特集

桐朋女子中学校「生徒が作る説明会(大人が出てこない説明会)」

2019年10月27日(日・10:00〜12:00)の桐朋女子第2回中学校説明会は、「桐朋女子史上初となる生徒が作る説明会(大人が出てこない説明会)」ということで、想像を逞しくしながら学校へ向かいました。 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ 生徒・生徒・生徒 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■  学校に着き、初めに出会った大人は、校門脇の守衛さん。 そこから先はお迎え、誘導、受付に至るまで全て生徒。タイトル通りだわ・・と思いつつ受付に並び順番を待ちました。  生徒が受付で名簿(事前申込)をチェックしながら、何やらシールを配っているのが見えました。おぉ、なんだか仕掛けが姿を現し始めたような・・。 ワクワクのスイッチON。  受験生に渡す名刺大のシール(5色)にはファーストネームを手書き、同伴の保護者にもシールを渡し、それぞれ見えるところに“入場券”のように貼って会場(ポロニアホール)へ向かいました。ホールのエントランスに置かれた長机には学校案内パンフレットや要項、帰国生教育リーフレット、生徒が作ったパンフレット、持ち帰り用の手提げなどが並べられており、必要なものだけピックアップしてからホール内への導線ができていました。資料フルセットを配る(受け取る)ということから解放されているのもありがたいです。  さて座席はシールの色別にゾーンが決められており、緩やかに位置を指定されます。前半分くらいは受験生用で、背もたれには「謎解き! 校内探検」という張り紙。後ろ半分が保護者席。そして開会まで、前方スクリーンには、文化祭・体育祭はもちろん、休み時間、掃除、部活等々の生徒同士の元気いっぱいの日常生活が垣間見える映像が流れており、百の言葉よりこの笑顔というくらいに、これでもか!と学校生活の充実ぶりが伝わってきます。    開会宣言の後、まずギター部によるウエルカム演奏が3曲。仲間の音を聞き、顔を見合わせながら奏でるハーモニーに緊張が解れていきます。 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ 桐朋女子の生活について □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■  さあ、説明会。司会は高校2年生のお二人。  「初めに校長挨拶です」ということで、「本日2人目に出会う大人が校長先生か・・・」と思いきや、「本日は生徒主体の説明会なので、校長先生も動画です」。この時、極めて平均的、形式に慣れ切った私が待っていたのは「校長先生が教育理念を語り挨拶をしている動画」でしたが、スクリーンに映し出されたのは「生徒が校長先生にインタビューしている動画」。しかも「桐朋女子の、直したいところは何か」「魅力を伝えるためにメディアを利用して宣伝しないのはなぜ」という、およそ校長挨拶では出てこないであろう質問でした。インタビュー後の校長先生の感想、生徒の感想までトータルで見事に、挨拶パートになっていたのでした。  続いて高校1年生3人による「桐朋女子の生活について」。たっぷり時間が取ってあり、『授業』『生徒・日常生活』『行事』『その他』に分けて、三者三様の経験を披露してくれました。3人の背景が、中学入試で入った帰国生、高校入試での入学、併設小学校からの内進生とバラバラで、それもまた自然に桐朋女子の多様性をさりげなくみせる心憎い人選。 *授業  特徴としてあげられたのは、まず“レポートが多い”、“テストが多い”。そんな、ちょっとネガティブに取られそうなことは、自分たちが上達していること、中間・期末という単位ではなく単元ごとのテストなので力が定着する良さを伝えて、安心させてくれます。「レポートは中1の時から書いて来て、ダメ出しを受けるたびに直して上達してきました」「高校から入って、もう2〜3本書きましたが、難しいです。周りがスラスラ書いているのが刺激になります」  そして“発言が自由”という桐朋女子らしさは、いろいろな考えがあることを聞けるし、間違った答えを頭から否定しない雰囲気があることだと説明。また、7つの理科実験室を持ち、社会や理科のフィールドワークが多い特徴を“本物に触れられる”と誇らしげに語ります。剣崎の地学巡検では地層のスケッチ、レポート。都内巡検では、銀座を歩いて地元の商店街と比較など紹介された事例も、楽しそう。  曰く「授業感はあまりないけど、やった感はあるよね」 *生徒・日常生活  生徒・日常生活で挙げられた特徴は、“自由人” 、“活発”、 “個性豊か”。 「一人ひとりの居場所がある、一人ひとりが活発になれます」「休み時間に笑いが絶えない。自分たちで動物園って例えています」「毎年クラス替えがあるので、クラスをまたいで輪が広がります」「いろいろな国からの帰国生が多いので違う視点からの刺激があります」という実感から発する言葉には、大きな説得力があります。  そんな生徒ばかりだと、逆に冷めている子だっているかも、引いてしまう子もいるかも・・。そんな不安が頭をもたげますが、数多い“クラブ活動”(兼部も多いそうです)や、『行事』と『その他』の様子を聞くにつけ、入学したらそれぞれのスピードで桐朋女子の生徒になっていくのも頷けます。 *行事・その他  桐朋女子の生徒の、体育祭や文化祭にかける熱量はつとに知られていますが、“生徒が主体”であることがエネルギーを生む源になっていると感じます。学年対抗の体育祭での団結は、何より象徴的ですが、「綱引きで勝つための水2リットル飲んで体重増加作戦」のような「熱い青春」は、その発露。行事には、準備、当日、反省のサイクルがあり達成感を伴っていることは見逃せません。  “生徒と先生の距離が近い” 、“積極的・社交的になる”という、桐朋女子の特徴も、登壇した3人(途中で、もう1人、生徒会副執行長も登壇したので実質4人ですが)が語る飾らない日常の姿が示してくれたのではないでしょうか。  最後に入学してよかったこと。 「やりたいことがたくさんある。それを後押ししてくれる学校」 「人が変わったと言われます、ずっと喋っているねって」 「いろいろなタイプの友人ができます」  苦労したことも赤裸々に話してくれました。 「積極的、活発な子が多いので、考え方が合わないとケンカも多い」 「個性的な子が多いので、始めは気を遣って疲れました」 「意見がぶつかり合うのは辛いです」  でも今、桐朋女子を好きでたまらないのは、「違うから学べる」「違うから楽しい」と思えるようになるからだと、それぞれの話から伝わります。自由で活発な人が輝く場所でもあり、今の自分を変えたいと思っている人が刺激をもらえる環境でもあるのだと受け止めました。    ここで受験生は、シールの色ごとに生徒に案内されて『謎解き!校内探検』に出発。保護者対象には別プログラムが用意されていました。

We Love Our School !!(女子校アンサンブル)

東京都内有数の女子伝統校が集う合同説明会「女子校アンサンブル」。女子校の魅力を伝えようと始まり、今年17回目を迎えました。 参加9校(跡見学園、学習院女子、恵泉女学園、香蘭女学校、実践女子学園、東京女学館、豊島岡女子学園、三輪田学園、山脇学園)によるミニ説明会や個別相談は情報収集の場。また9校卒業生による座談会や生徒によるプレゼンテーションは学校生活をイメージする機会となり、満足度の高いイベントとして定着しています。これらのプログラムをうまく組み合わせて、一日をフル活用するご家族も。 9校は全て「女子校」。とはいえ各校の教育理念や教育環境のもと、特色ある教育を行なっています。この日の生徒によるプレゼンテーションには、15分間にそれぞれの学校Loveがギュッと詰まっていて、志望校選びが一歩も二歩も進んだかもしれません。ここでは「生徒によるプレゼンテーション We Love Our School!!」のエッセンスをご紹介。 ------------------------------------------------------------------------------ 生徒によるプレゼンテーション We Love Our School!! ☆★☆ 跡見学園は、放送部の生徒による、「学校案内」。来校した受験生を、生徒が案内する趣向ですが、スクリーンに現れた生徒と受験生を演じる部員は声優かと思うほどの熱演を繰り広げました。間合いの取り方も絶妙。クイズを折り込みながら、校章や制服、謡曲仕舞部といった珍しい部活をさりげなく紹介したり、学校生活を分かりやすく伝えたり、まだ学校に行ったことのない人に、学校に足を運んでもらおうという気持ちを込めたプレゼンテーションでした。 ☆★☆ 次いで登場した学習院女子は、高等科生が英語でプレゼンテーション。history tradition・independent・environment、international という特徴をあげ、例としてSGLI(Student Global Leadership Institute)を語りました。世界各国の高校生との「高校生サミット」参加体験や英語力に加え、帰国後、難民について考える学内プロジェクトを立ち上げ寄付やスポーツ交流などに繋げた行動力にも触れるアカデミックなプレゼンテーション。 ☆★☆ 恵泉女学園の高校生と中学生が取り上げたのは、「サイエンス・アドベンチャー」。普段の授業でも、中1・2の実験・観察の多さや中3での探求実験がありますが、課外活動に科学を楽しむ活動があることも知ってもらいたいという狙いです。生物班、化学班、物理班、コンピューターサイエンス班の課外活動に、理系・文系問わず参加して(この日のプレゼンをした高校生も実は文系)楽しんでいる様子、スライムの実験結果を発表しつつ、その成果は恵泉デー(文化祭)をお楽しみにと、行事に誘いました。 ☆★☆ 香蘭女学校は、日本のガールスカウト部第一号をアピール。校内での野菜栽培(「西のお庭」と呼ばれる場所に果樹や野菜畑があります)やキャンプへの参加など、どのような活動をしているのか、詳しく紹介してくれました。学校だけではできない経験で、学校の外、海外の友人ができるのが、ガールスカウトの魅力でもあるけれど、ガールスカウトが特別なのではなく、香蘭女学校のなかに、海外交流、実験・検証が繰り返される理科の授業などがあることを言い添えることも忘れませんでした。 ☆★☆ 吹奏楽部がパフォーマンスを見せたのは実践女子学園。校祖下田歌子の書いた「女子の修養」の凛とした朗読と演奏のコラボでステージを作り上げ、観客の心をつかみました。終始笑顔で、軽やかにステップを踏みながら楽器を奏でる姿は、充実した学校生活を彷彿とさせるもの。それだけでも十分なのに最後に朗らかな声でこう言われてしまったら、学校関係者でなくても目頭が熱くなるのは間違いありません。「やりたいことをやりきる実践女子学園。笑顔あふれる実践女子学園が大好きです!!」 ☆★☆ 卒業生2人が息もぴったりに紹介して開演したのは、東京女学館の演劇部によるミュージカル「Annie」。一人ひとりが表情豊かに役を演じ、ホールをミュージカル劇場に変えて見せました。一際大きな拍手が沸き起こるほどの熱演! 冒頭の卒業生は国際部から東京外語大進学、今はそれぞれ大きな企業で働く社会人。ともに演劇部だった時に仲違いをしてしまった思い出話を聞いた後の舞台だけに、東京女学館で過ごす時間の濃密さを思わせてくれました。 ☆★☆ 会場を舞台に釘付けにしたミュージカルの後、ひるむことなく一人で堂々と、豊島岡女子学園の世界に連れて行ってくれたのは高2生。アカデミックデイでの発表や合唱コンクールに向けてクラスで頑張ったこと、英語弁論大会で自信がついたこと。またEnglish programや参加率100%という部活動など、多彩な活動の場や機会が、学校の中に用意されていること。それに挑戦した自分自身の経験だけに充実感たっぷり。「学校案内では伝わらない」学校の魅力が、しっかり伝わったことは間違いないでしょう。 ☆★☆ 三輪田学園の生徒は、“Do you know…(三輪田学園の○○)…?”と“No, I don’t.”の掛け合いで、学校紹介。派手な演出はないのに、学校のことをしっかり知ってもらおうという気持ちが伝わるプレゼンテーションでした。体育祭の大根切りってなあに? iPadの参加型授業っていいね。開成との混声合唱(お互いの文化祭で公演)が42年も続いているんだって。留学できるんだね。…発表の後で親子で話している声が聞こえてきました。 ☆★☆ トリの山脇学園。高1生によるプレゼンテーションはチャイムとともにスタートしました。学園内を回るかのように好きな場所を紹介してくれるので、特徴的な施設があることがわかり、授業をイメージしながら耳をすまします。サイエンスアイランドやネイティブの先生のいるイングリッシュアイランド、そして「知の技法」という独自のプログラムを展開するリベラルアーツアイランド。カフェテリアやお弁当のサービスも紹介して、胃袋も掴みます。終了後、先生に囲まれ中庭で記念撮影していましたが、日頃の生徒と先生の信頼関係を伺わせる情景。こうした場面に遭遇すると自然に笑みがこぼれてきます。 ------------------------------------------------------------------------------ 持ち時間の使い方は各校に委ねられており、9校の手法は様々。何れ劣らぬLoveのこもったプレゼンテーション揃いに、来年が、もう楽しみになってきました。 私学、女子校への関心が高まったというご家庭もあれば、別学を何となく避けてきたけれど見直したという方もあるでしょう。これから学校での説明会や参加型イベントも数多く開催されます。このプレゼンテーションに出てきた授業、施設、行事などをより深く知るためにも、気になった学校にはぜひ、足を運んでみてください。 (市川理香)

体験型イベントにも、授業と同じ熱量で臨みます

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ 入試や授業の体験型イベントが目白押しの秋。10月には、多摩地区の私学15校による「たまサイエンス2018」、11月には、神奈川私学 10 校が参加した「まなびの会 コンパス2018」、首都圏私学21校が参加した「私学体験フォーラム in Tokyo 2018」と立て続けに、授業体験イベントが開催されました。学校の枠を超えて、現場の先生が協力して作るイベントです。 こうした、私学の先生方による授業を体験できる小学生対象のイベントに、当の先生方は、どのような気持ちで臨んでいるのでしょうか。 「たまサイエンス2018」に「偏光板で遊ぼう!」、「まなびの会 コンパス 2018」では「電気ブランコを作ってみよう!」を担当した桐光学園理科教諭の安達員博先生にお聞きしました。 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ------安達先生は、いつから理科の先生をめざしたのですか。 高校生のときには、工学部に進んだらエンジニアに、物理を学ぶことになったら教師になりたいと思っていました。高校時代に楽しいと思ったことのない物理を専門にしてみると、物理って、公式を覚えて計算して、という教科ではなく根本は一つ、つまりシンプルな学問なんだということが分かってきて好きになってきたんです。地味すぎてわかってもらえない教科ですね。 教育実習に行った母校(私学)で受け持ったクラスは、とても雰囲気も良く、生徒と充実した時を過ごせました。ある生徒に、「先生に一言、声をかけてもらったから、遅刻しないように学校に行こうと思った」と言われたときに、何気なくかけた言葉だったので、教師という仕事の重さに触れた一方、やりがいも感じ、教師になりたいという思いが強くなりました。 ------中高生とは知識も力も異なる小学生に授業をするときに、どのようなことを心がけていますか。 もちろん桐光学園でやっている授業そのものができるわけではありませんが、この一時間をおもしろいと思ってもらいたいというのが一番です。取り上げるテーマ決めから、授業計画、材料準備など当日までにやるべきことは、普段と同じくらいの熱量を注ぎます。そんなに器用ではないですから、イベント用に雰囲気やスタイルを変えるというようなことはできません。そういう意味では、授業体験イベントは、まさに私学体験と思ってもらえるのではないかと思います。僕は、一方的に話して教え込むような授業は苦手で、聞いて、返して、 確認して、という生徒とキャッチボールしながらの授業を心がけています。イベントでも、その雰囲気を感じてもらえるのではないでしょうか。 イベントでは、使った(作った)ものを持って帰って家でもう一度やってみたり、調べたりできるような内容にしています。楽しかったイベントが、その子の好奇心につながってくれたらいいなと思っています。今日(学びの会コンパス)は、ちょっと工作に時間がかかってしまったのは反省点です。たまサイエンスでは偏光板を使った実験をしました。地味過ぎたかなと思っていましたが、小学生が地道に作業をやりきったことに感動して喜んでくれたのは、とてもうれしかったですね。なぜそうなるのかを説明したときの反応も純粋で、瞳がキラキラしています。そんな姿に出会えるので、イベント準備の忙しさに心が折れそうになっても、やりがいを感じます。 ------理系に進みたい生徒には、どのようなアドバイスをしていますか。 先ほど話した小学生の反応と同じですが、普段の授業でも、地味な作業のあとに理論的に法則を解説すると、生徒は感動してくれます。小学校で学んだことを高校で証明できるようになるのも、喜びにつながっているようです。 進路を考えるときには、何になりたいかで選択科目が変わってきますので、まずそこから。 授業のときの発問に楽しい、鋭い反応を返す生徒からは、物理が好きなんだろうという気持ちを感じます。好きなのにテストで点数が取れない子は、努力不足だと思うので、そこのところはきちんと指導します。物理が苦手だとか嫌いだと感じている生徒には、理論も噛み砕いて教えて、そう思うようになった先入観やきっかけを取り除いてあげるようにします。どちらの生徒にも、物理の面白さを伝えたいと思っています。

神奈川学園の文化祭は、まだ見ぬ世界を探すきっかけ

 文化祭は、部活動やクラスの発表、模擬店、親善試合等、実行委員が中心となって作り上げる、学校行事の中でも華やかな一大イベントの一つです。  神奈川学園中学・高等学校の2018年文化祭のテーマは「視野」と「地平線」の二つの意味を込めた「HORIZONS」。ポスターにはそのテーマ通り、まだ見ぬ世界を探すように海を見ている生徒が、入り口のパネルには大きな瞳が描かれていました。一見すると、“異色”にも思える神奈川学園の文化祭とは?  9月22日(土)・23日(日)の二日間にわたって行われた「文化祭2018」の二日目を見学しました。 □□■話し合いとフィールドワーク、調査、そして発表へ■□□  神奈川学園の「文化祭」の前身は、「展覧会」といったそうです。そんな生徒の活動の発表の場として始められた原点を大切にし、各年の実行委員や生徒会が工夫を重ねて今に至っています。  中学2年生から高校2年生までの全クラスが、7月に各クラスで取り組むテーマを決め、どのような視点で掘り下げるのか話し合いながら、夏休みも使い、調べていきます。9月に入って、結果をまとめ、プレゼンテーションの掲示物を作り、文化祭当日は言葉で伝える(発表する)、この一連の流れにこそ、多くの学びがあるようです。何で調べるか、どこで調べるか、大学研究室や企業などに協力を依頼するのも生徒自身が決めます。夏休み前の職員室には、アポイント交渉のための専用回線が引かれ生徒用の電話が並ぶそうです。部活もあるし勉強もあるし、生徒は大忙しであることは間違いありません。「集中する日を作る工夫や班の共同作業で、うまくコントロールします」と話してくれた生徒もありました。教員側もそれが生徒を成長させるという信念で、生徒を後押ししていることに、神奈川学園らしさを感じます。見学者も丁寧に見て回り、生徒の質問に耳を傾け、質問しながら双方向の楽しみ方をするので、自然と笑顔や会話が多くなります。 *高2D「#チョコミン党」 * 好きな人も苦手な人も楽しめる…あなたの知らないチョコミントの世界へお連れします!  ハイ!よろしくお願いします、ということで教室に入るとすぐ、ミント系お菓子が勢揃い。よく見ると、大きく2つのグループに分かれていて、何が違うでしょうか?といきなりのクイズです(答えは成分あり・なし)。  香料会社でリサーチしたり、テレビで話題のチョコミント大学生牛窪真太郎さんと交流したりしながら、ミントの味、香りから、関東・関西の違い、商品化のサイクル、ハーブの紹介、先生を巻き込んだミント味のテイスティングなど、ミントをきっかけに自由に発想が展開していく様が見えるようでした。 *中2B「J2Bに何かようかい?」* 妖怪とは何か? 妖怪の実態は? 私達は妖怪と人の関係を深く掘り下げました。恐怖体験!?  怖いもの見たさで恐る恐る足を踏み入れると・・・・。洋の東西を問わず、妖怪が勢ぞろいしていました。いつから妖怪は存在するのか、幽霊と妖怪はどう違うのかなど丁寧に調べた結果を導入に、漫画、キャラクター文化の端緒と位置付けた「百鬼夜行絵巻」の紹介、昭和の妖怪ブームと平成のゲームが生んだ再ブームという文化史考察、民俗学の視点からカッパや天狗、座敷わらし、鬼にも触れ、紙芝居あり、見学者に「あなたの思うカッパは?」と自由に描いてもらう参加コーナーあり、指し棒の先端はかわいい人魂型と、随所に工夫が光っていました。妖怪は恐怖心から生まれるというということから、慶応義塾大学の教授を取材し、アップルウオッチで心拍数を測ったり、交感神経と副交感神経を調べたりした班も。かたや地元のガイドをしているNPO法人に話を聞いた班もありました。「(百鬼夜行に描かれた)どの妖怪が好き?」と尋ねると、説明してくれた中2生は、こう答えてくれました。 「鬼か好きです。物でもなく、人でもなく、人の心が作り出すものだから」 *高1A「音姫」* 聞こえますか? 聞こえないんですか? だったら私たちと一緒に体験して見ませんか?♪  聞こえませんでした、予想通りとはいえ。  ある音をイヤフォンで聞かせてくれましたが、残念ながら完全無音状態。案内してくれた高校生の耳にはキーンと響くその音は、平均24歳以下の若者にしか聞こえないモスキート音。サウンドスケープやサインデザイン、防音と吸音システムなどについても調べ、青山学院や日本工学院も訪問しています。国立音楽院で調べた班のテーマは音楽療法。騒音を調べた班は、防音壁を作っている会社や横浜市役所でのインタビュー、幼稚園・保育園の実習というフィールドワークを重視た結果を考察し、まとめていました。「母が唐揚げを揚げる音が好き」のように音のイメージも紹介。このクラスは屋外で、ダンボールとペットボトルで太鼓パフォーマンスも披露!  「音」を入り口に、音がもたらす人と環境の関係、音と心理、音の科学などテーマを話し合う過程もさぞかし楽しかっただろうと思います。 *中2E「みんなの知らないCMの世界」* 中2E組で、みんなの知らないCMについて学んで、楽しく賢くCMを見ましょう!  用意されたスクリーンに流れていたのは神奈川学園のCM。思わず見入ってしまいました。いずれ説明会でも使われますか?   CM制作会社で、制作のプロセスを取材し、ターゲットを考えることや、共感してもらうことの大切さを学んだ班や、CMの歴史を起源から現代まで辿ることに経済史を重ねて見せた班。CMの役割や表現方法にも考えを及ばせるので、“賢く” CMを見る消費者になってくれそうです。学校のCMは、学園の特徴を生徒が生徒のインタビューに答える形でアピールする生徒目線パターンと、登校から下校までの一日の学校生活を見せて安心してもらう保護者目線を意識したパターン。生徒は楽しそうだし、教師もキャストで登場して学園(クラス)の暖かさも感じて、素直に「やられた!」

2018年6月24日模擬国連報告会 〜 模擬国連は、フルコース 〜

今年5月にニューヨークで行われた、『高校模擬国連国際大会』に日本代表として参加した高校生たちによる渡米報告会が、6月24日、都内で開催されました。 ■□■そもそも模擬国連って?■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ここ数年、新聞等でも日本代表の活躍が報じられるようになり、「模擬国連」という大会の認知度も上がってきたように見えます。 模擬国連とは、その名の通り国連会議のシミュレーション(模擬)。ある国の大使となって、政策を立案し、会議を行います。 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ■高校模擬国連国際大会・日本代表への道ーーーーーーーーーーーーーー  国際大会(ニューヨーク)出場するまでには、大まかには次のようなプロセスがあります。 7月 募集要項および選考課題公表 9月 応募受け付け    定員をうわまわった場合、書類選考 11月 全日本高校模擬国連大会(東京)(※最優秀賞または優秀賞をおさめる) 翌年5月 高校模擬国連国際大会(ニューヨーク)へ日本代表として出場  摸擬国連では、全日本大会でも国際大会でも担当国は指定されるまで、どこの国になるのか、全くわかりません。数年前の代表には、国歌を覚えてテンションを上げた、という参加者もいましたが、その国のおかれた立場や事情はもちろん、国際情勢をリサーチし、政策を立案、会議に反映する・・・、一連の行動は担当する国の大使としてのもの。全日本大会では、その政策立案と会議行動が評価されます。議長は英語を使い、高校生たちはときに日本語でも発言しますが、英語を使いながら発言する様は、高校生に見えない瞬間もあります。このようにあらゆる要素が含まれている大会ですから、ある高校生から「模擬国連はフルコース」という言葉が出ると、誰もが深く頷いていました。 ■繋がる襷(たすき)ーーーーーーーーーーーーーー  昨年11月の全日本高校模擬国連大会で日本代表に選ばれたのは、浅野、海城、渋谷教育学園渋谷、頌栄女子学院、桐蔭学園中等教育学校、鳥取県立鳥取西、計6校の高校生たち(主に2人一組ペア)。日本代表になった参加者をもってしても、国際大会の議場に足を踏み入れた時に感じるのは、圧倒されるほどの緊張感といいます。報告会では全日本大会や国際大会の体験を通して感じたこと、成長したと思うこと、課題と考えることを話しました。「どうだ!」と言わんばかりの報告ではなく、工夫したこと、日本人の得意なところ、想定外の出来事や危機に直面したときの対応、思うようにいかなかった悔しさ・・・・。  見学者の多くは摸擬国連活動をしている高校生。報告者は、どのような会議行動が良かったかという実践的なアドバイスも織り交ぜて、見学者からの質問にも的確に回答し、まさに襷を繋ぐかのようなやりとりが続いたのが印象に残っています。  ある参加校の、引率の先生がおっしゃっていました。「彼らは〝摸擬〟とは思っていないんですよ」 ☺︎「志の高い同志と出会えた」 ☺︎「参加者は世界を少しでも良い方向に変えられると信じている人」 ☺︎「男女ペアだからといって、それによる悩みは特になかった」 ☺︎「アカデミックレベルの高い話を、同年代と話せるのが魅力」 ☺︎「自分がどんな人かを怖がらず知ることが大切」 ☺︎「トライアンドエラーの連続。最後までトライし続けた」

東京私立男子中学校フェスタ&神奈川私立男子中学校フェア2018

春の恒例行事となった、男子校だけが一堂に会する、東京私立男子中学校フェスタ、神奈川私立男子中学校フェア。2018年、東京は6月3日(日)9:00〜16:00、京華中学校に29校(資料参加含む)が、神奈川は6月10日(日)10:00〜16:00、栄光学園に11校が参集し開催されました。 ------------------------------------------------------ 男子校による男子のための特別な相談会 ----------------------------------------------------- 【東京私立男子中学校フェスタ2018】 東京は晴れ渡り汗ばむ陽気で、天候に恵まれました。受付後に通る、ポスターセッション式のウェルカムインフォスポットでは、その場を任された各校の生徒が、男子校の魅力、自校の特徴を熱く語っており、「学校が好きなんだなあ」と感心するやら胸が熱くなるやら。体験授業、テーマ別合同説明会、ミニ説明会、校長先生5分講演のほか、学校別ブースでは、ミニ説明あり、保護者やOB、在校生による個別相談あり、映像やワークショップなどブース内イベントあり・・と多彩な催しが繰り広げられました。これだけでもとても回りきれないほどですが、今年の協賛企業セミナーは、コロコロコミック編集部による編集のお仕事解説、ドローンシミュレーターやフライトシミュレーター体験などのワークショップも開催され、多くの小学生が足を運びました。食堂、ピザーラ男子校フェスタ店なども、親子揃ってイベントを楽しむのに一役かってくれます。 生徒プレゼンフロアは、生徒たちの視点で男子校を紹介する専用フロア。事前にHPで公開されていた学校紹介CMコンテスト、鉄道模型展示、鉄道クイズ王選手権(今年が第一回)、文化部の発表や作品展など、男子校の雰囲気を再現。 先生方とともに生徒も来場者にクイズを出したり、展示物を説明したり、大活躍でした。 写真はウェルカムインフォスポットにて。高輪は高2の生徒会長が写真を示しながら学校を紹介(左)、生徒手書きのアピールポイント付箋がボードいっぱいに張られていたのは桐朋(右) 【神奈川私立男子中学校フェア2018】 迎えて10日は肌寒い生憎の雨模様の一日でしたが、会場のあちこちで、男子校の魅力を伝えたい先生や生徒の熱意に背中を押されるように、プログラムを片手にイベントを追いかけ移動する受験生親子の姿が見られました。和太鼓やジャグリングなどの野外パフォーマンスは第一体育館に変更、サッカーやテニスの交流試合は雨で中止となっても、飽きさせないのが「男子校の底力」(これは東京のキャッチフレーズでもありましたが)。小講堂のパフォーマンス、小学生のための体験授業や部活のプレゼンテーションを巡るだけでも瞬く間に時間が過ぎて、ふと気づくとランチタイム。軽食販売所でお弁当を購入し、控え室として用意された教室でホッと一息ついたら、いざ、再び男子校の魅力の海へ。

市川・松戸 女子中学校見学バスツアー 2018年5月16日(水) 

今年で13回目を迎えた、『市川・松戸 女子中学校見学バスツアー』。 一日で3校を回れるバスツアーとあって人気の企画です。 今年もバス5台に分乗してのツアーとなりました。 快晴の朝、集合は国府台女子学院。 ツアー受付で3校の資料を受け取り、講堂(寿光殿)へ。 国府台女子学院の学校紹介ビデオが流れるなか、開会を待ちました。 ○○●国府台女子学院からスタート●○○ 【9:20am----------】 一日の流れの説明の後、さあ、いよいよツアー本編の開始です。 トップバッターは、国府台女子学院。平田学院長が、ステージ上のご本尊を背に、仏教教育の意義や女子校のメリットを語り、同校の生徒の進路状況などを説明されました。 ・女子の志向や、心の成長にあった教育は女子校ならではのメリット。 ・性別による役割分担のない女子校こそ、女性が社会で活躍する基礎を育む。 ・進路に合わせた選択科目は、希望者が一人でも授業を行う。 ・週1回の仏教の時間は、世界の宗教を知り、また仏教的世界観に触れることで自己規範性を育む。 その後、いくつかのグループに分かれて校舎見学に移りました。 2011年に竣工した中学部・高等部校舎は、広々として明るく、引き戸の格子などちょっとしたところに、仏教系の学校らしさが、そこはかとなく漂います。おやおや、段ボールの山が雑然とロッカーのうえに山積みされているのは、なぜ? 6月の運動会の仮装行列の材料で、一年でこの時期だけの風景です。山の高さから運動会にむけた盛り上がりが感じられます。 見学の終点は図書館。一息ついてエントランスに並んだ順にバスに乗り込みます。 ○○●聖徳大学附属女子へ移動●○○ 【10:30am----------】 いざ、2校めの聖徳大学附属女子中学校へ。 移動の車中では、聖徳大学附属女子中学校の先生が、学校概要を説明されます。学校に着いたらどこを見ようか、 聖徳大附属の一番の特徴は何だろうか、新しいコースが始まるようだ、という心構えのようなものが出来た頃に学校着。入り口では、校長先生も笑顔でお迎えに立っていてくださいました。 奏楽堂では、マーチングバンドによる「風になりたい」の演奏、高1生による中3の時の研究のプレゼンテーションも披露。川並校長は、近年の改革の流れに沿って同校の特徴を語りました。 ・校名に附属とついているが、8割は他大進学。現役進学率は9割台で推移。 ・平成25〜27年にルーブリック評価を開。 ・来年度から、S(Superior)探究コースとLA(Language Arts)コースを設置する。 ・世界一短い教育理念「和」。心は一人では磨けないから多彩な行事がある。 ・小笠原礼法を学びながら思いやりの心を学ぶ。 引き続き大野教頭による、新コースでめざす、「聖徳流21世紀スキル」の育成についての説明がありました。そして乗車バス単位で校舎見学へ。書道室や作品、礼法室のたたずまい、きれいに靴が並ぶ下駄箱、お土産に用意された折り紙の鶴の箸置きなど見るにつけ、説明と設備が一致してきます。

聖光学院 SSH成果発表会 2018年3月17日(土)

 3月17日、聖光学院では、高1生による「SS探究Ⅰ」の「成果発表会」が開かれました。  聖光学院は2017年度からSSH(※)指定校として研究開発を進めています。研究課題Iとして設定した「科学的思考能力を育む中高一貫による理数教育課程の開発」の具体的取り組みのひとつが、 「探究基礎」(中学3年生)、「SS探究I」(高校1年生)の設置です。今年度のSS探究Iの実践活動は、 ・ 夏休み前、高1生全員から探究テーマを聞き取り、 ・ 全員のテーマを共有しあい、テーマが似ているもの同士でチームを組む ・ チームとしてのテーマを絞り込み、探究活動 という流れで進められました。早いところでは3ヶ月でまとめあげたチームもありますが、中には途中でテーマ変更、あるいは挫折を味わったチームもあるなど、「成果」の形は様々です。Teaching assistant(TA)の大学院生はもちろん教員も、実験や調査の方法、先行研究の調べ方について方向性を示唆することはあっても、結果や考察に口出しはしません。生徒にとって、それぞれの探究活動の経験が、この一年の成果といえるのかもしれません。 ※SSH:文部科学省による、将来の国際的な科学技術人材を育成することを目指し、理数系教育に重点を置いた研究開発を行う「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」事業。2017(平成29)年度は全国で203校が指定を受けた。  さて、発表会当日。午前はポスターセッション、午後はオーラルプレゼンテーションです。  ポスターセッションは、前半と後半に別れ、各28チーム計56チームが研究成果をまとめたポスターを用意し、チーム全員が交代でします。テーマもポスターも多彩ですが、質問に対する応答にも個性があり、スタート当初は見学側の生徒にも照れくささとたどたどしさが見られたものの、「どんどん質問しよう」と促されると、会場のあちらこちらでボリュームもテンションも上がっていきました。すべてをじっくり聞いて回るのは無理だと途中で諦め、途中からは興味のあるテーマの発表を聞くことに方針転換。それでも、あっという間に時間が過ぎていきました。見学の生徒は発表を聞き、質問し評価。評価にあたっては、「テーマ」「探究内容」「今後の展望」「ポスターデザイン」「プレゼン」の5項目毎に、評価基準に従って点数を付けます。例えば、探究内容の最高評価5は、「仮説→実証・検証・計画→考察を複数回行っている。客観的に正しい内容になっている」。逆に評価1は「仮説→実証・検証・計画→考察を行っていない。主観的な内容になっている」というように評価シートに示されているので、評価する側もされる側も、観点が明快です。ポスターの横に用意された評価シート回収封筒には、どんどんとシートが入れられていきました。  生徒以外に、保護者、大学院生、卒業生、企業関係者らも来場し、生徒とともに発表に聞き入りました。大学院生や企業関係者は、聖光学院のSSH事業を何らかの形で支援している人たち、その友人たちとのことで、あらゆる意味で先輩。彼らの質問に対しては、見事回答ということばかりではありません。例えば企業マーケティング視点の質問に、「そこまでは考えていませんでした」という正直な答えもありましたし、母親の生活体験からの質問には、「お金がかかるんで・・」など高校生らしい“限界”も。こうした場を経験し、今、足りないものを知り、アプローチの視点を学んだのではないでしょうか。  最後に、高1生は自己評価シートを提出。中3生は先輩の姿に学び、高1生は他チームに学び、自分を省みる、そうしたサイクルが繰り広げられている「現場」でした。  SSH初年度の高1生にとっては2年分の内容を一年で行うという駆け足で、テーマ設定から発表までの時間は短かったかもしれません。探究基礎を経て来年、SS探究Ⅰの成果発表を迎えるであろう現中3生の変化にも注目しておきたいものです。

入試の暦は新年度に突入!

中学入試期間中、ターミナル駅などで見かける“受験生応援ポスター”。塾のカバンを背負った受験生が、「がんばれ 中学受験生」と大きく書かれた白いポスターに近づき、そっと撫でる後ろ姿、後ろから見守る母。そんな光景を、今年もあちらこちらで見かけました。 殊の外寒さの厳しかった1月、2月、受験生は頑張りました。 (写真は東急東横線自由が丘駅上りホームのポスター。2018年2月6日撮影)