IB教育を基盤に主体的に学ぶ姿勢を身につけ、IB1期生が学校推薦型選抜で東大に合格!
「手をかけ 鍛えて 送り出す」をモットーに、中学では全員がIBで学んで「人としての器」を広げ、高校ではそれぞれの志望に応じて「学びの器」にさまざまな知識を満たしていく。「世界標準の人間力」と「従来型のタフな学力」の両輪を備えた人材育成に全力を注ぎ、大学合格実績も更新し続けている同校の教育について、校長の城川雅士先生と、教頭で国際教育部長の前田紘平先生にお話を伺いました。
「正解のない問い」に向き合い、「考え方の基礎」を作っていく
全国でも珍しく、中学生全員が全教科をIBで学ぶ同校ですが、そもそもIBとは、何をどのように学ぶものなのか。早速、先日、前田先生が行った地理の授業の一部をご紹介しましょう。単元は「北アメリカ」。
「実際に世の中で起きている問題を考えていくのですが、その時は新型コロナを絡めました。アメリカではコロナによる死亡者数は人種によってバラつきがあり、黒人が多いのが実情です。統計資料を見て経済事情や医療が行き届いていないなど、その根っこにあるものを考え、『では、どうすれば解決できるか』とディスカッションしました」(前田先生)
また、アメリカでは大学や公立校の入学選考で人種的少数派を優遇するアファーマティブ・アクションがありますが、引き続き「それは是か非か」「では、単に点数で切ることはフェアなのか」「何を以って公平と言えるのか」と、話し合ったそうです。
「語弊はあるかもしれませんが、IBの授業には結論がありません。でも、そもそも社会にただ一つの正解というものはないですよね。それを中学段階で知ることに意味があると思っています。そういう経験を重ねることで、将来、社会への適応力も違ってくるはずですから」(城川校長)
IBは、知識を得て普遍の概念を学ぶもの。ディスカッションやプレゼンテーション、レポートなどを多用して知を吸収する器、つまり「人としての器」を形作っていくのです。
IBで論理的思考力、問題解決力、そして社会貢献への志を育てる
国際バカロレア機構が提供する教育プログラム「IB」は、現在、世界153カ国以上約5300校が実践。対象年代によりPYP、MYP、DPに分かれますが、同校は2015年からIB教育を導入し、2017年にMYP(11~16歳)認定校に、2019年にはDP(16~19歳)認定校になりました。
「年齢が上がると価値観の変革は難しくなります。ですから、中学から始めることが重要なのです」(城川校長)
中学で知識をもとに、考える体験を繰り返して「人としての器」を広げる。高校では、そこにさまざまな知識を入れて「学びの器」を醸成していく。この両輪で、見識を持った若者を育てているのです。
「IBでは生涯学び続ける姿勢と、社会貢献への志を育てることが重要ですが、生徒たちは期待以上に成長していますね」(前田先生)
その一例をご紹介しましょう。中2の生徒数人が自ら手を挙げて「科学の甲子園ジュニア」埼玉県大会に出場したのですが、34チーム中最優秀校2校のうちの1校に選ばれました。12月には全国大会へ挑みます。
「筆記競技と実技競技があるのですが、中2はまだ物理分野を学習していませんので、自分たちで取り組んでいました。教員に頼ることなく、難度が高い問題もおもしろがって解いている姿を見て、高い主体性が身についてきたな、と」(前田先生)
IBで高い主体性を身につけ、志に向かって自走できる人に
中学では全員が全教科をIBで学びますが、高校からは「特別進学コース」「選抜進学コース」「IBコース」の3つのコースに分かれます。「IBコース」は、その授業法のため定員15名の少数精鋭で行われますが、海外の大学や日本の大学のグローバル学部へ進学を希望する生徒が、世界標準に特化した内容を学びます。
一方、中高一貫生が進む「特別進学コース」は中学のIBで身につけた学習姿勢や学習手法を基盤に、日本の難関大学進学を目指して大学入試に特化した内容を学びます。
ところで、同校がIB教育を導入した2015年といえば、東大や京大で推薦入試を開始した年でもあります。そして今春、同校のIB教育1期生が東大の理科Ⅰ類に学校推薦型選抜で合格しました。
「ペーパーテストで終結することのない、IBの学びで東大合格者を出すことが学校としての一つの夢でしたが、矢内君は見事に実現してくれました」(城川校長)
その矢内君は、高1の時に生物・化学部で「自動受粉ロボット ポリネロイド」の研究に勤しみ、仲間と共に国内最大級の中高生のための学会「サイエンスキャッスル」関東大会で発表して東京工業大学賞を受賞しました。このロボットは、世界的に減少傾向にあるミツバチの代替として、果実などの人工授粉を行うもの。加えて、将来的には農業の人手不足と食糧問題の解決に向けた意味合いもありました。つまり、「どのように社会に貢献するか」というIBの理念に適った研究だったのです。
高校では「特別進学コース」で学んだ矢内君ですが、中学時代のIB教育が彼の骨格を作ったことは間違いありません。
「IBの目標の一つは生涯学び続ける姿勢を身につけることですが、矢内くんは勉強だけではなく、英語のスピーチコンテストに参加したり、文化祭実行委員長を務めたりと、いろいろな場面で意欲的でしたね。求められるものを把握しながら、常にそれを超えようとしていた姿が印象的でした」(前田先生)
今回は、IB1期生の東大合格を象徴例としてご紹介しましたが、同校が教育の柱として実践しているIB教育の下では、志望の文・理にかかわらず、「人としての器(世界標準の人間力)」と「学びの器(従来型のタフな学力)」を併せ持った生徒が育っています。IBを導入して7年目。一周回って、今後にも注目です。
東大2/東工大1/大阪大1/東北大1/北海道大1/筑波大4/東京藝術大1/千葉大7/埼玉大14/東京学芸大5/早稲田大26/慶應大6/上智大6/東京理科大46/学習院大20/明治大25/青山学院大15/立教大35/中央大48/法政大20
大学入試でも要と言われる英語力。同校では「全校生徒が英語を得意教科に」を合言葉に「PEP(パワー・イングリッシュ・プロジェクト)」を実施しています。4技能5領域を育成する授業のほか、国内外で多様な実体験を積みますが、その成果でしょう、昨年の中3修了時の英検準2級取得者は81.3%(内、2級&準1級が25.3%)にものぼりました。
ただ、今はコロナ禍で海外研修などは制限されているため、そのなかでもできることとして、夏には関東圏の大学の留学生20名を招いた交流の機会を用意。会話はもちろん英語オンリー。アイスブレイクのアトラクションの後は“Don’t be shy.” “Mistake is OK.”をルールに、グループに分かれて文化の違いや習慣の違いを語り合うなど、異文化交流を図りました。
※上記はNettyLandかわら版の抜粋です。全容はこちらをご覧ください。
昌平中学校
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