育の授業も同様です。全員が取り組むものに「創作ダンス」があるのですが、「ダンスなんて……」と気乗りのしない男子にも変化が表れます。「IBにはルーブリックという評価基準があり、〝ここまでやれば8点満点の8点〟と、目指す方向が明記されています。ダンスでいえば、動きの強弱や速度のコントラストなどサンプルが示されていますので、目標に向かって、生徒たちは意欲的に取り組みはじめますね」(前田先生)
生徒たちはIBの授業をとおして学ぶことの楽しさを知り、さらに「探求→行動→振り返り」をくり返すうちに自分には何が足りないのかに気づき、筆記試験では身につかない思考力や表現力を獲得していきます。つまり、自分で自分のことができるようになるのです。そして、これがIBの最大の肝だと先生は言います。「これは、社会に出てからも活きてくる力です。ですから、最初に学ぶ意味を意識させることが重要です。たとえば、数学は社会とのつながりを学ぶためのもの、『論理とは何か』を知るための材料になるものだと」
それと同時に、以前から行っていた小テストや反復学習を重ねることによって学力も伸びています。実際、模擬テストの結果も好調で、「ほとんどの生徒が中学入学後に学びはじめる英語で見てみると、とくに以前よりも伸びていることがわかります」(前田先生)
IBとは、スイスのジュネーブに本拠地を置く国際バカロレア機構が提供する国際的な教育プログラムのことで、147カ国4495校で採用。世界標準のグローバルな視点で作られた教育システムで、対象年代によりPYP、MYP、DPに分かれます。授業にディスカッションやプレゼンテーションを積極的に取り入れることで、問題解決力、論理的思考力、コミュニケーション力、情報収集力、社会貢献の精神などを育成します。
〝硬派な授業〟で鍛えて、望む進路に送り出す高校の3年間
IBは全教科で広く取り入れられていますが、すべての時間ではありません。「最低限押えておかなければならない知識があり、それをもとに考え、表現することが大切ですから、たとえば英文法などはIBでは行いません」と、前田先生。
城川校長が続けます。「中学時代は〝人としての器〟、つまり知を吸収する器を広げるためにIBでアクティブラーニングを中心とした指導を行い、高校では硬派な授業を行う。そこは、柔軟に分けて考えています」
現中3が同校のIB指導法で学ぶ1期生にあたりますが、彼らが大学受験に臨むのが2020年。
「我々は、生徒を希望の進路に歩ませないといけません。そのために、高校段階では大学入試対策にも相当力を入れる必要があります。ただ、考える力や社会貢献への意志が備わっていない生徒が難関大学に入っても意味がないわけです。ですから、中学の3年間は、IBを取り入れた指導で人としての器を広げ、社会貢献へのポテンシャルを育てます。また、大学入試が変わるとはいっても、どうしてもテクニカルな部分は必要ですから、高校では硬派な授業でガツッと仕上げます。その両方のバランスに目を配りながら対応していくことが肝心だと思っています。より良い社会をつくる人材を育てていくためには、逆算すると、この〝人としての器を広げる〟中学の3年間と、〝硬派な授業で技術的に仕上げる〟高校の3年間が必要不可欠なのです」(城川校長)
この校長の言葉は、同校の先生方の合言葉である「手をかけ、鍛えて、送り出す」にそのまま重なります。この確固たる指針のもと、同校の生徒たちは〝知との出合い〟にワクワクしながら学校生活を送っています。
英語教育にも力を注ぐ同校ですが、英検やTOIEC受検、スピーチコンテストなどのほか、「インターナショナル・アリーナ」というネイティブの先生が常駐する日本語禁止部屋にも、つねに生徒たちの姿が。IBを取り入れた日常の授業だけでなく、このようなさまざまな取り組みによって、生徒たちの好奇心の芽は開かれていきます。オーストラリアの姉妹校の生徒が来日した際、以前はホストファミリーを希望する家庭が少なかったそうですが、最近は大勢の手が挙がるのだとか。「生徒が自分の家に迎えたくて、親御さんを説得するようです」(城川校長)
躍進する大学合格実績
2017年春、東大(2名)合格! 京大合格!
~3年連続 東大合格~
この約10年、大学合格実績を伸ばしつづけている同校。今年も東京大学現役合格者を出し3年連続の東大合格者輩出となりました。中高一貫Ⅱ期生が卒業した今春は、一貫生から京都大学・一橋大学・お茶の水女子大学など難関国立大学への合格者も増え一貫教育の成果も着実に現れています。最近の生徒の進学希望の変化について「合格の可能性が高い大学より、自分が本当に行きたい1ランク上の大学を目指す傾向がより強くなりました。チャレンジして結果が出なかったときに、妥協して滑り止めの大学に行くより、再チャレンジするケースが散見されます」(城川校長)これも同校の生徒たちの意欲の高さの表れです。教育改革がますます加速する同校ですが、それに伴い、今後の大学実績にはさらに期待が高まります。
クラブ活動も盛んな同校ですが、近年躍進を遂げているのがサッカー部です。昨年の全国インターハイ3位に続き、今期のチームは現在埼玉県3冠。その中でFW務める佐相壱明君のプレーが認められ、J1大宮アルディージャへの入団が決定しました。これは昨年のMF針谷岳晃君(J1ジュビロ磐田)、MF松本泰志君(J1サンフレッチェ広島)に続く朗報で、高校部活動での活躍が認められ、そのままJリーガーになるのは毎年10名程度といわれていますので、2年連続のJリーガー輩出は快挙といえます。このように、同校では勉強はもちろん、スポーツでも世界を舞台に活躍する人材が育っています。
※上記はNettyLandかわら版の抜粋です。全容はこちらをご覧ください。
昌平中学校
[学校HP]http://www.shohei.sugito.saitama.jp/jrhighschool/
〒345-0044 埼玉県北葛飾郡杉戸町下野851
Tel. 0480-34-3381
最寄駅/
JR宇都宮線・東武伊勢崎線「久喜駅」よりスクールバス10分。