学習との両立を目指し、サッカーを通じて豊かな人間形成を ~桐蔭学園・桐光学園・日本大学藤沢・横浜創英~
学習との両立を目指し、サッカーを通じて豊かな人間形成を ~桐蔭学園・桐光学園・日本大学藤沢・横浜創英~
新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から無観客試合で実施されている『第99回全国高等学校サッカー選手権大会神奈川県予選会』は、桐蔭学園・桐光学園・日本大学藤沢・横浜創英の私学4校が準決勝に進みました。
今シーズンは、関東大会・インターハイが中止となり、例年3月より実施される神奈川県リーグも9月開幕となるなか、各校、徹底した感染症対策のもと工夫をしながら質の高いトレーニングを続け、全国高校サッカー選手権に臨んでいます。
準決勝2試合から感じた私学の魅力をお伝えします。
【相手を思いやる気持ち】
第1試合は、昨年の選手権大会神奈川県予選会・決勝で対戦した桐光学園と日本大学藤沢。両チームにとって絶対に負けられない相手でしょう。
前半は、桐光学園がコーナーキックから先制。日本大学藤沢も攻めの姿勢を見せるも、桐光学園の固い守備で得点が奪えずそのまま前半終了。
後半は、硬直状態が続くなか、日本大学藤沢のパスが繋がり始め、ゴール前へと持ち込みチャンスをつくります。すると、日本大学藤沢が得意な連携プレーからゴールを決め、同点に。その後は、一進一退の攻防が続き、そのまま延長戦へ突入しました。
延長後半、日本大学藤沢がゴール前の混戦から得点を奪い逆転。その直後、桐光学園が素早い攻撃からゴールを決め同点に追いつき、決着はPK戦へともつれ込みます。
PK戦を制したのは桐光学園。両校の選手の技術はもちろん、チームの一体感、逆境でも粘り強くチャレンジを続ける姿勢、サッカーの魅力が詰まった見応えのある素晴らしい試合でした。
第2試合は、昨年の神奈川県リーグ3位の桐蔭学園と4位の横浜創英の対戦です。
前半、桐蔭学園がチャンスを確実に決め、先制。後半、横浜創英は果敢に攻撃を仕掛けますが、桐蔭学園は集中を切らさない堅いディフェンスで得点を許しません。横浜創英は反撃を試みますが、桐蔭学園は気迫のプレーで守り抜き試合終了。激しい戦いを制したのは桐蔭学園でした。
神奈川県ベスト4に進む選手たちは常に切り替えが早く、審判の判定に不満を表す場面は少なかったです。自分が次にできることを考え行動する。気持ちの切り替えの早さやひたむきな姿に感服しました。
また、日本大学藤沢の選手が足を痛めピッチで動けなくなると、対戦相手の桐光学園の選手がすかさず声を掛けに行くなど、何度となくこういったフェアプレーの精神がみられました。ライバル同士絶対に勝ちたい試合だからこそ、相手を思いやる気持ちを忘れずに臨む、という姿勢を感じ取ることができました。
惜しくも準決勝で敗れた日本大学藤沢。試合終了直後、悔しい気持ちを抑え、ここまで支え続けたマネージャーに声を掛ける選手の姿が印象的でした。一般の観客のいない無観客試合でしたが、スタンドではサッカー部員と保護者が選手達の活躍を静かに見守っています。「最後の挨拶はちゃんとやろう!」と声を掛け合い、スタンドに向けて整列する選手達。
この美しい姿に、スタンドのサッカー部員と保護者は心が熱くなったことでしょう。
11月28日に行われる決勝戦は、桐光学園と桐蔭学園の対戦です。全国制覇のスタートラインに立つための神奈川県代表が決まります。
【建学の精神を受け継ぐ】
各校の建学の精神は以下の通りです。※各校HPより抜粋
◆桐蔭学園…「社会連帯を基調とした、義務を実行する自由人たれ。」「学問に徹し、求学の精神の持ち主たれ。」「道義の精神を高揚し、誇り高き人格者たれ。」「国を愛し、民族を愛する国民たれ。」「自然を愛し、平和を愛する国際人たれ。」
◆桐光学園…心と心がふれ合う(喜び・怒り・感激がわき起こる)、教師の心と生徒の心が火花を散らす、生徒と生徒の心が火花を散らす、この火花によってお互いの心がとけ合い心の扉が開けます。この火花によって心を練り上げる、心をきたえるのが教師であり、その場が教室であり、団体訓練であり、クラブ活動であると信じます。全職員が一つになって、生徒の心の扉を少しずつ開かせ、すなおな心、やさしい心、すべてに感動する若い魂、すばらしい個性を引きだし、これらを良いものに作りあげたい、伸ばしたい。この場が桐光学園であります。
◆日本大学藤沢…「自ら学ぶ」「自ら考える」「自ら道をひらく」
◆横浜創英…「考えて行動のできる人」の育成
新型コロナウイルス感染症拡大という誰もが経験したことがない状況で、神奈川県予選・準決勝に進んだ4校の建学の精神や建学のこころを読むと、どの学校もサッカーというスポーツで勝利することが最終目的でないことが分かります。
学習面との両立を目指し、建学の精神に従って、サッカーを通じて心身共に健全で世の中の為になる豊かで品のある人間形成。それこそが各校の目指すところであり、さらには4校ともに将来、さまざまな分野で周りをリードしていけるような人材の育成を目標としているのでしょう。
神奈川県ベスト4に進む高校の登録メンバーの前所属チームを見ると、クラブチーム出身者が多く、併設の中学校出身は少ないと言えます。しかし、神奈川県リーグ(例年3~12月開催)は1部から4部まで分かれているため、より多くの部員が公式戦での試合を経験ができる組織体制が整っています。このように中学受験を経験した生徒がその後の6年間、高校受験で断念することなく部活や試合を続けることで、サッカー技術向上はもちろん、サッカーを通じて人間的に大きく成長できることも、私学における高校サッカーの魅力かもしれません。※桐蔭学園中学校から高等学校へ進学するのは現3年生が最後であり、現2年生からは6年制の中等教育学校に1本化されているので高等学校のチームには合流しません。(編集部注)
サッカーでも、学習でも、ぶつかった壁を自らの力で乗り越える経験は、この先の人生において大きな糧となるはずです。そのためには、自分の行動をふり返り、次にできることを考え、行動することが大切だと思います。
今回は、高校サッカーを題材にしましたが、中学受験生にとって励みになる私学の活躍は、スポーツをはじめ科学やアートなどさまざまな分野でも見ることができます。
いずれの活躍も、私学各校の建学の精神に基づいた、生徒一人ひとりの行動の集大成といえるのではないでしょうか。