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神奈川学園の文化祭は、まだ見ぬ世界を探すきっかけ

神奈川学園の文化祭は、まだ見ぬ世界を探すきっかけ

 文化祭は、部活動やクラスの発表、模擬店、親善試合等、実行委員が中心となって作り上げる、学校行事の中でも華やかな一大イベントの一つです。
 神奈川学園中学・高等学校の2018年文化祭のテーマは「視野」と「地平線」の二つの意味を込めた「HORIZONS」。ポスターにはそのテーマ通り、まだ見ぬ世界を探すように海を見ている生徒が、入り口のパネルには大きな瞳が描かれていました。一見すると、“異色”にも思える神奈川学園の文化祭とは?
 9月22日(土)・23日(日)の二日間にわたって行われた「文化祭2018」の二日目を見学しました。

□□■話し合いとフィールドワーク、調査、そして発表へ■□□

 神奈川学園の「文化祭」の前身は、「展覧会」といったそうです。そんな生徒の活動の発表の場として始められた原点を大切にし、各年の実行委員や生徒会が工夫を重ねて今に至っています。
 中学2年生から高校2年生までの全クラスが、7月に各クラスで取り組むテーマを決め、どのような視点で掘り下げるのか話し合いながら、夏休みも使い、調べていきます。9月に入って、結果をまとめ、プレゼンテーションの掲示物を作り、文化祭当日は言葉で伝える(発表する)、この一連の流れにこそ、多くの学びがあるようです。何で調べるか、どこで調べるか、大学研究室や企業などに協力を依頼するのも生徒自身が決めます。夏休み前の職員室には、アポイント交渉のための専用回線が引かれ生徒用の電話が並ぶそうです。部活もあるし勉強もあるし、生徒は大忙しであることは間違いありません。「集中する日を作る工夫や班の共同作業で、うまくコントロールします」と話してくれた生徒もありました。教員側もそれが生徒を成長させるという信念で、生徒を後押ししていることに、神奈川学園らしさを感じます。見学者も丁寧に見て回り、生徒の質問に耳を傾け、質問しながら双方向の楽しみ方をするので、自然と笑顔や会話が多くなります。

*高2D「#チョコミン党」 *
好きな人も苦手な人も楽しめる…あなたの知らないチョコミントの世界へお連れします!

 ハイ!よろしくお願いします、ということで教室に入るとすぐ、ミント系お菓子が勢揃い。よく見ると、大きく2つのグループに分かれていて、何が違うでしょうか?といきなりのクイズです(答えは成分あり・なし)。
 香料会社でリサーチしたり、テレビで話題のチョコミント大学生牛窪真太郎さんと交流したりしながら、ミントの味、香りから、関東・関西の違い、商品化のサイクル、ハーブの紹介、先生を巻き込んだミント味のテイスティングなど、ミントをきっかけに自由に発想が展開していく様が見えるようでした。


*中2B「J2Bに何かようかい?」*
妖怪とは何か? 妖怪の実態は? 私達は妖怪と人の関係を深く掘り下げました。恐怖体験!?

 怖いもの見たさで恐る恐る足を踏み入れると・・・・。洋の東西を問わず、妖怪が勢ぞろいしていました。いつから妖怪は存在するのか、幽霊と妖怪はどう違うのかなど丁寧に調べた結果を導入に、漫画、キャラクター文化の端緒と位置付けた「百鬼夜行絵巻」の紹介、昭和の妖怪ブームと平成のゲームが生んだ再ブームという文化史考察、民俗学の視点からカッパや天狗、座敷わらし、鬼にも触れ、紙芝居あり、見学者に「あなたの思うカッパは?」と自由に描いてもらう参加コーナーあり、指し棒の先端はかわいい人魂型と、随所に工夫が光っていました。妖怪は恐怖心から生まれるというということから、慶応義塾大学の教授を取材し、アップルウオッチで心拍数を測ったり、交感神経と副交感神経を調べたりした班も。かたや地元のガイドをしているNPO法人に話を聞いた班もありました。「(百鬼夜行に描かれた)どの妖怪が好き?」と尋ねると、説明してくれた中2生は、こう答えてくれました。
「鬼か好きです。物でもなく、人でもなく、人の心が作り出すものだから」


*高1A「音姫」*
聞こえますか? 聞こえないんですか? だったら私たちと一緒に体験して見ませんか?♪

 聞こえませんでした、予想通りとはいえ。
 ある音をイヤフォンで聞かせてくれましたが、残念ながら完全無音状態。案内してくれた高校生の耳にはキーンと響くその音は、平均24歳以下の若者にしか聞こえないモスキート音。サウンドスケープやサインデザイン、防音と吸音システムなどについても調べ、青山学院や日本工学院も訪問しています。国立音楽院で調べた班のテーマは音楽療法。騒音を調べた班は、防音壁を作っている会社や横浜市役所でのインタビュー、幼稚園・保育園の実習というフィールドワークを重視た結果を考察し、まとめていました。「母が唐揚げを揚げる音が好き」のように音のイメージも紹介。このクラスは屋外で、ダンボールとペットボトルで太鼓パフォーマンスも披露!
 「音」を入り口に、音がもたらす人と環境の関係、音と心理、音の科学などテーマを話し合う過程もさぞかし楽しかっただろうと思います。


*中2E「みんなの知らないCMの世界」*
中2E組で、みんなの知らないCMについて学んで、楽しく賢くCMを見ましょう!

 用意されたスクリーンに流れていたのは神奈川学園のCM。思わず見入ってしまいました。いずれ説明会でも使われますか? 
 CM制作会社で、制作のプロセスを取材し、ターゲットを考えることや、共感してもらうことの大切さを学んだ班や、CMの歴史を起源から現代まで辿ることに経済史を重ねて見せた班。CMの役割や表現方法にも考えを及ばせるので、“賢く” CMを見る消費者になってくれそうです。学校のCMは、学園の特徴を生徒が生徒のインタビューに答える形でアピールする生徒目線パターンと、登校から下校までの一日の学校生活を見せて安心してもらう保護者目線を意識したパターン。生徒は楽しそうだし、教師もキャストで登場して学園(クラス)の暖かさも感じて、素直に「やられた!」

 他にも興味深い発表は数多くありました。石鹸の歴史、成分や環境、SDGsなどを考えたのは、中2D「せっけんズラブ」、教室に大きな鳥居を作り、宗教感、神話、御朱印について調べ、また神社の現状を発表したのは、高2B「神さまの言う通り」。正しい参拝の仕方も動画で教えてくれました。「AIの書いたものより、人間の書いたものに温かみを感じます」と話してくれたのは、高1D「AI(あい)なんだ」で、AIも小説コンクールで入賞する時代となったことを説明してくれた生徒。AIの時代になくなる仕事と残る仕事の違い、音楽の著作権問題を考えた班もありました。オセロのAI vs.見学者対決では、意外に幼い子がAIに勝つという発見があったそうです。高1E「美ョ〜ン」でネイリスト、アイリスト、エステてティシャンなど8つの美容関連の職業を調べた生徒は、華やかに見えても働くことは大変なんだと感じたと言います。肌を5倍で見せてくれる真実の鏡は・・、覗けませんでした・・。高2A「JK半端ないって!! 〜そんなんできひんやんふつう〜」では、女子教育や女子校の特徴、女性の雇用の現実、18歳選挙権の問題を見せ、一方でJKビジネスの料金表が置かれていて、女子高生を取り巻く闇に迫るシニカルな視線も。


□□■入場整理券は、いりません。■□□
 中1は、中1大食堂SA*KU*RAでお客様をおもてなしする役割を担います。それを陰ながらサポートするのが高3生。学園一丸となって文化祭を作っています。通常、ガードマンが見守っている入り口では、見学者が撮影許可を願い出る受付窓口(PTA)があり、我が子の姿を残したい保護者は、そこで申告。その奥に、何やらジャケットが吊るされているテントが見えましたが、あれは一体?
 神奈川学園は女子校にも関わらず、文化祭は入場自由。「PAPAパトロール」のジャケットを着た父親が、見学しながら自然に不審者を寄せ付けず生徒を守っているので、入場券は不要なのです。今の時代に、そんな奇跡のような空間が女子校で実現できるとは。

 百聞は一見に如かず。来年の9月、ぜひ神奈川学園に足を運んで欲しいと思います。きっと、新しいテーマ、工夫で、魅せてくれることでしょう。協力してくれた大学や企業、団体からの見学も増えるといいですね。今年、積極的に説明できなかった生徒も、来年こそは自分から進んで話しかけてみようと思っているかもしれません。そんな成長も楽しみです。クラス発表はもちろん、クラブの公演、発表も多彩で、掲示をさらっと流し見して終了、とは行かないので、歩きやすい靴でお出かけになることをオススメします。

これから開催される神奈川学園の学校説明会・イベントは下記の通りです。
第2回 オープンキャンパス 2018年10月27日(土) 10:30~12:30
第5回 学校説明会2018年11月17日(土) 10:30~12:00
入試問題体験会2018年12月15日(土) 08:30~12:30
第6回 学校説明会2018年12月21日(金) 19:00~20:00
第7回 学校説明会2019年1月12日(土) 10:30~12:00
それぞれ予約が必要です。→http://www.kanagawa-kgs.ac.jp/

(NettyLand 市川理香)