聖光学院 SSH成果発表会 2018年3月17日(土)
聖光学院 SSH成果発表会 2018年3月17日(土)
3月17日、聖光学院では、高1生による「SS探究Ⅰ」の「成果発表会」が開かれました。
聖光学院は2017年度からSSH(※)指定校として研究開発を進めています。研究課題Iとして設定した「科学的思考能力を育む中高一貫による理数教育課程の開発」の具体的取り組みのひとつが、 「探究基礎」(中学3年生)、「SS探究I」(高校1年生)の設置です。今年度のSS探究Iの実践活動は、
・ 夏休み前、高1生全員から探究テーマを聞き取り、
・ 全員のテーマを共有しあい、テーマが似ているもの同士でチームを組む
・ チームとしてのテーマを絞り込み、探究活動
という流れで進められました。早いところでは3ヶ月でまとめあげたチームもありますが、中には途中でテーマ変更、あるいは挫折を味わったチームもあるなど、「成果」の形は様々です。Teaching assistant(TA)の大学院生はもちろん教員も、実験や調査の方法、先行研究の調べ方について方向性を示唆することはあっても、結果や考察に口出しはしません。生徒にとって、それぞれの探究活動の経験が、この一年の成果といえるのかもしれません。
※SSH:文部科学省による、将来の国際的な科学技術人材を育成することを目指し、理数系教育に重点を置いた研究開発を行う「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」事業。2017(平成29)年度は全国で203校が指定を受けた。
さて、発表会当日。午前はポスターセッション、午後はオーラルプレゼンテーションです。
ポスターセッションは、前半と後半に別れ、各28チーム計56チームが研究成果をまとめたポスターを用意し、チーム全員が交代でします。テーマもポスターも多彩ですが、質問に対する応答にも個性があり、スタート当初は見学側の生徒にも照れくささとたどたどしさが見られたものの、「どんどん質問しよう」と促されると、会場のあちらこちらでボリュームもテンションも上がっていきました。すべてをじっくり聞いて回るのは無理だと途中で諦め、途中からは興味のあるテーマの発表を聞くことに方針転換。それでも、あっという間に時間が過ぎていきました。見学の生徒は発表を聞き、質問し評価。評価にあたっては、「テーマ」「探究内容」「今後の展望」「ポスターデザイン」「プレゼン」の5項目毎に、評価基準に従って点数を付けます。例えば、探究内容の最高評価5は、「仮説→実証・検証・計画→考察を複数回行っている。客観的に正しい内容になっている」。逆に評価1は「仮説→実証・検証・計画→考察を行っていない。主観的な内容になっている」というように評価シートに示されているので、評価する側もされる側も、観点が明快です。ポスターの横に用意された評価シート回収封筒には、どんどんとシートが入れられていきました。
生徒以外に、保護者、大学院生、卒業生、企業関係者らも来場し、生徒とともに発表に聞き入りました。大学院生や企業関係者は、聖光学院のSSH事業を何らかの形で支援している人たち、その友人たちとのことで、あらゆる意味で先輩。彼らの質問に対しては、見事回答ということばかりではありません。例えば企業マーケティング視点の質問に、「そこまでは考えていませんでした」という正直な答えもありましたし、母親の生活体験からの質問には、「お金がかかるんで・・」など高校生らしい“限界”も。こうした場を経験し、今、足りないものを知り、アプローチの視点を学んだのではないでしょうか。
最後に、高1生は自己評価シートを提出。中3生は先輩の姿に学び、高1生は他チームに学び、自分を省みる、そうしたサイクルが繰り広げられている「現場」でした。
SSH初年度の高1生にとっては2年分の内容を一年で行うという駆け足で、テーマ設定から発表までの時間は短かったかもしれません。探究基礎を経て来年、SS探究Ⅰの成果発表を迎えるであろう現中3生の変化にも注目しておきたいものです。
【特別展示より】
ポスターセッションのなかに、特別展示がありました。聖光学院ではこれまでも、企業企画への応募や共同企画で連携するなど、生徒自身が学校外にも興味関心のアンテナを立てて活動してきました。SSH事業の研究課題IIには「好奇心に火を点ける社会に開かれた科学教育プログラムの開発」を掲げており、学校側の生徒の好奇心に応える様々なチャンスを逃さない姿勢が、こうしたところからも伺えます。
今回の特別展示のひとつは、新日鉄住金エンジニアリング主催のコンクール「情熱・先端 Mission-E浮体式洋上風力発電所」に参加した、高1・中3生チームによる、浮体式洋上風力発電所のモデル設計。3月のコンテスト本番では審査員特別賞を受賞しました。
もうひとつが「マスタースレイブ接続の自律型ローバー群を利用した探査」です。こちらは、第2回国際宇宙探査フォーラム(ISEF2)に合わせて開催された高校生対象のサブイベント「S-ISEF 」(3月3日)に参加した生徒4名によるもので、そのうちのひとり、Sくん(高1)が中2のときに立ち上げた宇宙開発研究会のメンバーです。ポスターはすべて英語、この日のプレゼンは日本語でしたが、「S-ISEF」では英語でプレゼン。Sくんは、宇宙開発に、技術者として関わりたいという夢があります。ものを作ることについて「ブレストやグループワークで、アイデアに基づいて、考えを組み立ててものを作りあげて行く」楽しさを語ってくれました。技術的なアイデアの斬新さ、新規性、おもしろさを大切にするというSくんに、「でも常識に囚われたりすることもあるのでは?」と問うと、こう答えてくれました。
「常識を飛び越えるのはむずかしいと思います。でも、宇宙開発や、分野が異なる様々なことにアンテナをはるようにしています。また中高生になると一気に視野が広がります。今ある技術から遠い先に何ができるかを考えて、その間に(近い将来に)何が作れるのか考える。目先のことだけでなく、遠い先を見て、そこに向けて考えを積み上げて行く。そう心がけています」
(市川理香)